第十三話 幹部VS勇者
「おい! 我は本当に魔王軍の幹部なんだぞ!?」
「いいぞ兄ちゃん! 頑張れ!」
「ひゅーひゅー!」
俺たちが準備を整え、広場に足を踏み入れた時には彼、タマリオンは酔っ払いに囲まれていた。
見た目もあってピエロ扱いされているようだ。
「ぐぬぬぬ……!」
頭を抱えている姿は少し憐憫を誘った。
しかし本当に何をしに来たのか。
「そこまでよ、酔っぱらい! おとなしくお縄につきなさい!」
「だから我は魔王軍の幹部だと言っているだろうが!!」
「詳しくは衛兵の詰め所で聞きくの」
「一晩牢に入って頭を冷ますのだ」
「私たちは勇者です、抵抗はおすすめしませんわ」
ライアに続き、リノたちも大人しくしろとそれぞれの武器を彼へと向ける。
だが、タマリオンは特に動揺した様子もない。
強いて言うなら頭を抱えてブツブツと呟き続けているくらいだ。
「なぜだ、なぜ誰も信じない……。命が惜しくないのかコイツラ」
ライアが何度か声を掛けるが、聞こえてないらしく反応がない。
さて、どうするかと悩んでいたところ、ローブを着た少女、リノが一歩前に踏み出る。
「無視するな、なの」
そしてそのまま持っていた杖を彼の頭へと振り上げる。
え、ちょっとまって!?
君の力で杖振り下ろしたら一般人相手だと頭が弾け飛んじゃうよ!?
「大丈夫なの、システィーに蘇生してもらうの」
「なるほど、頭を再生すれば酔いも覚める……ってなんか違くないか!?」
「細かいことは後で考えるの」
「ああっ!」
無常にも、杖は振り下ろされ。
しかしザクロは咲かなかった。
こんなのでも魔王軍幹部、レベル二百の防御力は伊達じゃないってことだろう。
「ん? 今、何かしたか?」
「ようやく気がついたの」
そしてタマリオンもこちらに気がつく。
リノはやや動揺しつつも再び杖を彼へと突きつける。
「勇者なの、大人しくお縄につくの」
「はっ。はははっ……」
「何がおかしいの」
「すぐに、わかるさ!!」
タマリオンは素早くリノの頭に手を伸ばし、そして姿を消した。
「消えた? 一体どこに?」
急に消えたタマリオンに周囲が動揺する。
しかし俺は知っている。
奴の能力の一つ、憑依だろう。
相手と同化し、その体を乗っ取る。
さらには精神なども侵食するのだ。
「はははっ」
リノが不自然に笑い出す。
ゆらりとこちらを振り返った彼女の目は金色に輝き、口元には下品な笑みをたたえていた。
「リノ!? どうしたの!? まだ誰にも見られてないわよ!?」
「そうだぞ! 今日は無風だからな!」
「新しい世界でも見つけたのですか?」
みんな……、俺、突っ込むところが違うと思うんだ。
「愚かな勇者共! 我を見くびったことを後悔……はあっ!?」
しかし急にリノが慌てだす。
まぁそうだろうな。
「はっ!? はっ!? なんで???」
なんでこの子ローブの下に何も着けてないの!?
そういいながらリノは手で身体を弄る。
うん、風呂上がりみたいだったからね。
普通に俺たちと出かける時は服を着てるけど、そうじゃなかったら今までと変わっていない。
「ちょっ、やめっ、犯される!? イヤー!!」
リノの瞳が明滅したかと思うと、すぐそばにタマリオンが出現した。
その息は荒く、額には汗が浮かんでいた。
「なんなのこの子!? 頭おかしいんじゃない!?」
彼はひざまずき、いやいやと首を振っている。
リノがあれ過ぎて逆に侵食でもされたのだろうか?
「なっ、私たちの仲間になんてことをいうんだ!」
「はっ、お前も勇者か。いいだろう、のっとってくれる!!」
そして今度はシャルロットに憑依するが……。
「このド変態! 脳内ピンク!!」
すぐに憑依を解いてシャルロットへ罵声を浴びせかける。
なんか涙目になってプルプル震えてるし、もうやめとけばいいのに……。
やはり魔王軍幹部の意地があるということなのだろうか。
「はぅあっ! な、なんて罵声を……、もっと言ってくれ!」
「うがああああ! 次だ!」
追い詰められた彼は、最も取ってはいけない選択肢を選ぶ。
タマリオンさん。
そいつは悪手でっせ……。
「アバババババ……」
システィーに憑依したと思った瞬間、すぐに飛び出てきて地面をのたうつ。
ですよねー。
アンデットも真っ青の邪気に満たされてるんだもの。
普通の悪魔じゃそうなるわな。
「あの、大丈夫ですか……?」
「き、貴様のパーティーメンバー頭おかしいだろ!?」
「全員がってわけじゃないですけど……、立てます?」
一応俺とライアはわりかしまともと思うよ?
そう思いながら手を伸ばしたのが悪かった。
「ならば貴様をのっとってくれる!」
「んなっ!?」
く、何かが入り込んでくる感覚が……。
これが憑依と言うやつなのだろうか。
全能感が全身を走り、思考が溶けていく。
だが、その速度は徐々に遅くなり、今度は逆に思考がクリアになっていった。
「……、魔王様、ここにおられましたか」
「しばらく黙っておれ」
「御意に……」
うん。
どうしようね、これ。
「えっと、マグス。大丈夫?」
「ああ、うん。なんか大丈夫っぽい」
心配するライアと不思議そうな顔を浮かべるリノたち。
しかし説明なんて出来るはずもなく。
俺は先程の悪魔は俺に憑依するふりして逃げ出したみたいだと苦しい言い訳を口にする。
信じてもらえたかどうかは微妙だが、特に何も突っ込まれることはなかった。
「まぁいいわ。それより早く宿に戻りましょ。リノ、あなたせめて下着くらいは身につけなさいよ」
「時間がなかったの」
奇異の目を受けながら俺たちは宿へと戻る。
俺はちょっとOHANASHIしないといけないみたいだからね……。
なんか魔王様めちゃくちゃ怒ってるみたいだし、めんどくさいなぁ。
当分休載予定です。
気が向いたら更新するかも?




