試練2
――その時
ドガシャっ!
前面の壁が崩壊し、再び古竜が出現した。
洞窟に響き渡る大きな咆哮とともに、古竜は、俺たちに迫ってきた。
「おいっ!こいつは、なんだ!強すぎないか!」
古竜の一撃により、原色魔術師のプラーナの壁は粉々に破壊され、手首が消し飛んだ。苦悶の声とともに魔術師は、気を失った。
俺以外のメンバーは、先ほどの咆哮で、身動きが取れなくなっている。
俺は、原色魔術師に対して、[ケアジェル]を使用して、最低限のプラーナの壁を作った。
「ま、まじかよ」
「って、撤退だ!」
メンバーは混乱状態になり、オースティンは脱出系のアイテム[シスの凱旋門]を使用した。
アイテム士ではない、オースティンの[シスの凱旋門]は、効果範囲が狭く全てのメンバーが、その対象範囲に入ることができていない。
俺は、原色魔術師を渾身の力を込めて、その効果範囲の中に、投げ込んだ。
そして、門は閉じた。俺を残して……。
「ああ、どうしてだろう。俺は、あいつらが好きではなかった。だけど、助けてしまった」
俺は、自分のお人よしを恨んだ。ただ、後悔することは無かった。
古竜の殺意は、俺一人に向けられた。
「さあ、かかって来な」
とびっきりかっこいいセリフは思いつかなかった。
そして、古竜の膨大なマナとプラーナにより構成された魔技混合のブレスにより、俺の肉体は崩壊した。
――っと、思ったのだが……。
崩壊していなかった。手足が損失し、強烈な光により目がただれ堕ち、顔の半分が骨の見えた状態ある。
「くくく、人の子よ。友を助けたか。己を犠牲にするその心持。称賛に価する。しかし、その偽善により、多くの苦しみを味わうがよい。味わった苦しみの数だけ、汝は育ち、その力は、あらゆるものを超える。そして、その力で、我を滅してみよ!これは、統べる者への手向けよ」
[トネリコの枝]神器:武器スキル【投槍】の使用が可能。術者の適正に合わせて進化する。
俺に神器を与え、古竜は壁の奥に引き下がっていった。
俺は、すでに息も絶え絶えとなっていた。
「こんなレアスキルをもらっても、どうせ長くはないだろう」
俺は、絶望しつつ、リュックに手をかけた。
[生命の腕輪]オートフルキュア:マナにより身体及びプラーナの壁の補強。
アルティメットコア:回復量により、能力が増加する。【隠し効果】
[黄金の右腕]アーティファクトクラフト:アイテムを魔道具化する。
Ω(オメガ)フォーム:腕の形状を使用アイテム(非消費アイテム)に変質され
て、効果を100%増加させる。【隠し効果】
[白銀の足]ハイラビット:移動速度を増加させる。
移動適正:水陸空の移動に適した形状へ変化。【隠し効果】
古竜の秘宝の中に、神器が混じっていたようだ。魔石に擬態していたそれらの能力が、一気に開放されたのだった。
アイテム士【固有ランク:マテリアルマエストロ】 Lv1
・固有スキル
【使用】:アイテムの効果のみを対象に与える。
【本質】:アイテムに隠れた効果を発現させる。固有ランク特性。
俺は体に熱を感じ、感覚のなくなった右腕が、復活するのを感じた。それに加え、はじけ飛んだ足まで生えてきた。それらは、溶液状から個体へと変わり、もとの俺の手足と同じように、体に張り付いた。
腕輪は、一瞬右腕に展開し、光の巨大な環が、収束して俺に溶け込んだ。眼球の止血が始まり、左腕、顔面が修復する。ただ、腕や瞳が生えることは無い。瞳はいまだなく、左腕も止血のみだ。