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試練

「おっさん、ハイキュアジェルっ!」


 チームリーダーのオースティンが、俺に向かって命令する。容姿端麗で、人族最高職である勇者である。勇者は、攻守に優れ、基礎能力も高い。


「キュアジェルしかありやせんぜ旦那」


 俺は、アイテム士である。


 世界には、『職業』が存在し、それはその個人の素質である。


 アイテム士は、生産系初級職であり、基礎能力も他の戦士系や魔術師系、芸術系の初級職よりも劣る。いわゆる全職業中最弱である。


「はっ?買っとけって言っただろ!」


 10歳も年下の同性に怒られるのは、底辺職の自覚があっても(こた)える。


「いや、買えませんぜ、あっしの給料じゃ」


 俺はチームでも一番低い給料で働かされている。ただでさえ、アイテム士は、多くのアイテムを仕入れなければならない事から、資金効率も悪いのである。


「まじかよ!使えねーなっ!何?俺が悪いわけ?評価は平等じゃん!あっ?おっさん全然討伐できないじゃんかよ。そんなんで、みんな納得いくと思ってんの?」


 社会は厳しい。メンバーの原色魔術師や魔拳士、ハイプリ―スト、重装戦士たちがうなずく。ほとんど荷物持ちのような俺に、討伐数だけの評価をくだすこのチームは、出世の機会もない。


「はあ、すんません。とりあえず、キュアジェル使います」


 俺は、少し離れたところから、アイテムを使用した。キュアジェルは、手元から消え、粒子となり、オースティンに一瞬降りかかった。


 プラーナによる障壁が、少し修復した。


 プラーナとは、使用者の体内で練り発現するものである。いわゆる「気」であり、使用者を保護する障壁や、消費することにより強力なスキルを発現したりできる。


 どの職種でもこのプラーナの障壁は発現される。障壁は、生命を守る大きな要である。


 その壁は、生命体を直接攻撃から守り、障壁が存在する限りは、傷一つつけることができない。しかし、攻撃者が背後や不意打ちに成功すると、クリティカルヒットになり、障壁を大きく破損させることができる。破損後は、スキルや魔術により生命を奪うことが、たやすくなる。


 戦士系の職業は、プラーナが多く、またそれを消費するスキルを覚えることが多い。


 ちなみに、マナは魔素でる。魔術師系はマナの取込みが他の職より優れている。マナは、魔術的な攻撃に対する相殺効果があり、軽減できる。また、魔術スキルの使用時に消費される。


 なお、アイテム士の優れているところは、遠距離からのアイテム使用である。【使用】する行為そのものもメリットである。


 通常、キュアジェルは、口に含み飲み込まないと効果がでない。しかし、アイテム士は、その工程を無視して「使用」できる。当然、満腹感や味覚的嫌悪感等を感じることもない。


「おらよっ!【ショックボルト】!」


 オースティンの右腕から、雷が走り巨大な古竜は、地面を這いずり回った。プラーナの障壁が破れ、麻痺状態に陥ったのだ。


 そこからは、悲惨であった。魔拳士の強烈な【降魔金剛拳】により、首がへし折れ、【重装戦士】のハンマーにより、頭蓋が砕かれた。最後は、原色魔術師の魔術により、脳漿(のうしょう)を噴き出して絶命した。


 古竜の中でも中堅クラスであり、並のチームでは倒すことができない。そこは、さすがの勇者チームといったところである。


「オースティン。こいつの魔石は特大だぜ!」


 魔拳士が言った。


「ははは!俺にかかればこんなもんよ」


 ハイプリ―ストの大きな胸を揉みながら、高笑いをしている。


「あんっ!オースティンたら」


 ハイプリ―ストはメスのそれであった。


 下品だなと俺は内心思いながら、巨乳の女が揉まれている姿に興奮していた。このチームのいいところは、巨乳がいるところだ。勇者の女だけど・・・。


「おい、ゼノのおっさん。これ持って帰るから回収して」


 重装戦士が、俺に命令してきた。こいつも俺より5つ下の人間だ。


「へえ、わかりやした」


 金の為なら、プライドだってかなぐり捨てる。それが、俺の生き方なのだ。34歳にもなって、初級職である俺には、そもそも人並みのプライドは許されない。


 俺は、大きな魔石を拾い上げ、リュックにそれを収納する。


 古竜は総じて宝を守っていることが多かったので、その背後にあるアイテム一式もリュックの中に詰め込んだ。


「帰るか」


 オースティンが脱出を指示した。

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