試練3
「な、なんだったんだ。俺は、これからどうすればよいのだ……」
暗闇を壁づたいに進む。
「あの竜、俺に何をしたんだ……」
そして、歩くこと数時間となるころに、俺は見知らぬ扉に突き当たった。
その扉を開けると、大きな空洞であろうか、風の入る空間に入った。
「ほう、主もまた変な者に力を与えたのだな」
低めの男の声だ。聞き取りやすい声だ。
「誰だ!」
空洞に響きわたる。
「ここの部屋の主は、私だ。お前こそ誰だね」
その声とともに、腹に激痛が走り、口からは鉄くさいものが、漏れ出る。
「ぐはっ!」
血反吐を吐き散し、俺は地面に這いつくばる。
「笑止、主も血迷ったか。これならまだ、あの勇者のほうがましだぞ」
俺は、這いつくばりつつ、腕輪が光るのを感じた。急速に、体内のマナが消費されて、傷口をふさぐ。
「なっ。俺のプラーナの壁を一撃で破ったのか!」
俺自身、強いとは思っていない。しかし、相当の実力差がなければ、プラーナの壁は破れない。
「ほう、生きているか……。存外しぶとい」
そして、俺の腹を蹴り上げた。
俺のあばらは砕け、肺が盛大な音を上げて、粉砕した。
「ぶはっ!」
空気が一気に放出されて、俺は痛みさえ感じない。
「弱い」
男は、そう言い放った。
「……っ」
肺がつぶれているので、うまく声も出せない。
腕輪が光輝き、またマナを急速に消費した。しかし、マナとて無限ではない。徐々に意識が朦朧となり、ついには意識を手放した。
――
俺は、一体何時間意識を失っていたのだろう。
俺は、再び立ち上がった。
「不死かな。それとも、ああ、[生命の腕輪]か。擬態め、おめおめやられたということか。しかし、お主もなかなかにしぶとい。[生命の腕輪]を使っても、痛みへの恐怖から、動きが鈍くなるだろうに……。お主への手ごたえがどんどん増しているぞ」
そう言い放ち、俺の脇腹に回し蹴りを入れた。
胴体が、ほぼつぶれて、皮一枚で生き残った。
「ほう、やはりプラーナの壁が、一回一回厚くなってきているな」
再び、俺は意識を失った。