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40/51

40 好き


 なんてことないキッチンで。


 沙希を後ろから抱きしめる。


「……そ、それは、ど、どういう意味なんですか?」


「そのままの意味だよ。これからも沙希には、俺の傍にいて欲しいんだ」


「……そういう意味なんですね?」


「うん。そうだよ」


 沙希がゆっくりと俺の手を優しく握ってきた。


「怜太さん、苦しいですよ?」


「あっ、ご、ごめん!」


 無意識のうちに、俺はなんてことを……。


「い、いえ! 別に気にしてませんし、それに……嬉しかったですよ……?」


「さ、沙希……」


「とりあえず、一旦離れてもらってもいいですか?」


「わ、分かった」


 突然申し訳なかったな。


 そんなことを思いながら沙希から離れると、沙希が俺の方を向いて胸に飛び込んできた。


 俺の背中に手を回し、優しく抱きしめてくる。


「さ、沙希⁈」


「……怜太さんのばか。突然抱きしめてくるなんて、卑怯です」


「ご、ごめん」


「それに、耳元であんなことを囁くなんて……私を死なせる気ですか?」


「そ、そんなつもりは……」


「全く……怜太さんはほんと、鈍感です」


「……ごめん」


「……怜太さん、また抱きしめてください」


「……う、うん」


 沙希の背中に手を回す。


 んっ、と甘い声を漏らす沙希。


 またビクンと体が震えた。


「怜太さん、言葉にしてくれませんか?」


「…………わかった」


 何を、とは言わなくても伝わる。


 少し強めに沙希を抱きしめて、言った。






「好きだよ、沙希」






 恥ずかしさよりも、幸福感が勝っていた。


「ふふっ、いざ言われると、照れちゃいますね」


「そうだね」


「……怜太さんは、私のこと、好きなんですか?」


「……好きだよ」


「……大が付くほどですか?」


「……大好きだよ」


 沙希が幸せそうに笑う。


「そうなんですか。怜太さんは、私のこと大好きなんですか」


「そ、そうだよ」


「……嬉しいです」


 沙希が顔を俺の胸に埋める。


 そして呟くように言った。






「私も、大好きです」






 顔は見えない。


 けど、真っ赤な耳が教えてくれる。


 好きの気持ちが、溢れてきた。


「好きだよ、沙希」


「……な、何回言うんですか?」


「何度でも」


「も、もうぅ……怜太さんって、ほんと、ダメな人です」


「ごめんね?」


「……いえ、一緒に、もっとダメになっていきましょうね?」


 ……この可愛さは、反則級だ。


 もっとダメになってしまう。


「ふふっ」


「どうしたの?」


「いえ。なんというか……これからは好きなだけ、怜太さんに甘えていいんだって思ったら、嬉しくなっちゃいまして」


「……可愛すぎだろ」


「か、可愛い……はうぅ、は、恥ずかしいです……」


 ……どうして沙希はこんなにも可愛いんだろうか。


 こんな子と両想いになれたことが、奇跡としか思えない。


 だけど、これが現実なんだよな……。


「ねぇ、沙希」


「は、はい?」


「これからもずっと一緒にいような」


「……はい」


 小さく頷く沙希。


 

 ――こうして、俺と沙希は付き合うことになった。


次話、第二部完結

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― 新着の感想 ―
[良い点] いや~自然ににやけてしまうわ
[良い点] ただただてぇてぇよ
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