1 クラスの女子に捨てられた
新連載です!
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「(ま、マズい……!)」
俺、成宮怜太は全速力で走っていた。
五分前ほどに、付き合って二ヶ月になる彼女に突然呼び出されたのだ。
場所は駅前のカラオケ。
連絡してきたのは十時前で、十時に来いという。
彼女は遅刻を絶対に許さない。
遅刻したら金輪際関わるなと言われるのも、十分あり得る。
歩道橋の階段を勢いよく駆け上がる。
「(このペースなら、何とか……!)」
――そう思った瞬間。
「きゃっ!」
悲鳴に似た声が、階段の上から聞こえる。
視線を向けてみると、そこにはたくさんの食材を抱えた女の子がいて、ふらりと体が傾いていた。
「危ない!」
ふわりと桜色の髪が揺れる。
咄嗟に動き出し、転びそうになる少女を受け止めた。
間一髪のところで、間に合った。
「大丈夫ですか?」
「あっ、すみません! 大丈夫で……痛っ」
「どこか痛みますか?」
「あ、足首が……」
「ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「は、はい」
少女に靴を脱いでもらい、患部を確認する。
「あぁー腫れてる。捻挫かな……」
少女の白くて細い足が、赤く、そして大きく腫れてしまっていた。
加えて少女の両手には、重そうな荷物があった。
「(……助けるべきか? いや、でもこのままだと……)」
十時は刻一刻と迫っていて、今から走りだせば何とか間に合うくらい。
遅刻は絶対に許されない。
だけど……。
「あの、急いでますよね?」
「えっ、いや……」
「あの、気にしなくて大丈夫ですよ! 私、こう見えて強いので!」
気丈に笑って、少女が立ち上がる。
両手に袋を持って、歩きだそうとしたその時、またしてもふらついて転びそうになってしまった。
「いたたた……」
やはり痛そうな少女。
その姿を見て俺は少女の袋を手に持った。
「送ります。歩けますか?」
「えっ、で、でも……」
「いいんです。気にしないでください」
「……すみません」
「いえいえ」
少女は歩けるようだったが、一応念のため肩を貸す。
俺はそのまま、少女を家まで送り届けた。
▽
とにかく全力で走った。
もう遅刻は確定していたが、事情を話せばわかってもらえると思っていたから。
待ち合わせ場所である、駅前のカラオケ店に入る。
そして彼女の待つ部屋の扉を開けた。
「ごめん!」
開口一番にそう言う。
彼女のいる部屋には、何故か見知らぬ男の人と女の人が数人いた。
「え、誰?」
不機嫌そうに俺を一瞥する。
「ほんと、遅刻してごめん!」
「ってだから、誰って聞いてんの」
「……え?」
彼女の周りにいる奴がゲラゲラと笑う。
「由美の彼氏君じゃねぇの~? 忘れるとかひっどー!」
「あぁー成宮ね。そんな奴もいたわ」
「ほんと由美ひっでぇー!」
また笑いが起こる。
この笑いは、嫌な笑いだ。
俺が状況を理解できずにいると、彼女が切り捨てるように言った。
「もうあんた用済みだから、帰っていいよ。ってか、さよなら」
その言葉が俺の中に反芻する。
また起こる下卑た、人をバカにするような笑い。
俺はそれに耐えきれなくなって、逃げるように店を出た。
とにかく走って、現実を忘れようとした。
しかし、走れば走るほど、現実を実感していく。
「(あぁ、俺。捨てられたのか)」
俺はその場に、崩れ落ちた。
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