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24 本物の初恋だ


 食後のまったりタイム。

 

 沙希と二人掛けのソファにもたれかかって、穏やかな時間を過ごしていた。


「沙希ってさ、恋したことある?」


「えぇっ⁈ きゅ、急にどうしたんですか⁈」


「いや、気になってさ」


「気になって……そ、そうですか」


 また顔を真っ赤にさせた沙希が、ふぅと一息つく。


「ま、まぁありますよ? これでも私、女の子ですから」


「そっか。沙希も恋、したことあるんだね」


「は、はい。でも一度だけですけどね」


「そうなんだ。それにしても、沙希に好かれる男の子はすごいね」


 こんなに優しくて可愛くて、なんでもできる沙希を虜にしてしまうのだ。


 きっと流果のようなルックスで、海斗のように心優しくて、壮也のようにどこか可愛げがあるのだろう。


「そ、そうですかね?」


「うん、きっと俺とは何もかもが違う、すごい人なんだろうな」


 そう言うと、沙希が俯く。


 そしてボソボソと呟くように、



「案外怜太さんみたいな、男の子かもしれませんよ?」



「な、なんて?」


「ふふっ、わざと聞こえないように言ったんですよ?」


「……沙希はたまに意地悪だ」


「怜太さんには意地悪したくなっちゃうんですよ」


「それは困った」


「幸せの間違いでは?」


「確かに、幸せだけどさ」


「ふふっ、素直ですね」


 クスッと笑って、沙希が自分の太ももをぽんぽんと叩く。

 

 それが膝枕の合図だった。


 俺はゆっくりと、沙希の膝の上に頭を乗せる。


 するといつも以上に優しく、頭を撫でてきた。


「怜太さんは、魅力的な男の子ですよ」


「ど、どうしたの突然」


「ふふっ、なんでもありませんよ」


 たまに沙希がよくわからない。


 ただ、楽しそうにしていることは分かるのでいい。


「ふはぁ」


「怜太さん、眠そうですね」


「うん。沙希の膝枕、あまりに心地よくってさ」


「っ……‼ もうぅ、怜太さんったら……」


 何度このまま沙希の膝の上で寝たいと思ったことか。


 どんな枕よりも、熟睡できるだろう。


「怜太さん、ちょっとの間寝ます?」


「でも、そしたら帰り遅くならない?」


「大丈夫です。今日両親は仕事で帰ってこないので」


「うーん……」


「たまにはいいじゃないですか。ね?」


「……わかった。でもちゃんと、家まで送らせてね」


「……手、繋いでくれますか?」


「……いいよ」


「ふふっ、ありがとうございます」


 そして、俺はゆっくりと瞼を閉じる。


 気づけば俺は、眠っていた。





    ▽





 怜太さんが胸を上下させて寝息を立てている。


 触りたくなって、頬を突いてみる。


 しかし、起きる気配はない。


「怜太さん? 寝ました?」


 私の言葉に返答はなくて、どうやらぐっすり眠ったようだった。


「(それにしても、なんで怜太さんって、乙女心を掴むことばっかり言うんだろう……)」


 さっきから胸がどきどきしっぱなしだ。


 ……いや、怜太さんの家に来てから、私の胸は高鳴っていた。


「(怜太さんって、綺麗な顔してるなぁ……)」


 長い髪を避けて、怜太さんの素顔を見る。


 きっと私しか見たことがない、怜太さんの顔。


 私はこの怜太さんの、綺麗な目が好きだ。


「怜太さん?」


 もう一度呼んでみるが、返答はない。


 眠っているという確証を得て、私は怜太さんにもっと触れたくなった。


 私の理性は、前からずっと崩壊寸前だったのだ。


「怜太さん……」


 こんなにも誰かを想ったことはない。


 怜太さんから聞かれて「気づいたんじゃないか」と思ってドキリとしたが、改めて自分の気持ちの大きさに気づかされた。


「(まだ胸の中がざわついてる)」


 うるさいくらいに脈打つ心臓。


 体中が熱を帯びる。


 私は行き場を失った感情をどうにしたいと思った。


「……無防備に寝てるのが、悪いんですからね?」

 

 私はそう言って、怜太さんのおでこに唇を寄せた。


 一瞬だったけど、余計に膨らむこの気持ち。


 子供のように気持ちよさそうに寝ている怜太さんに向かって、私は言った。







「好きですよ、怜太さん」







 この初恋は――本物だ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 遂に沙希側はそれを認めた!! そして、それで付き合ってないとかあの3人なら、絶対に言いそう笑
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