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第十一話 お茶会にて

「すごいですね、半年で五十以上レベルが上がったんですか」

「あはは……」


 半年ぶりの冒険者ギルド。

 そこで俺は冒険者カードの更新を受けていた。

 懐かしのお姉さんは俺のことを覚えていないらしく、特にリアクションはない。


「スキルは……、数は多いですけど一部を除き変わったものばかりですね?」


 受付のお姉さんが訝しげな顔をするが特に説明するつもりもない。

 というか説明できないし。


「ですかー」


 冒険者カードのスキル欄。

 そこには表示しきれないほどびっしりとスキルが記載されていた。


「一体何をすればこんなスキル構成になるのか興味があるのですが」

「冒険者の秘密ですから」

「まぁそうですよね。一応報酬もありますのでご検討ください」


 はっはっは。

 誰が金と引き換えに自分の死刑執行許可書へサインなんかするんだ。

 適当に流して俺は受付を後にした。



「凄いわね、私たちとあまり変わらないじゃない」


 喫茶店でお茶を飲みながらライアは俺のカードを眺める。

 クエストもやっていなければギルドに魔石やアイテムの納品もしていないのでランクはFのままだが、レベルだけは六十三とそこそことなっている。


「え? そなの?」


 前に魔王から聞いた時は勇者は皆レベル三百を超えているみたいな感じだったと思ったけど。


「あー、やっぱ意外よね。ただ、一般でよく知られている勇者って魔王討伐に向かうような人たちでしょ?」


 そういいながらライアは自分の冒険者カードを差し出してくる。

 そのカードにはレベル七十八、冒険者ランクAと記載があった。


「十分にレベル上がってから討伐に向かうの」

「最初から高レベルというわけではないのだ。当然だがな」

「私たちのパーティーで一番レベルが高いのは私ですけど、それでもレベル八十ですから」


 ライアに続き、リノたちが自分のカードを取り出し、俺へ差し出す。

 みんな冒険者ランクは同じAだが、レベルは若干の差がある。

 リノが七十五、シャルロットが七十四、そしてシスティーヌがレベル八十だ。


「私たち、一年前に神様から宣託があったばかりの新人勇者なのよ」

「そういえばもう一年経つのだな」

「長いようで短かったの」

「とても楽しい一年でしたわね」


 それぞれが楽しそうに笑う。

 きっと、この一年彼女たちにとって素晴らしい一年だったのだろう。


「うむ、多数の魔物に痛めつけられるなど以前は考えられなかった」

「監視の目がないのは素晴らしいの」

「ふふ、みなさんの楽しんでる姿は私の心を潤してくださいましたわ」


 ただ一人、腐った魚の目をして呟いているライアを除いて。


「ふ、ふふ……。大丈夫、大丈夫……。だって新しく素晴らしい仲間が出来たのだもの……」


 俺の後ろになにかあるのかなー?

 うん、壁があるね。

 素敵な壁だ。

 この壁なら冬の寒風も通さず、暖かい夜が過ごせそうだ。

 ライアは壁を見る目があるなぁ。


「ね! マグス!」


 現実逃避くらいさせてくれよ。

 というかそんな熱い眼差しでこっち見ないでくれる?

 勘違いしちゃうでしょ?


「あら? マグス様、この触手というスキルはどういうスキルなのです?」


 いつの間にか俺の冒険者カードをライアから受け取っていたシスティーヌが瞳を輝かせる。


「なに! システィー、今触手といったか!?」

「ええ。シャルもみてくださいな」

「貸してくれ!」


 システィーヌの言葉に反応したシャルロットが冒険者カードを受け取り、穴が空くほど見つめる。


 いや、力入れすぎだから!

 冒険者カード折れちゃうから!


「す、すごい。なぁマグス! この凌遅刑スキルというのはどういうものなのだ!? 言葉の響きから素晴らしいスキルというのがひしひしと伝わってくるのだが!」


 あー、たぶんスライムさんを刻んでた時に得たスキルですね。

 途中から剣で斬るのがめんどくさくなって、トントントントンとまな板に乗せて切っていたので。


「シャル、はしゃぎすぎなの。個室でも音は漏れるの」

「ああ、リノ、すまない。つい興奮してしまった」

「そういえばリノ。マグス様のスキルに透視というものがありましたわ」

「ちょっとそのカードをよこすの! ……ホントなの! マグスこれはどういうスキルなの!?」


 俺のカードに目を通すと、リノは鼻息荒くこちらに身を乗り出してくる。

 いや、そんな熱い目で見られても君には使わないからね?


