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ゴブリンスレイヤーに愛をこめて6

 そんな日が、一週間続いて、村の若い衆が幾度目かの巣穴討伐作戦を立てているころ。


「今日も頼む!」


 煙火は、あの後もひるまず毎日、マナが枯渇するまで俺に攻撃し続けてきた。そのかいあってか、【狐火】の使用回数が増え、発動、着弾速度が段違いに早くなった。


 威力は相変わらずであるが……。


「今日はやめろ。今日は、お前とは夜に会う」


 煙火は、少し戸惑った表情を見せた。


「なぜだ!おいらが、おいらが不甲斐ないからか?」


 俺は、黙った。正直よくここまでやったと、抱きしめて褒めてやりたい。褒めるのは簡単だ。そして、伸びる可能性がある。ただ、やみくもに褒めてもそれは、当たり前になってしまう。厳しさに対する褒美でなければ、人の奥にはしみこまない。


 ただ、つらい。懸命にやっても成果が見えずに、相手から突き放される気持も痛いほど分かる。俺は、最弱職をこれまでずっとやってきたのだから。


「そうだ。だから、お前に見せなければならない……」


 俺は、冷たくあしらい、村長宅に戻った。


 煙火のプラーナが大きく乱れていた。それは、悔しさと情けなさ。その二つの感情がせめぎ合っているからだろうか。


――


 その夜、煙火の姿は見えなかった。


 俺は、少し待ったが、諦めて村の男衆に混じり警戒にあたった。


 俺の勘では、今日、大規模な襲撃がくる。


 ゴブリンの強さは集団化とその警戒心だ。


 奴らは入念に偵察部隊を送り、その帰還率などから、俺の行動を予想している。俺もわざといつも通りの行動をするように心がけている。そう、俺は若い衆がかたまっている方向とは対角線上を、警戒することが多い。


 ちょうど警備の交代の時間である午後10時頃に、集団は引き継ぎの為、一度村の正門近くに集結する。その際、俺は対角線上で正反対の位置にいる。時間帯的にも、一人になる可能性が非常に高い。


 俺は、そろそろ交代の時間に差し掛かる際に、警戒を強めた。そして、今夜は光情報でも熱情報でもなく、電子情報を『見ていた』。


 そして、小隊3組が俺に近づいてきていることを知った。しかも、彼らは冷水を浴びたのか体温を下げて近づいてきていた。熱情報では見誤っていたかもしれない。それだけ、彼らは仲間の死をもって、学ぶ。


 ただ、学びが甘いな。


 草むらに陣取る前に、叩かなければならない。体温低下による運動機能低下は、絶好の機会である。総数50体。


「ふう。小僧。俺がやられた時の伝令役に使いたかったが……。愛想つかされちまったか」


 俺は、少し寂しさを感じた。人を導くってのはこんなに大変だったんだな。オースティンの事を思い出した。ただただ、嫌いなあいつも、少なからず同じ気持ちを味わったのだろうと考えると、感慨深かった。


「まあ、死ねなくなったと思えばいい。さあ、行くぞ!」

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