試練4
――
「起きたか。それではまた始めるぞ。私の攻撃を一回でもかわしたら。褒美とこの部屋から出ていいぞ」
そう言って、俺に手刃を浴びせる。胴体の半分が切り裂かれた。まさに刀である。
「ぶごふぇあぁ!」
俺は、再び地面に這いつくばった。
マナのすべてを使い俺は、死地から、また這い上がるのだ。
「うむ。さらに強くなった。どういう仕組みかわからないが、闘い甲斐がありそうだな。一ついう、お主、目がないから、当てられないと思うな」
そして、膝蹴りで、再び腹から背中にかけて炸裂させた。
この状況が、この後10回以上続いた。
「すでに眼がないお主だ。見るな、感じよ。プラーナとマナを感じるのだ」
再び、回し蹴りが飛んできた。今度は、俺も殺気のようなものを感じて、横によけた。
しかし、蹴りはかすり、その風圧だけで、プラーナの壁は崩壊し、肉が半分持っていかれた。
「うむ。良いぞ、それだ」
俺は、痛む体に鞭をうち、殺気の漂うほうを、蹴上げた。
「ほう、手が出せるではないか」
掌が、俺の脇腹に触れると、内蔵を一式ぶちまけた。
「か……は……」
俺は、再び倒れた。
それから、同じようなやり取りを、何百回と繰り返した。以前として、プラーナの壁は一撃で破られる。しかし、数度の攻防を繰り返すことができるまでになった。
「ゼノ、脇が甘いぞ!」
「はい!師匠!」
俺は、師匠との闘いの中で、『間』の大切さを学んだ。
いくら強力な攻撃でも、当たらなければ、どうということは無い。
すでに、プラーナとマナの気配を感じることはできるようになった。
プラーナは、人の形をしている。マナは、ぼやけた霧のようだが、魔術などを繰り出すと、収束する。
プラーナで人の動きをとらえ、マナの動きで攻撃のタイミングなどを計る。
師匠についても、こちらの動きが見えているので、なかなか攻撃は当たらない。
[トネリコの枝]を駆使して、投擲槍(木の槍)を、発射しつつ、隙を作るように努めてはいるが、難しい。
圧倒的にセンスが違う。
痛みや恐怖はあるが、俺は師匠との闘いの時間を、楽しいと思えるようになった。それは、師匠も同じ思いだと感じた。