11 現実と非現実
たくさんの方に見て頂きそして、読んで頂けた方々ありがとうございます。
凄く凄く、嬉しいです。
今後ともよろしくお願い致します。
今回の投稿は少し短めになっていますが、読んで頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。
※ 今回少し過激な言葉、表現があります。
『今日はどんな楽しい事が待っているのだろう、お風呂も整備しなきゃいけないし、あと、石鹸が無いのが辛いよねぇ。もうそろそろ朝なのかな…』
《ピッピッピ、ピッピッピ》
『うん? 何この音?』
《ピッピッピ、ピッピッピ、ピッピッピ》
『電子音? 何で? ソフィーの家に電子音が鳴る物なんて無かったはず』
《ピッピッピ、ピピピピピピ、ピピピピピピ》
音色が変わった事で飛び起きる。
そして目に入ってきた光景、それは。
【ソフィーの家ではなかった】
「え? え? どういうこと? ここは」
そして、理解した。
ここは私が20歳の時から一人暮らしをしている部屋だった。
『な、何で?』
時間と日付を確認する、そこには。
「か、変わっていない⁉︎」
あの夜、私が疲れて帰ってきたあの日、シャワーもそこそこに入り、栄養ドリンクだけを飲んで寝た夜。
そして今日は“あの夜”の次の日だった。
そして、現実は唐突に私を本当の現実に追いやるのだった。
[ピロピロピロ、ピロピロピロ]
また新たな音色が聴こえてくる。
『この音は…』
地獄の始まりかと思わせる音色だった。
鳴っていたのは私の携帯で、画面には
【BLACK】
と表示されていた。
そう、私の職場の電話番号だ。
「はぁ〜、最悪!」
私は仕方なく携帯に出る。
『はぁ〜、やっぱりか』
朝から何度目かのため息が出る。
今日一人欠員が出たから出勤する様に、という何の気持ちもこもっていない業務連絡だった。
『いつもなら何の不満もなく、というか不満を言う元気すらないけど、淡々と仕事の準備をし出勤していた』
「はっはっは、そうよね、これが現実よね。あんな楽しい事がいつまで続くというのよ」
悲しかった、寂しかった。
「ソフィー、ソフィー、会いたい、会いたいよ」
無常にも時間だけが過ぎていった。
私は、その辺にあった食パンを一枚口に運び、誰もいない家を出る。
その後どんな方法で職場に行ったのか記憶にない。
まぁ5年も通っている道を迷う事はないのだが、私の意識は抜け殻となっていた、その為か職場には数分遅刻してしまった。
出勤するなり、上司の怒りを買った。
そして、罰として大量の仕事が充てがわれた。
あきらかに、異常なまでの仕事量で、今日中に終わるわけもない量だった。
黙々と仕事をした、それはもう何も考えずに。
考える度寂しさと悔しさが押し寄せてくるからだ。
昼時になっても、私は仕事をやめず働いた。
この会社には、人を気遣うという概念がない。
皆んなが皆んな、一刻も早く帰る為に仕事をしている。
その為、人の仕事を手伝うなんてあるはずがないのだ。
そもそも、今日は昼ごはんを持ってきていない。
夜の9時を過ぎた頃、仕事を終えた人から帰り始めるのだが、もちろん私は帰れるはずもなくもくもくと仕事をしていた。
次に時計を見た時は既に日付が変わっていた。
その頃には私を含めて数人しか居なかった。
『少し休憩しよう、流石にお腹が減ったな朝から何も食べてなかったし、何か買いに行こう』
一旦仕事をやめ、コンビニまで何か買いに行くことにした。
会社を出るとそこには、緑が一つもない鉄の塊がいくつもそびえ立っている。
少し前の私なら何の感情も沸かなかっただろう、しかし今は違うあの世界を知ってしまったからだ。
『帰りたい、あの世界に帰りたい』
そんな時だった。
「キャァー助けてぇー」
女性の悲鳴が聞こえ、振り向くと一人の女性が複数の男性に取り囲まれていた。
周りの人は関わりたくないと思っているのだろう、誰も助けようとはしない。
