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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

待ち望んだ日

掲載日:2021/06/23


「ようやく見つけましたよ」


声のするほうに目を向けると、女性が二人、笑顔でこちらを向いている。

40代くらいの女性と、もう一人は娘さんだろうか。


「人違いじゃないですかね」


二人の顔には見覚えがない。

何かのボランティアか宗教だろうか。

俺はそういって、その場を去ろうとする。


事情があって、俺はもう何年もホームレスをしている。

ボロボロのスーツからは、悪臭がする。

誰かと話したところで、ろくなことにはならない。


「これを見てくれたら、理由がわかります」


娘さんが、ひどく傷ついた一人の女性の写真を俺に見せてくる。


「やっと捕まえたんです。逃がしたりはしませんよ。」


娘さんはそんなことを言いながら、俺の腕をつかむ。


「私たちだけで、やってしまったら、夫の無念が晴らせませんからね。」


おばさんも、そういって、ニコニコとしながら、もう片方の手を取った。


今のままでは目立ちすぎるからと、二人の家に向かう。

どこにでもありそうな、戸建て住宅であったが、周囲にはやたら落書きがあった。


「お父さんの服で、申し訳ないですが」


娘さんが、グレイのスーツを渡してくれて、それに着替える。

何年かぶりに髭を剃る。

おばさんが、にこやかに髪を整えてくれる。


「むかしは、おとうさんの髪を、よく切ってあげたのよ。」


「わぁ、結構男前じゃない」


二人はそういって、俺のことをほめてくれる。

俺も二人に、にこやかに答える。


「わたしも、昔は結構かわいいって言われてたんですよ」


娘さんは、ふざけて俺の腕に絡みつく。

おばさんは、それを見て、大げさにお似合いだと笑う。


「そんな未来も、もしかしたらあったのかもしれませんね」

「そうね。私も、結婚してみたかったわ」

「わたしも、お父さんも、孫とか抱いてみたかったわ」


そういいながら、お互いに顔見合わせて、もう一度笑う。


「いまさらですけど、一緒に行かなくてもいいんですよ」

「そうね、こんなに男前なら、まだやりなおせるわ」


私たちは、もう引き返せないけれど、あなたは違うからと、二人は、いまさらのようにそんなことをいう。


「何言ってるんですか、いまさら、仲間外れはなしですよ」


俺はわざと怒ったように話すと、二人はごめんごめんと、笑いながら答えた。


「それじゃ行きましょうか」

「そうですね、こんな日が来ることを、ずっと待っていたのかもしれません。」


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テレビの画面に、とあるマンションの一室が映る。

NEWSのキャスターが告げる。


「えー、こちらに見えます、マンションのA194号室にて、女性の死体が発見されました。遺体には多数の損傷が見られるとのことです。手足に欠損があるとのことです。また、目を何かでえぐられた様な傷が見られるとのことです。」


「只今、新たな情報が入りました。犯人が自首をしてきたとのことです。男性1名、女性2名、関係性ははっきりとしておりません」


「続報です、10年前、新宿駅で起こった痴漢事件、その犯人として逮捕された男性、また、別件の痴漢事件での犯人の家族とのことです。また、別件の痴漢事件の犯人の男性は、冤罪を訴えておりましたが、数年前に自殺しているとのこと。」


「あぁ。今ですね、新宿署に犯人が移送されています。あぁ、彼らは手を振っていますね。笑顔で、手を振っています。」


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― 新着の感想 ―
[良い点]  私みたいな馬鹿が考えたことを書いてみます。  私は馬鹿だけどこういう含みがある文章って大好きです。 「お父さんの服で申し訳ないんだけど」 →痴漢冤罪で自殺したのは中年女性と娘の「…
[一言] なんだろう。と思って読みはじめて だんだん、(;・∀・)?となり 最後意味が分かって (((;゜Д゜)))ガクガクブルブル 怖かったです
2021/06/23 23:43 退会済み
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