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グラニエ城祭④ (舞踏会 リリー&ライフ組)

「ちょっとライフ、私が話しているからってよそみばかりしないの!」


リリーはライフの耳をつまみながら小さい声で囁いた。


「別にいいだろ、どうせしゃべるのは母さんだけなんだから」

「だからって、お客様と話している時はお客様の目をみて、愛想笑いぐらいしておきなさいよ」


「してるだろ!僕は忙しいだから、母さんと一緒に行動しているだけで妥協してくれないとさ、別に僕が愛想笑いをしなくても相手は気にしないって」


「そういう問題じゃないのよ」


プリプリして怒っているリリーをよそにライフの視線は優に向けられていた。

「くそ~フレッドの奴優ちゃんとダンスを何回踊ったら気がすむんだ」

「まったく、肝の小さい男ね」


ぼそっとあきれ顔で息子の横顔を見ながら呟くリリーの言葉など耳に入っていないようにフレッドと優のダンスを睨み続ける息子にため息をつきながら、強引に息子の腕に自分の腕を通しながら強引に次の客に挨拶をしに向かった。


「ようこそ、いらしてくださいましたドギマ様、息子のライフです」

「初めてお目にかかります、今後共よろしくお願いいたします」


ライフは瞬間に笑顔を作ると、目の前の夫人に対して笑顔を振りまいた。


「まあ、リリーさんは幸せね、こんなにハンサムな息子がいて、どう?もう決まったお相手のご令嬢はいらっしゃるのかしら?」


明らかに後ろにいる娘を進めようとしているのが見え見えなのが分かる。ライフは笑顔で言った。


「はい、ご心配には及びませんよ、心に決めた相手ならいますので」

「あらそう・・・残念ね」


そういうと去っていく、その繰り返しだった。


「ねえ母さん、これってもしかして集団見合いか何かなの?」

「あら、なんの事かしら?」

「とぼけるなよ、さっきから挨拶しているのって母と娘がいるのばかりじゃないか!」


「仕方ないでしょ。断っても断っても娘をどうかっていってくるんだもの。この際、一気に紹介してしまえば相手もあきらめるでしょ」


「はあ?もしかして今回母さんとペアにされたのって母さんが母親としての仕事を僕に丸投げする為ってこと?」


「何言ってるのかしら、元をただせばあなたに来ている縁談依頼でしょ、自分で断るが筋でしょ。もう子どもじゃないんだから」


「はあ?僕のせいにしないでほしいんだけど、僕は関係ないからね。僕は優ちゃん以外とは結婚なんかしないからな!」


食ってかかるライフにリリーがフレッドと楽しそうに会話をしている優を眺めながら言った。


「あなたが勝手に思っているだけでしょ。碧ちゃんに聞いたけど、優ちゃん日本でもかなりモテるみたいじゃない。あなたみたいな頼りない親がお金持ちってだけのチャラ男より、いい男たくさんいるんじゃないの?優ちゃんに振られたらあなた一生独身でいるつもりなの?」


「はあ?まだ振られたわけじゃないのに、やめてくれるかな、振られる前提で話すの、僕はまだ大学生だよ、見てろ社会人になったら、自分で稼いでやるよ」


「何言ってるのよ、会社をつぐんだからあなたは大学を卒業したらビルの会社に入るに決まってるでしょ」


「そんなのまだ決まってないだろ、僕の人生なんだから、親の言いなりになんかなってたまるか!そんなに跡継ぎが必要なら。母さんがもう一人産むか、叔父さんに相手を見つけて子ども作るように言えばいいじゃないか!父さんはまだ若いんだから後20年ぐらい大丈夫なんじゃないか」


「はあ・・・それができればしてるっていうのよ、あなたもそろそろ覚悟を決めなさいよ」

「もしかして母さん優ちゃんとの事反対なの?」


「そんなわけないでしょ、あの子が娘になってくれるなら言うことないわよ。だけど、今のあんたじゃ頼りないっていっているのよ」


「意味わかんないね、僕は僕の考えがあるんだ。もういいだろ、僕は優ちゃん一筋なんだから、どの金持ちの娘とも結婚なんかしないからな。断るなら母さん一人で周ってよね」


「わかったわよ、今夜全部ノルマを達成できたら、この夏中休みをあげるわ。あなたが優ちゃんと過ごしたいなら過ごしてもいいわよ。但し好き勝手出来るのは大学の間だけですよ。あなたにはこのレヴァント家を背負って行かないといけない定めがあるんだから。そのことだけは肝に銘じておきなさい。あなたがレヴァント家の息子として生まれてきた限りは避けられない定めなんだから」


「定めね・・・いつだったか悩んでいた時に碧ちゃんに言われたことがあるんだ。もしかしたら一秒後に空から隕石が落ちてきて一瞬で天国に行っちゃうかもしれないだろ、だけど、僕が今ここで死んだとしてもきっと会社も世界も何事もなかったように明日はきて世の中は動いていくってさ、そう言われた時思ったんだよ、僕は僕のしたいように生きるって、僕はレヴァント家の犠牲になるつもりはないよ」


「あなた何言っているのかわかってるの?」


「ああ、わかっているつもりだよ、だけど安心してよ、叔父さんのように何もしないで逃げ出したりしないからさ」


いつもまにか大人の目をするようになった息子をもうしばらく見守ろうと思うリリーだった。

その後も次々と挨拶をしてまわるほとんどがライフ目当てできている世界中のお金持ちのご令嬢ばかりだった。もちろんその中にライフ自身が知っている顔なじみの姿もあった。ライフは彼女達にフレッドが時折優をほってどこかに行く隙に、話しかけてあげてくれと女友だちに頼んだことがのちに大きな問題になることをこの時のライフは想像すらしていなかったのだ。



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