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15 沙希が不機嫌なわけ


 今日は俺の家で勉強会。


 今日もまたレインで『教室まで迎えに行きます!』と沙希に言われており、教室にて待機していた。


「もう沙希妻じゃん、ねぇ流果?」


「これが俗に言う通い妻って奴? 怜太に先越されちゃったなぁ」


「そ、そんなんじゃないよ!」


「お前ら、そろそろからかうのやめてやれよ」


「……しょうがないな。じゃ、お先に失礼」


「うん、また明日」


「バイバーイ」


「うん、ばいばい」


 三人を見送る。


 すると前の席の土田君が、待ってましたと言わんばかりに振り返った。


「また今日も彼女が迎えに来てくれるのか?」


「土田君も……だから、そういうのじゃないんだってば」


「ほんとかねぇ? 怪しいなぁ……?」


「ほんとだって!」


「何々? 成宮君の恋バナ⁈」


「委員長まで……ほんと、違うんだよ」


 委員長が隣の席に座る。


 なんでみんな、変な勘違いばっかりするんだろう。


 もしかして、からかってるのかな?


「成宮君、彼女いるのぉ?」


「い、いないってば!」


「委員長、こいつめちゃくちゃ可愛い美少女と!」


「なんだってぇ⁈」


「だから違うんだって!」


 ふと、教室の外から視線を感じた。


 見てみると、そこには顔だけぴょこんと出してこちらを見ている沙希の姿があった。


「あっ、ごめん。もう行かないと」


「楽しめよー彼女と」


「そんなんじゃないってば!」


 二人に手を振って、沙希の隣に立つ。


 沙希は何故かしょんぼりしていて、少し拗ねていた。


「お待たせ、沙希」


「こ、こんにちは……怜太さん」


「……どうしたの?」


「な、なんでもありません。行きましょう?」


「う、うん」


 ……今日の沙希は、少し変だ。





   ◇





 俺の家で、同じ机で向かい合って勉強する。


 俺が勉強を教える、という約束だったが、沙希は一人でひたすら問題集と格闘していた。


「(……邪魔しちゃ、悪いよな)」


 何があったのか聞こうと思ったが、やめておく。


 テストに余裕があるわけでもないので、俺も同じように問題集に向き合った。


 会話がないこと数十分。


 黙々とペンを走らせていた沙希が、口を開いた。


「……怜太さんって、彼女さんいたんですか?」


「えっ?」


「可愛い彼女さんでしたね。もう彼女さんがいたなんて、知らなかったです」


「……沙希、何か勘違いしてない?」


 俺に彼女なんているわけがない。


「か、勘違いだとしても、怜太さん、今日理科室で水色の髪の子と……」


「……あぁーあの時のことか」


 理科室で抱きしめるように委員長を受け止めた瞬間を、沙希に見られていた。


 おそらくその時のことを言っているのだろう。

 

 確かに、あの現場を見たら勘違いしてしまうのも無理はない。


 だが、これは完全な誤解だ。


「あれはね、かくかくしかじかで……」


 すると沙希が唇を尖らせて、


「ほ、ほんとですか?」


「ほんとほんと。委員長とはただのクラスメイトだよ」


「……そ、そうなんですか。ふ、ふぅーん」


 ほっと安心したように胸を撫でおろす沙希。


 そして沙希が俺の目を見て言った。



「怜太さん、頭を撫でさせてください!」



「……へ?」


「いいから、撫でさせてください!」


「えっ、う、うん?」


「さっ、早く!」


「は、はい!」


 沙希に急かされるがまま、沙希の隣に行く。


 すると沙希が俺の頭をくいっと沙希の膝に乗せて、頭を撫で始めた。


「さ、沙希?」


「しばらく、こうさせてください」


「……わかった」


 結局、三分ほど頭を撫でられ続けた。


 

 沙希の不機嫌は、いつの間にか解消されていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] あからさまに安心する沙希さん,大天使かよ
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