試練7
「なかなか上手くいきませんね。魔術の才は、高いといえないでしょう。しかし、量は貴方様を裏切ることは無いでしょう」
再びの挑戦。やはり、外側はうまくいくのだ。中に、とりかかると性質が乱れ、不安定なエネルギーの塊になってしまう。
数十回の失敗により、俺は何度も死と生を彷徨った。
「気晴らしに、一試合設けましょうか?」
彼女は、やや焦れているのかもしれない。
「そうしよう」
俺も、気分転換が必要である。
彼女が、俺の目の前に立った瞬間。魔術を構成した。マナの動きが彼女に集約される。
【ゲイルスラッシュ】
暴風の魔術が、俺を切り刻む。
魔術防御に適したマナの障壁が、粉砕し、俺の腕を一本持っていく。
俺はひるまず、右腕を彼女の腹にお見舞いする。
「くはっ!ご、強引ですね」
彼女は、後方に大きくノックバックした。しかし、プラーナの障壁を破ることができなかった。魔術師にしては、高い物理耐性を持っているようだ。
「まだ、終わらない!」
俺は、右手で、彼女が作った小刀を取り込んだ。
右腕の形状が、小刀のついた腕に変わった。
【ゲイルスラッシュ】
二回目の攻撃は、タイミングを見計らって、回避に成功した。
「甘いっ!」
師匠との鍛錬により、相手の動きの予想をたてる闘いを覚えた。
距離を縮める。
【ライトニングチェイン】
雷の鎖が、俺を包囲するが、その合間を縫う。
タイミングが計れれば、間合の取り方も分かる。
「ていっ!」
右腕を突き立てた。
プラーナの障壁にややダメージを与えはしたものの。
【シャドウハイド】
彼女が消えた。
そして、後方に彼女が現れ。
【アクアスフィア】を、発動させた瞬間に、俺の右腕の刺突により、彼女のプラーナの障壁が3割ほど崩壊した。
「なぜ?!」
彼女は、驚いている。
【シャドウハイド】は、緊急回避の意味もあるが、不意打ちにも有効な移動魔術だった。
しかし、俺は視覚でものをとらえていない。
不意打ちの失敗により、彼女の判断はやや鈍った。
さらに、俺の強烈な回し蹴りが、頭部にはいる。
打撃箇所により、使用するプラーナの量は増える。いわゆるクリティカルヒットである。
クリティカルヒットにより、5割ほどの壁が崩壊した。
【スターゲイザー】
彼女の周りのマナが、急速に収束した。
そして、俺に向かって一斉に、マナの塊が迫ってきた。
逃げ場のない、魔術攻撃に俺は耐えきれないと直感した。
ただ、諦めてはならない。クリティカルだけは避けなければならない。
俺は、とっさに魔石に手を当てた。
外から糸にするのではなく、中の流動体からほぐしといて、流動体が解きほぐされたら、外側を急速に分解した。
そして、強い盾のイメージを作り、魔術が直撃する瞬間に、右腕に盾を取り込んだ。
ドガドガ
凄まじい轟音とともに、砂埃が舞った。
「はぁっはぁっ!やりましたか?」
そこには、盾を地面に突き刺して、耐え忍んだ俺の姿があった。
「残念だったな」
俺は、盾の払いにより、プラーナの障壁を8割まで破壊して、最後にかかと落としと、左腕のストレートを浴びせた。
障壁は破壊され、彼女の体に向かい、ストレートが綺麗に入る。
「かはっ!」
彼女は悶絶した。体内のマナが錯乱し、俺に身を委ねるように崩れ落ちた。
柔らかい。そして、いい匂い。
俺は、幸せな気持ちになった。生きててよかった!