表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/164

第81話 Days1~刺客~

 影のひとつが、扉のノブを捻った。

 一体どうやったのか、やはり音が無い。

 ほんの少しの隙間が開き、影が部屋へと滑り込んだ。


 とても広大な部屋。その中央に天蓋(てんがい)付きの巨大なベッドが、その隣には小さなシングルベッドが横たわっている。白いレースのカーテンが閉じられてはいるが、蒼い光に照らされ、眠りを貪る主が淡く映し出されていた。

 影がベッドを取り囲んだ。


 月明かりが、枕に埋もれる黒い髪の毛を照らした。

それを確認すると一呼吸も置かずに、影は一斉にカーテンの隙間から短刀を差し込んだ。

 くぐもった鈍い音が小さく響いた。


「痛っ!」


 ベッドから漏れ出てきた声に、影達は驚きを隠せなかった。3本もの短刀を突き立てられ、「痛い」など声を出せるものではない。

 そこはかとない違和感に、影のひとりが短刀を引き抜こうと後ずさった。


「どこに行くんでぇ?」


 が、布団の隙間から飛び出てきた声と腕が、影の手首を絡め取った。逃げるのは許さない。そんな意志が籠められているのは明白だった。

 仲間のひとりが腕を取られ、他のふたりは離脱を決意したようだ。有事の際には仲間であろうと容赦なく切り捨てる。そういう取り決めなのだろう。

 影達が床を蹴ろうとした刹那だった。

 天蓋から何かが降ってきた。


 それが何なのか。影達には見極める暇すら与えられなかった。

 逃げようとしたふたりの首元に、降り立った何かが食らい付いた。そこでようやく見極めが付いた。


 それは、獣だった。


「あがっ!」

「ぐぁ!」


 暗闇から悲鳴が上がった。手首を捕まれた影はそれを振りほどこうと必死だった。このままでは自分も危うい。自由になる方の手を懐に滑り込ませたが、既に遅かった。


「逃がしゃあしねーよ。」


 目の前に立っていたのは、グールの男だった。

 衝撃が走った。

 凄まじい力で頭部を掴まれ、気が付いた時には彼の体は寝室の床に叩き付けられていた。


「ここに来たってことは、姫殿下に夜這いだな?室長にバレる前に……」


 グールが手刀を振り上げた。


「そこまで。」


 と、同時に、部屋に明かりが灯された。


ころす(殺す)な、ゴルウッド。アイネ、ララも。とどまれ。」


 ゴルウッドと呼ばれたグールが振り返ると、寝室の入り口にはクロエの姿があった。その言葉に応えるように、全員の動きが止まった。

 仄明るい室内ではグール以外にも、大型の獣が侵入者を押さえ付け、既にその喉笛を噛み砕いていた。一方はシャープなシルエットを持つコヨーテ、もう一方は鮮やかな柄を持つヒョウだった。


「あー、クロエ殿?アイネもララも、間に合わなかったようで?」


 ゴルウッドは肩を竦めると、小首を傾げながらクロエへと顔を向けていた。

 明かりが灯ると、黒髪は深い紺色だということが分かった。幼さの残る顔立ちに、幼さの残る返答だ。だが、この青年は確か既に成人を迎えていたはずだった。


「しようのない。」


 クロエの嘆息に合わせるように、コヨーテが変身を解除した。

 ショートボブに切り揃えた黒髪。まるで人形のような顔付きをした細身の少女がアイネ。

 アイネに続きヒョウ化を解除した成人女性がララ。長身と、背中まで伸ばしたブロンドの髪と相まって、ジョハンナに繋がるゴージャスさを感じさせる。


「申し訳ございません。勢い余って、つい。」


「まぁ、姫殿下を狙った不届き者ですし、報いは受けて当然です。」


 それぞれがバツの悪そうな表情を浮かべ、頭を掻いたり毛先を弄ったりしていた。


むくい(報い)じょうほう(情報)をひきだしてからだ。」


 そんなふたりをそれ以上咎める意思はない。ゴルウッドが取り押さえた黒装束を手早く縛り上げると、クロエは早速、尋問を開始した。


 黒頭巾を剥ぎ取った下から現れたのは、美しい男の顔。やはり、予想通りの黒子(シャドー)族だった。

 が、しかし……その男もまた、既に事切れていた。





新キャラ盛り沢山!何回も読み直して覚えて下さいね♪(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