103:サクサクケンカラシ
本日は10話更新です。
こちらは10話目です。
「さて、第二坑道・ケンカラシのフロア1と2は紫しか出てこないし、その後も全身鉄製かつ属性付き鉄武装なら容易だろうからな。サクサク行くぞ」
『ブン。分かりました』
第二坑道・ケンカラシに着いた俺は早速駆け出す。
両足の踵に付けたケットシーテイルを伸ばし、常に尻尾のどちらかは地面につけておく事で、重量の誤魔化しを維持したまま走っていくのだ。
『トビィ。緋炭石です』
「分かってる。オラァ!」
で、緋炭石のマテリアルタワーを発見したら、左腕を伸ばして先駆け一発。
その際の衝撃の伝わり方から、弱い場所を何となくで判断しつつ、そこへと右腕で一発。
デイムビーレッグで蹴りと加速を兼用しつつ一発。
この時点で緋炭石のマテリアルタワーが残っているならグレネードを二つ投下しておき、置き土産の二発。
これで合計五発となり、ほぼ間違いなく打撃回数の制限に引っかかるので、後はアドオン『オートコレクター』の機能で飛び散った緋炭石を回収。
そして、その間にも俺は走り続け、次の部屋へと向かっていく。
≪特定物質:緋炭石を65個回収しました≫
「やっぱり、量的には第三坑道・アルメコウの方が取れるんだな」
『ブン。それは当然でしょう』
「まあ、でないと第三坑道に行く意味がないもんな」
次の部屋にはレコードボックス。
これは……今回は無視でいいか。
回収には時間がかかるからな。
「「バウバウッ」」
『トビィ。パープルハウンドです』
「足を止めずに処理するぞ」
更に次の部屋にはパープルハウンドが居た。
が、俺は走ったまま部家に進入すると、左右から跳んできたパープルハウンドの攻撃を避けた上で首に紐状にしたパンプキンアームLを絡ませて……。
「「ギャウウウゥゥゥン!?」」
引きずる。
≪生物系マテリアル:肉を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:骨を1個回収しました≫
『ブブ。殴る価値もない。という事ですか』
「どちらかと言うと、殴るには位置が悪かった。と言う感じだな。殴れるなら殴りたかった」
パープルのランクではシールドもない。
という訳で、頭をするように調整をしておいたこともあり、パープルハウンドはあっさりすりおろされた。
「ま、今回は本当にスピード優先。グリーンキーパーとは戦うつもりだが、それ以外は場合によっては無視もする。一周のタイムによっては今日中にもう一回潜りたいとも思っているからな」
『ブン。分かりました。であれば、フロア4くらいからはドローンホーネットも活用していきましょう。探索の効率が上がると思います』
「そうだな。そうするか」
その後もさっくりとフロア1を駆け回り、全部屋の探索を済ませ、フロア1の探索完了。
フロア1.5の現地ラボはスルーしてフロア2へ。
「ガンガン行くぞー」
『ブン』
で、フロア2、フロア3、フロア4、フロア5と可能な限り足を止めないようにしながら、マテリアルタワーの回収をしつつ駆け抜けていく。
魔物については、こちらが全身鉄製という事もあり、青未満の魔物では敵にならず、青でも少し時間をかければ問題なく仕留められた。
なお、こうして駆け抜けていく間に新装備であるデイムビーレッグとデイムビーアームRの調子も確かめていくのだが……とりあえずデイムビーアームRについては問題なし、メリットも特にないが。
ではデイムビーレッグは?
「デイムビーレッグのおかげで立ち回りが格段に楽になったな」
『ブン。そうですね。ただ、燃費は劣悪です。注意してください』
「それは分かっているから大丈夫だ」
デイムビーレッグにはかかと部分にスラスター……推進器が付いていて、任意のタイミングで起動できる。
その効果は一度の使用で燃料を5消費するという燃費の悪いものだが、効果はとても大きい。
何せだ。
「ラミャアッ!?」
「いや本当に便利だな。デイムビーレッグ」
今俺に対しては、ブルーラミアの尾による薙ぎ払い攻撃が行われていた。
それも俺がジャンプし、着地する瞬間を狙った、所謂着地狩りの攻撃だ。
が、俺はここでデイムビーレッグの効果を発動。
着地を一瞬遅らせることによってラミアの尾は俺の下を通り抜けていき、逆に加速度を得た膝によってブルーラミアの顔面を押し潰すことでシールドを破壊。
続けて振り下ろした拳によってブルーラミアを完全に撃破した。
と言うかだ。
「しかしこれ、一瞬だが、重力がおかしくなるのを誤魔化しているか?」
『ブン。誤魔化していますね。でなければ、一瞬のスラスターでは何にもならないので当然ですが』
「それもそうか」
どうやらデイムビーレッグは効果発動中、落ちる速度がおかしくなる坑道の仕様を誤魔化しているらしい。
まあ、必要な時だけ誤魔化せるのだから、俺としては嬉しい仕様だな。
「さて次はフロア6だな」
『ブン。そうですね』
さて、そんな話を挟みつつもフロア5も終了。
フロア5.5の坑道予測で、ボスの欄が???になっていることを確認して、フロア6に移動。
「今回のフロア6は……水場付きの坑道か」
『ブン。水中でも火炎属性の武器は起動しますが、爆発物であるグレネードの性能は落ちるので気を付けてください』
俺はフロア6の探索を早速始める。
「ブヒイィトパアァァスウゥゥ」
「二部屋目でボス。まあ、そういう事もあるか」
『ブン。そういう事もありますね』
で、早々に緑色の体色を有する巨体と遭遇する事になった。
『名称はグリーンキーパー・ケンカラシαです』
「緑キパαね。了解」
相手の名前はグリーンキーパー・ケンカラシα。
直径が5メートル近い巨大な豚の頭から、八本の吸盤付きのたこ足が直接生えており、それぞれの足先にランタンや燭台と言った火を用いる照明器具を持っているという、一般的に言って悍ましい姿をしている。
「ランタパアアァァス!」
「ま、殴り倒すだけだな」
『ブン。トビィならそう言うと思っていました』
そして、俺の姿を認識した緑キパαは手に持ったランタンの一つを振り、そこから火球を放ってきたのだった。
10周年記念。楽しんでいただけたなら幸いです。
どうかこれからもアウターワールドストーリーをよろしくお願いいたします。
04/05誤字訂正