10 迷子とお風呂
ブックマーク、評価をして頂きありがとうございます。
また、多くの方に見て頂き嬉しい限りです。
未だ恋愛要素が0な感じですが。汗汗
私自身も楽しみながら書かせて頂きたく思います。
今後とも読んで頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。
セバスさんの【ゲート】で王宮まで戻ってきた後、セバスさんとはその場で別れ私とソフィーは家へと向かうことにした。
家でも良かったのだが、セバスさんが大変だと思い王宮にしてもらった。
「今日はいかがでしたか?」
「楽しかったよ、けど流石に疲れたかな」
「そらそうでしょうね、寝てない上にあんなに魔法を使っていたんですもの」
『ですよねぇ〜』
「それにしても、本当にマユミは何者なんですかね?」
「え? 普通の人だと思っているのだけれど」
「普通の人間が、聖属性魔法だけでなく4大魔法や空間魔法まで使えるなんて、多分闇属性魔法も使えるのでしょう?」
「それは、どうかしら!」
「まぁ、良いですわ。それどころか、あの魔法まで使えるんですもの、もうマユミは、普通じゃないわ」
『異常者の烙印を押されてしまった……』
「ママー、ママー!」
「どうしたのかしら」
私とソフィーは突然聞こえた声に驚きつつも声の聞こえる方を見る。
そこには4、5歳くらいの女の子が泣きながら佇んでいた。
私とソフィーは顔を見合わせ、その子の元へと近付いて行った。
「どうかしたの?」
「!! ……ま、まが」
「うん?」
「ママが、いないの」
「あら、それは大変ですわ」
その後、女の子は不安からか泣いてしまった。
ソフィーは彼女が泣き止むまでの間、近くにいて抱きしめていた。
しばらくの後、泣き止んだ女の子から話を聞くが所々辻褄が合わない為詳細はわからなかったが、どうやら買い物に来ていて、遊んでいたらいつの間にか迷子になっていたそうだ。
「ソフィー、少しの間この子の面倒頼めるかしら?」
「えぇー、もちろんそれは構いませんが」
「少し試したい事があるの」
「……わかりましたは」
ソフィーに断りを入れた後、私はある魔法を使用した。
【サーチ】
『流石にあの子のお母さんがどんな人かわからないから、場所まではわからないけど』
私がサーチにて見たのは女の子の足跡だった。
そしてもう一つ。
【シャドー】
闇属性魔法のシャドーは本来、影を利用した移動や影へ入ったり出たり出来る魔法らしい、ロニオさんが言っていた。
私はそのシャドーをサーチした彼女の足跡と組み合わせて、彼女の幻影を作り出した。
『よし、できた。これであの子が何処から来たかわかるはず』
私は小さい幻影を追いかける、そしてあるお店の前で止まり、幻影も誰かと話している様な仕草をしていた。
『もしかして』
【サーチ】
足跡はたくさんあるが、彼女と向かい合う明らかに大きめの足跡が見えた。
【シャドー】
『お願い』
映し出した幻影は若い女性だった。
その幻影は女の子の幻影と話していた。
『見つけた。この人がお母さんだ』
幻影の対象を女の子からその女性に変え追跡することにした。
やはり女の子が言っていた通り、お母さんが買い物をしている間に女の子と逸れてしまった様だ。
探してはいるが、全く逆方向に探している為見つかるわけもない。
幻影を見ているだけだが慌てているのが手にとるようにわかる。
そして、公園の中に入っていくとそこには、幻影とよく似た女性が椅子に座り呆然としていた。
『ビンゴ』
「あのぉ〜、すいません」
「……え?」
事情を説明し、事前に聞いていた女の子の名前を告げると、私にすがりつき泣きながらその場に膝をついた。
『見つかって良かった』
サーチを使い、ソフィーの位置を調べるとあの時より動いていない様子だった。
「すぐにお子さんに会えますよ」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
2人でソフィーの元へと戻る。
そして、「ママー!」
女の子とお母さんが泣きながら抱き合う。
「ありがとう、ソフィー」
「いえいえ、問題ないですわ。それに、良かったですわね、見つかって」
「そうだね」
女の子とお母さんは何度も何度もお礼をしていた。
少し遅くなったが私達も家へと向かい帰路についた。
夕食時、ソフィーはアリエラ様に魔法訓練の事、そして迷子の子の事など、事細かに話していた。
『ソフィー! やめてぇー!! 恥ずかしいからやめてぇー!』
終始顔が真っ赤になっていた事は言うまでもない。
そんな羞恥をさらされながら食事をした後、お風呂に入ることにした。
まぁお風呂といっても、シャワーしかないのだ。
湯船はあるのだけれど、お湯がそんなに長く出ずシャワー浴も時間との戦いなのだった。
『王族なのに何でここは庶民感覚なのよ。うん〜、今日は動き回ったからな、お風呂に入りたい』
「……あ、そうだよ。出ないなら出せば良いんじゃない」
『今日魔法を習ったんだから練習の意味を込めてやっちゃいますか』
私は、湯船に向かって魔力を集中させ水魔法を発動させた。
「ウォーター」
すると、湯船の上から多量の水が滝の様に落ちてきた。
「うぎゃー! 冷た〜!!」
湯船に叩きつけられた水が反射しその一部が私にも襲いかかってきたのだ。
しばらくして、ソフィー、アリエラ様、侍女さんが駆けつけ心配そうに声をかけてきた。
「マユミ!! 大丈夫ですか?」
「マユミさん? どうしたの?」
「マユミ様、どうされましたか?」
三者三様に声をかけられ慌てて「あ、大丈夫ですので」と返しておいた。
「なら良いのですが、何かあればおっしゃってくださいね」
代表してソフィーがそう応えてくれた。
「はーい」
『危ない、危ない。てか、冷た〜、そして寒‼︎ 早くしないと!』
次は慎重に慎重に行うことにした。
『さっきは単に水魔法を発動したからああなったのかもな、じゃあ今度は』
次は、水を湯船に貯めるイメージで行うことにした。
すると、先程とは違って湯船の中から水が現れていた。
さっきの水も多少は残っていたのでこれで丁度良い量になっていた。
『よし、後はこの水を暖めないと、暖めるならやっぱり炎属性魔法だよね』
試しに、炎を指に出し水につけてみた。
(ジュッ!!)
