8.それはミリタリと関係ありません
ある時代のある国では当たり前のことも、年月が経つとナウいヤング世代には何のことかわからなくなります。たぶん戦時のバッジ類に紛れて海外のマニアに買われたのだと思いますが、金属製プレートの写真を「これは何なんだ」と海外の掲示板で問われて、「放送聴取許可章」と書いてあるのでググったら、ラジオを聞いてよいと言う日本政府の許可章でした。政府の許可と、NHKの受信契約が当時は必要で、その手続きを済ませた印として玄関などに貼るのがこのプレートでした。
兵隊さんは親せきや友人に寄せ書きしてもらった「日の丸」をよく持っていたものでしたが、むかし出入りしていた海外の掲示板で、手に入れた外国人から「何と書いてあるんだ」とよく聞かれました。たぶん「捕獲されると部隊などを知る手掛かりになるので、具体的な出身地などは書くな」という指導があったのだと思いますが、たいていの日の丸には人名以外なにも書いてありません。いちどフィリピン在住の日本人が、占領にやって来た日本軍の士官が転勤するときに贈ったらしい「日の丸」があって、規制がないものだから署名の脇に地名などいっぱい書いてあって、妙に明るいトーンでした。
じつはお土産用に寄せ書きをねつ造した「偽日の丸」もありまして、まあコレクターに「あんた引っかかったよ」というのもつらいものがあるのですが、「東條英機」とか「山本五十六」とか書いてあるので、すぐわかります。たいてい「漢字のようで漢字でない図形」を含んでいて、たぶん漢字を使う国の人は、金もうけのために日の丸を使ったりはしないんだろうなと思いました。それぞれの国のニュアンスで。
「1.ミリヲタのいろいろ」でも触れたように、メカはメカだけで存在するものではありませんし、エリート部隊や特殊任務部隊も、それと比べて普通な部隊があり、周辺の事情を知らないとなぜそうなっているのかわかりません。軍事ネタとそれ以外のネタの境界線など、気にしていてはひとつながりの真実を手にすることはできません。
ただ、これも「7.その機体番号は実在しません」ですでに触れたことですが、クリエイターとして何で勝負するかは自分で選べばよいわけです。正確であるほど面白くなると言う考え方は、クリエイターを待ち受ける罠のひとつです。
私も自由な創作ができる人生の残り時間がだんだん少なくなってきたので、人のために日本軍のことを調べて答えてあげるような立場からは身を引かせていただいて、欧州戦線の回顧録や制度の本を集中して読み漁っています。じゃあ日本軍のことを調べたのは無駄だったのかというと、それもなるべく無駄にしないようにしたいとは思っています。時間に直して払い戻してもらえるものでもないので。
後続予定
9.財力のある人には勝てませんか
10.ミリタリを学ぶと平和が理解できますか(最終話)