もちろん、私もその一人ではある。
『私には関係ない』
「だれが・・うう〜う〜」
泣き叫ぶ女性の口を塞ぎ、一人は後ろから羽交い締めにする。
そして、路地裏の方へと消えていってしまった。
『関係ない、私には関係ないんだ』
「…やめ、なさいよ」
「ああ? 誰だお前?」
「…嫌がってるじゃない、その子」
3人の男達はお互いを見合い不適な笑みを浮かべた。
「そうか、あんたも混ぜて欲しんだな、良いぜこっち来いよ」
1人がゆっくりと近づいて来る。
「いや、来ないで。来たら叫ぶわよ」
「ほぉ〜、おもしろいじゃねぇ〜か、やってみろよ」
「「へっへへ」」
ジリジリと後退りをするが徐々に距離が近くなる。
そして、男との距離が無くなり手を掴まれる。
「つ〜かまえた」
凄い力で腕を掴まれ上にあげられる。
「痛! 痛い!って!」
恐怖だった。
もう一つの手も掴まれてしまい上にあげられ片手で私の両手を掴まれてしまう。
『なんて、力なの』
対抗しようにも恐怖と相手の力が強く振り解けない。
男の顔がすぐそこまでやって来る。
「こうやって見たら良い女じゃねぇーか。ふははは、今日は当たり日だな」
そう言うと、男のもう片方の手が私の顎を掴み少し上に持ち上げられる。
この後どうなってしまうのだろうという恐怖で体が震え始めた。
「もう、我慢できねぇ〜わ」
そう言うと、男は舌なめずりをしながら顔を寄せてきた。
「いや、いやいや」
わずかながら抵抗するが直ぐに顎を強く持たれ顔を寄せて来る。
「動くんじゃねぇ〜よ、犯すぞてめぇ!」
「う〜う〜うん〜、いや、やめて」
「や、やめてぇーーーーー!!」
『我が主人に触るでないわ』
直後、男の体は金縛りにあったかの様に硬直し固まっていた。
他2人の男は何が起こったのかが、分からず混乱していた。
『ようやく会う事ができましたな主人よ』
そんな声が聞こえた直後、私の中心から黒い靄の様な物が溢れていた。
その靄の中には稲妻が走っていて、禍々しく漂っていた。
『貴方は誰なの?』
『我は貴方様の眷属の一柱だ』
『眷属? 一柱? どういうこと?』
『ふはははは、説明は後にいたしましょう』
そう言うと、私の中心にあった黒い靄は右手に集約される、その直後。
『これは、獣の手? いや、少し違う様な』
現れたのは赤色の鋭い爪と、獣とは違う表皮だった。
『え!? えぇー! 私の手は? 手はどこへいったの?』
『ふはははは、臆するな主人よ。我を信じるのだ』
『いや、我を信じろって、急に言われても』
そんなやりとりをしていると、金縛りから解かれた男が激昂し向かってきていた。
「このぉー、なめやがって〜!」
「我に挑むか、よかろう、存分に遊んでやろう」
「うぉりゃー」
私の預かり知らぬ所で話は進み男が突っ込んできた、しかし。
「はあ?」
世界がスローモーションの様な感じになり、難なく男の攻撃を交わす、そして男の胸にパンチをくらわした。
直後、男は物凄い勢いで吹っ飛んでいった。
「えぇー!!」
『そんなに吹っ飛ぶの?』
『ふはははは、我に出来ぬことはない』
『いやいやいや、ダメだよ、やり過ぎだって!』
『そうか? これくらいは妥当だろう』
『マジで、貴方は誰なのよ〜』
吹っ飛んだ男は、息はあったが動かない。
他の男達は、生まれたての子鹿みたいに震えていた。
そして、囚われの身になっていた女の子もまた、怯えていた。
『ですよねぇ〜』
『どうすんのよ、この状況』
『主人は魔法が使えるであろう? 記憶を消してしまえば良いのではないか?』
『…へぇ? 魔法、私が? この世界で? 使えるわけないでしょう』
『何を言っておられる。我は主人の魔法にて召喚されたのだがな』
『え? そうなの?』
私の手に具現化した徹甲はよく笑うやつだった。
彼、と言って良いのかわからないがこう話してくれた。
『我は、龍神。主人が有する眷属が一柱なり』