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鳳凰族との出会い2


 近くまでよると、塀は高く、3層になっていた。近隣の魔物から自分たちを守っているのだろう。門を探すために、時計回りに塀に沿って歩く。


 門らしきものが見えてきたが、俺はそれを見たとたんに警戒を強めた。


 その門に立っている門番が、人間ではなかったからだ。人に非常に酷似しているが、それは『鳳凰(ほうおう)』族であった。鳳凰族は、ベースが黒髪で側頭部より生えたきらびやかな羽根が特徴的であり、身長は人族とほぼ変わらないが、紅玉属性を得意とするものが多い。生命力も強くプラーナの壁が厚くなりやすく、減少した分の修復能力も高い。


 プライドの高い種族であり、接する分には少し神経が必要だ。


 俺は警戒しつつも、アイテムの仕入れもしたかったので、門番の前に立った。


「何者だ」


 若い門番は、屈強な体つきである。若く猛々(たけだけ)しいマナを感じた。


「旅人ですだ。しかし、おで。食料が切れまじで、お腹がペコペコですだ」


 若い門番は、相手に目を配った。


 同じくらいの若い門番が、俺に近づいてくる。


「通行証はあるか?」


 俺はそんなもの持ち歩いていない。しかし、冒険者ギルドのカードはあった。そのカードを見せる。


「通っていいぞ」


 男たちは、そのカードを見るなり、俺への視線が哀れみに変わった。アイテム士レベル1の田舎者。ろくにカードの真偽や登録内容を確認する素振りもない。


「しかし……」


 俺が通る瞬間に、門番が何か語り始めた。俺は、心臓が飛び出るかと思った。


「しかし、人族も大変だな。魔王により、だいぶ町も焼かれたらしいからな。すでに、王都しか、大きな都市は残っていないらしい」


 俺は非常に焦った。おかしい。都市は王都を含め7つあったはず。砦はその2倍。この短期間の間に、魔王はどれだけの勢力を拡大したのだろう?さては、他の魔王と協定でもかわしたのだろうか?


「ええ、おでは旅をしていまじだので、だすかりましただ」


「そうか。しかし、我々とて明日は我が身だからな。互いに頑張ろう」


 そういって、門番は握り飯をくれた。


 鳳凰族は、非常にプライドが高いが、自分より明らかに下のものに対しては、非常に面倒見のよい種族である。だから、俺も田舎者のふりをしたのだ。アイテム士というのも非常にポイントが高い。


 俺は、まず宿屋を探した。久しぶりに、身を清め、ベッドで寝てみたいのだ。


 鳳凰族の建築は、瓦を使い、木製の朱染の建物が多い。夜になると町中に灯篭の灯がともり、幻想的な雰囲気を作る。


 町の人々は、勤勉で真面目なタイプが多いが、やや排他的な者が多いので、俺のような人族は少し稀有(けう)な眼で見られる。ただ、人族に対しては友好的であり、意外にも異種結婚は、人族の割合が多い。全体的な人族の割合が少ない中での話であり、そこからも排他的な風習がうかがえる。


 衣装は、やや明るめの絹の織物であり、一枚布から作る着物である。それぞれの美意識が表現されており、同じものは無い。ただ、共通するのが、必ず羽根の一部を着物の柄としているところである。


 宿は、残念ながらベッド式ではなく、布団であったが、そこそこ感じのいいもので、一日小さな魔石10個とそこそこ安い値段であった。


 俺はボロボロの服から、中古屋で鳳凰族の服を購入した。それで50個の小さな魔石を支払った。中古屋には、刺繍用の道具や材料が大量においてあり、裕福ではない者も、おしゃれを楽しめるようになっている。


 街中は、なかなかに賑やかで活気がある。客引きはおらず、客自らが店主に話しかけるスタイルだった。そのため、軒先には収納できる一枚扉があり、開店中は常に開け広げになっているのだろう。


 俺は、道具屋を探した。


 メイン通りから少し外れたところにそれはあった。


『花鳥風月』


 店名であろう、小ぶりな店舗の入口近くの看板に書かれていた。

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