「……、そうだ、リノ。今度からちゃんと服を着てみるのはどう?」

「はぁ? ライアは何を言ってるの?」


 リノがお前は一体何を言ってるんだといったトーンでライアを鼻で笑う。


「だってほら、透視スキルがあるわけだし」

「……」

「隠しているところ、見られたほうが燃えるんじゃないかなーって」


 ライア、お前は一体何を言っているんだ……。

 あれか、おかしな連中とずっと一緒に居すぎて伝染ったのか?

 やはり俺は早くこのパーティーから脱出したほうがいい気がしてきた。


「!! それなの! ライアは天才なの!」

「ふふ」


 機嫌よく微笑むライアを見て、俺はもうこの子は手遅れだと察する。

 このお茶を飲み終わったら、俺パーティー抜けるんだ。


「流石はマグスの生オ○ホなの!」

「ぶふー!」

「ゴホフッ!」


 俺とライアが揃って紅茶を吹き出す。

 何いってんのこの子!?


「ゲホッ! ゴホッ!」

「な、なっ、なっ!? どどど、どうして私がマグスの、その、生○ナホって!?」


 俺がむせている間にライアがリノに問い詰めるが、リノは不思議そうな顔をして首をコテリとかしげる。


「だってライア、昨日マグスに何でもいうこと聞くって言ってたの」

「そういえばそんな事も言ってましたわね?」

「あ、あれはっ!」

「マグス! ライアにそんなことを言わせたのか!? なんてことを! うらやまけしからん!!」


 もうお前ら黙れよ。

 頭が痛くなってくる。

 そりゃ確かに心惹かれる台詞だったけど、こんなに騒がられると萎えてくるんだよね。


「それともガルシア家の娘は約束を反故にするの?」

「そ、そんなことは……」


 俺が頭を抱えている間にもリノはライアを責める。

 マジ容赦ないな、こいつ。

 幼馴染の親友じゃなかったのか?

 あ、もしかして、友だち片思いとか……?

 ライア……、可哀想に……。


「友だちの喜びは私の喜びでもあるの」

「リ、リノ……?」

「だから安心して○されてくるの」


 可愛らしい笑顔でリノはライアを突き放すのだった。


「いや、そんなことしないから」


 顔を真赤にして口をパクパクさせてライアを見て、限界かと助け舟を出す。

 いくら友だちといっても流石に言い過ぎに思えるし。


「違うの? でもライア、口をパクパクさせて咥えたがっているようにみえるの」

「なるほど、放置プレイか。レベルが高いな……」

「放置プレイ! そうでしたのね! ごめんなさい、私、マグス様のことを誤解しておりましたわ……!」


 あれか?

 君たちは何が何でも俺を変態にしないと気がすまないのか?

 何が彼女たちをそこまで駆り立てるのか。


「そういえばマグスはどういう子がタイプなの?」

「話が急に変わったな」

「まぁまぁそういわんとなの」


 俺にボールが投げられると同時に他の三人が押し黙る。

 え、何この空気。


「えーっと、言わなきゃ駄目か?」

「当たり前なの。仲間としてマグスも胸襟を開くべきなの」

「えぇ……」


 まぁ俺の趣味は彼女たちに比べればノーマルだからな。

 別に言っても構わないか。


 さぁさぁと催促するリノに、押される形で俺は口を開く。


「そうだな。やっぱり胸は大きいほうがいいな」

「んなっ!?」

「あらまぁ」

「ほぉ?」


 え、なんか反応するところあったか?


「続きをどうぞなの」

「え、あぁ。あとはちょっとふっくらした、可愛い系が好みかな」


 具体的にはシスティーヌみたいな感じのが見た目は好みだ。

 中身が腐ってるから彼女は対象外だけど。


「ぐはっ……」

「え? ライア?」


 ライアがうめき声を上げてテーブルに突っ伏す。

 俺、なにか変なこと言ったか?


「そっとしておいてあげるのが武士の情けなの……」

「マグス、貴様中々やるな!」

「マグス様、私の胸揉んでみます?」


 いえ、結構です。

 見た目は好みですしその提案は魅力的ですが何か伝染りそうなので。


「あら残念」


 なお、このあと喫茶店は出禁になった。

 当然である。

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