表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/51

49 神様にお願い


 寺についた。


 辺りは着物を着た観光客でごった返していて、人の多さに圧倒された。


「沙希。一応、俺の手を離さないでね」


「ふふっ、はい。……でも、言われなくてもずっと離しませんよ?」


「さ、沙希……可愛すぎるよ」


「っ‼ め、面と向かってそんな……う、うぅぅ」


 沙希は褒められるのが苦手らしい。


 参拝の列に並び、鈴を鳴らす。


「(沙希とこれからも、幸せな時間を過ごせますように)」


 あと、ついでにもう一つ。


「(……キス、上手にできますように)」


 神にもすがりたいほど、心配だった。


 隣を見ると、沙希が目を閉じて手を合わせていた。


 どんな状況でも、沙希は綺麗だ。


 見惚れていると、沙希がこちらを向いた。


「どうしたんですか?」


「いや……やっぱり沙希って、綺麗だよなって思ってね」


「き、綺麗……! う、嬉しいです……」


「たぶん、目に入れても痛くないと思う」


「……私は娘ですか?」


「……何でもない」


 失言だった。


 でも、沙希がおかしそうに笑っているから、よしとしよう。


「随分長いこと願ってたけど、何を願ってたの?」


「そ、それは……ひ、秘密です。そういう怜太さんは?」


「じゃあ俺も秘密にしようかな」


「むぅ~怜太さんのケチ~」


「それはお互い様でしょ?」


「ふふっ、そうなんですけどね」


 沙希ともう一度手を繋ぎ直し、歩き出す。


「あっ、怜太さん! おみくじ、引いていきませんか?」


「おっいいね。引こうか」


「はい!」


 おみくじを引く。


 沙希は随分と悩んでいたが、「これだ!」と言わんばかりに一枚取り出した。


「できれば大吉、来て欲しいですね!」


「そうだね」


 沙希が楽しそうに開ける。


「あっ! 見てください怜太さん! 大吉です!」


「おっ、ほんとだ! よかったね」


「はいっ! なんか今日は、すこぶる調子がいい気がします!」


「それはよかった。クリスマス効果かな?」


「そうかもしれません。ちなみに、怜太さんはどうでした?」


「俺は……あっ、小吉だ。微妙だなぁ」


「まぁきっと、ここからよくなるってことですよ!」


「きっとそうだね。じゃあこれ、掛けようかな」


 おみくじを括りつけようとすると、沙希が俺の手をグイと引っ張った。


「怜太さん。それ、くれませんか?」


「えっ、これ?」


「はい! その……記念に」


「こんなのでよければ、もちろんいいよ」


「ありがとうございますっ! えへへ」


 小吉のおみくじを、持って嬉しそうにする沙希。


 それがなんで欲しいのか分からないけど、沙希を笑顔にできたならこの小吉は無駄じゃなかったってことだ。


「大切にしますね!」


「うん、わかった」


 ゆっくりと、でもあっという間に時間は過ぎ去っていった。





    ▽





 陽が暮れた。


 イルミネーションをやっている陸繋島の最寄り駅で降りた。


 すぐに広がったのは――海。


 思えば、夏にも海に来たように思う。


 どうやら俺たちは、海が好きらしい。


 島の頂点で存在感を放つ展望台。


 幻想的なイルミネーションで、輝いていた。


「わぁぁ綺麗ですね」


「だね」


「今からあそこに行くんですよね?」


「そうだよ。たぶん、間近で見たらもっと綺麗だよ」


「ふふっ、楽しみです!」


 上機嫌な沙希。

 

 そんな沙希の手を引いて、海風を感じる。


「もう一日、終わっちゃいますね」


「何言ってんの。今日はここからが本番だよ?」


「はっ! そ、そうでした! さっきまでが楽しすぎて、つい……」


「それは、俺も同感だよ」


「ですよね! だからこそ、楽しみになってきました!」


「俺も」


 寒さを感じて、手を強く握り合った。



 クリスマスの夜が、始まった。



――きっと、これからも、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても気に入って読ませて頂いております。 [気になる点] 細かい所ですが、鈴を鳴らしたり、神様がいたりするのは、神社であり、寺にいるのは仏様で、寺で鳴らすのは鰐口などだと思うのですが。あま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