41 彼女が出来ました
「「えぇぇぇぇぇぇぇ‼ 付き合うことになった⁈」」
海斗と流果が叫ぶ。
「ちょっと二人とも! 声が大きいよ!」
「ごめんごめん。でも、なぁ?」
「ねぇ? ずっとこの瞬間を待ってたんだからさ」
「そ、そうなの?」
「結構アシストしてたつもりだぞ? 俺たち」
「……そうなんだ。ありがとう、みんな」
そう言うと、海斗が恥ずかしそうに鼻を掻く。
「ま、まぁ気にすんなよ! 二人とも幸せになれたんだから、それ以上に嬉しいお礼はねぇよ」
「か、海斗……」
「こういうのは素直に言えちゃうあたり、海斗は少し残念なところがあるというか、なんというか……」
「それには同感だな」
「……お前ら、人のこと好き放題言いやがって……全く」
確かに、海斗はほんの少し残念なところがある。
だが、そこがチャームポイントだ。
みんなそこを分かっているから、いじっているのだろう。
「とにかく、おめでとう、怜太」
「ありがとう、海斗」
「末永く幸せにね?」
「うん、ありがとう、流果」
「大切にな」
「もちろん。ありがとう、壮也」
こんなにも祝福されるとは思っていなかった。
やはり、この三人は最高の友達だ。
「そういえば、俺も彼女できた」
「そうか壮也、おめで――え?」
「ありがとう」
・・・。
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇ‼」」」
壮也の爆弾発言。
なのに、壮也はケロっとしている。
「お前誰と……って、もしかして……知代ちゃん?」
「あぁ。夏休みに、告白されて」
「……マジか。ってか、それ早く言えよ!」
「タイミングがな」
……なんというか、実に壮也らしい。
おかしくなって、三人で笑った。
壮也だけクエスチョンマークを浮かべていたが。
「それにしても、お前ら一斉に幸せになりすぎなんだよ。羨ましいぜ」
「海斗なら、彼女できるでしょ?」
「……そんなに簡単なものじゃないんだよ」
「そ、そうなんだ……」
色々と訳ありな感じだったので、聞かないでおく。
「まぁとにかく、二人とも、おめでとう」
「ありがとう」
「ありがと」
その日は全員、やけにテンションが高かった。
▽
沙希と一緒に帰る。
今日はスーパーに寄ったので、左手には重い荷物が下がっていた。
「今日はかなり買ったね」
「はい! 今日は特売日だったので安かったんですよ~」
スーパーの特売日で上機嫌になるとは……もはや主婦だ。
「今日の沙希のご飯も、楽しみにしてるね」
「任せてください! ……その代わり、その後は……たっぷり、甘やかしてくれますか?」
「……喜んで」
「えへへ。私、ダメになっちゃいそうです」
「一緒にダメになるんじゃないの?」
「はっ、そうでした!」
正直、沙希がダメになる姿はあまり想像できないが。
「……じゃあ、たくさん抱きしめてくれますか?」
「……沙希は抱きしめられるのが好きなの?」
「せ、正確には、好きになったんです! れ、怜太さんのせいですからね?」
「……じゃあ、その罪は償わないとね」
「ふふっ、そうですね」
甘えてくる沙希は最高に可愛い。
お互いに想いをぶちまけたからか、沙希に遠慮がなくなったのだ。
おかげで、沙希の可愛さが増して理性が崩壊しそうだ。
「沙希、手繋いでもいい?」
今日は俺から言ってみる。
「もちろん、いいですよ。……だって、私は怜太さんの彼女ですから」
「……そうだね」
彼女って響きがここまでいいとは……手放したくないな。
俺は沙希の手をきゅっと握って、歩き出す。
何気ないこの時間が、彼女と一緒にいるだけでこんなにもかけがえのない時間になることを知った。
第二部、完結
付き合った後の二人の物語――第三部
あと少しだけ、お付き合いください(o^―^o)ニコ