19 遊園地デートがしたい
遊園地デート編、スタートです(o^―^o)ニコ
食後のまったりタイム。
沙希の膝の上で、頭を撫でられながらボーっとしていると、ふとあのチケットの存在を思い出した。
「沙希ってさ、遊園地って興味ある?」
「遊園地は……最近行ってないですね。でもすごく好きです!」
「そっか。じゃあちょうどよかった」
スクールバックから二枚のチケットを取り出し、一枚を沙希に渡す。
「海斗たちにもらったんだけどさ、一緒に行かない?」
「い、いいんですか⁈」
「俺友達少ないから、沙希に来て欲しいなって思ったんだけ」
「行きます!」
「そ、そっか。ならよかった」
「うわぁ、眩しいです……!」
一枚の紙きれを大事そうに胸に抱える沙希。
渡してよかったと、心の底から思う。
「喜んでもらえたなら、何よりだよ」
「ふふっ、すっごく、嬉しいです!」
沙希の笑顔が眩しい。
まるで幸せを体現しているかのようだ。
「怜太さんと遊園地に行けるなんて……夢みたい」
「夢じゃないよ?」
「わ、分かってますよ! 比喩ですよ」
「そうだな。まぁ俺も、沙希と遊園地に行けるなんて、夢みたいだ」
「⁈ れ、怜太さんったら……」
沙希が頬を赤らめる。
「じゃあ今度の休日にでも行こうか」
「はい! 楽しみにしてますね!」
その後の沙希は、終始機嫌がよかった。
▽
日曜日。
最寄り駅にて、沙希を待つ。
「(あれは……忘れてないな)」
ジャケットの内ポケットに入れておいたあるものの確認をしておく。
「(それにしても、まさかあの時の経験が役に立つとは……)」
普段服装に関して無頓着の俺だが、外出する際の服はちゃんと持っていた。
それは……「私服ダサいからちゃんとした服買え」と元彼女に言われて、マネキン買いしたから。
危うくジャージで行くところだった。
「(あと三十分、か)」
待ち合わせ三十分前に来るのは基本だ。
ただそれがおかしいのだと、海斗に言われて気づいたが。
無意識のうちに、三十分前に来ていた。
「(さすがにまだ来ないよな)」
そう思っていると、前からぱたぱたと走ってくる少女の姿が見えてきた。
桜色の髪が揺れ、彼女の純潔さを表すかのような白いワンピースが、舞うようにひらひらとたなびいている。
まるでドラマのワンシーンのように、颯爽とかけてくる彼女。
「お待たせしました! 怜太さん!」
「は、早いね……沙希」
「怜太さんこそ! 待たせちゃいました?」
「いやいや、全然待ってないよ」
「そうですか。ふふっ」
上機嫌の沙希。
こっちまで笑みが零れそうになる。
「もしかして怜太さんも、楽しみだったんですか?」
「そりゃ、ね。もってことは……沙希も?」
「もちろんです!」
「そっか、ならよかった」
と、ここでもう一度沙希の服装を見る。
春と夏の良さをいいとこどりしたような姿に、惚れ惚れする。
「ワンピース、似合ってるね」
「そ、そうですかね……?」
「うん、すごく。いつも制服にエプロン姿ばかり見てきたから、なんか新鮮だな」
「そうかもです」
「沙希って何でも似合うね。元がいいからかな……」
「れ、怜太さん⁈ あ、朝からなんてことを……」
沙希が顔を押さえて悶える。
よくよく見れば、沙希の耳が真っ赤だった。
「お、俺は思ったことを素直に言っただけだけど……」
「す、少しは自粛してください! て、照れ死んでしまいます!」
「そ、そっか。ご、ごめんね?」
「い、いえ! むしろありがとうです!」
「いやどっち⁈」
女のことは難しい生き物だ。
沙希が「むぅ~……」と唸る。
そんな沙希の姿を微笑ましいと思いつつ、沙希と並んで改札に向かった。
三十分、前倒しで。