『……ですよねぇ〜』
当たり前だが消えて無くなった。
もちろん、水は水のままだった。
『うん〜、どうすれば…… 火力を上げるか!』
まず指に炎を出し、その炎に酸素を加えるイメージで青色の炎にし火力を上げる。
そしておそらくこれではさっきと同じだと思うので、その炎を大きくし大体野球ボールくらいの球体を作る。
『改めて見ると凄いな』
指先に青く燃える炎のボールが乗っかっていた。
それを、『よし』とばかりに恐る恐る湯船の中に落とす。
すると、(ブクブクブク)と音を立て湯気の様な物が湯船から出ていた。
数秒後、音が無くなり湯船に指を入れると。
「あ、暖かい!」
まだぬるい温度ではあるが明らかに水ではなく、暖まっている。
『これならいける』とばかりにもう一回同じ炎のボールを出す、さっきよりも少し大きめにしておいた。
そして再度、ブクブクと音を立てて消えていく、その頃にはだいぶ多くの湯気が立ち上がっていて、触ると良い温度になっていた。
『よっしゃあー! お風呂ダァ〜』
あまりにも寒かったので、体もささっと洗い、いざ湯船の中に…
「ふぁぁぁ〜、生き返るぅ〜」
『ヤバい、気もち良いわぁ、癒される〜。念願だった……って言っても二日ぶりだけどお風呂はやっぱり良いわぁ〜』
思う存分満足し、出た後ソフィーがお風呂に入っていった。
「な、なんですのぉ〜このお湯は!!」
『あ、忘れてた』
「ソフィー」
「マユミ、このお湯は何ですの? こんなに多くのお湯どこから!?」
「あぁ〜、ごめん私がどうしてもお湯に浸かりたくて魔法で、ねぇ」
「え? 浸かるのですか?」
「そうよ、もし良かったら浸かってみてね」
そう伝えお風呂を後にした、その数分後。
「なんですのぉ〜、これは〜」
2度目の絶叫が聞こえ向かうと。
「ソフィー?」
「マユミ、これは。なんてことでしょう」
『あぁー、感動されてるのですね、わかりますよソフィーさん、うんうん』
さらに数分後、ソフィーがお風呂から出てきた。
それはもう、凄く満足気な表情で。
「マユミ、明日もよろしくお願いしますね」
と、言われてしまった。
その後、アリエラ様、侍女さんと入浴されたが見事に同じ反応だった。
『面白い』
『こうなったら、毎日使いそうだから蛇口に魔法でも付与した方が早いかもしれないな。それと、常に新しいお湯になる様に循環する様に出来ないかな』
そんな事を考えながらソフィーと一緒に寝床へ向かうのだった。
「今日は色々な体験ができましたわ」
「私もよ、ロニオさんにはちゃんとお礼を言わなくっちゃ」
「魔法も凄かったのですが、お風呂には衝撃を受けましたわ」
「あ、そっちね」
「えぇ! 盲点でしたわ、でも普通ならあれほどのお湯は貯めれませんものね」
「長くはお湯が出ないものね。そこでなんだけど、お風呂の蛇口に、魔法を付与しても良いかしら?」
「魔法を付与?」
「ええ、毎回毎回私が魔法でお湯を作るとなると私が一番に入らないといけないじゃない。それは少し現実的では無いので、誰でもお湯をはれるようにしようかなと思ってね」
「そんな事が出来るのですか?」
「まぁ、やってみないとわからないけどね」
「是非、是非して下さい」
キラキラとした目を向けてくるソフィー。
『眩しい』
目が合い、笑いあう2人。
「ふぁ〜、流石に眠たくなってきたよ」
「昨日は寝ていない上にあれだけの魔法を使ったのですから当然ですよ」
「自分でも異常かなとは薄々感じてたわ」
「薄々ですか……」
「「ふふふ」」
思わず2人して笑ってしまった。
「明日はお風呂に入れる様にしてもらわないといけないのでしっかり寝て下さいね」
「ふふ、そうね。わかりましたよ、お嬢様」
何度目かの笑い、私達は明日を待ち遠しく思い深い深い眠りへと落ちていくのだった。