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2.ミリタリ要素の使い道



 架空戦記ブームは1990年代に最高潮を迎えました。個人向けインターネットサービスの草分けだったベッコアメのサービス開始が1994年でしたから、まだまだネットでググるとなんでも出てくる時代ではありません。今でも「東京駅で買って、新大阪までに読み切る」というイメージでライトな出版物を表現する人がいますが、当時はこれを「物理で」やるしかありませんでした。キオスクにはそうした需要を満たす文庫本やノベルスが並んでいました。


 架空戦記にはこうした場所に並ぶものと、あまり見かけないものがありました。こうした場所に並ぶものは、今になって思うのですが、「痛快に悪を斬る」たぐいの時代小説と同じ需要に対応していたと思うのです。1950年代に盛んに作られた時代劇映画「旗本退屈男」シリーズでは、1955年「旗本退屈男・謎の決闘状」と1957年「旗本退屈男・謎の蛇姫屋敷」で柳沢吉保を2回斬ってしまったのですが、まあだいたい1990年代の架空戦記ではアメリカが斬られますので、ネタ被りはもっとひどかったかもしれません。表紙が戦艦大和になるような出版企画が好まれたと聞きますから、斬る側も固定ですね。


 その場合、書いている側の意識がどうであれ、ミリタリ要素は「必殺技の名前」くらいな位置づけで読まれていたのではないかと思います。


 もっと緻密なメカ・戦術設定で、国力などの扱いが現実的な架空戦記もブームの中では出版の機会がありました。現在でも、当時固定ファンをつかんだ作家の皆さんは出版を続けておいでです。しかし大規模な市場をつかむ王道パターンはそんなに幅がなく、何十年周期かでぐるぐるしているようなところがあり、それに乗っかろうとすると、ミリ要素は要素止まりなんだろうなと思います。むしろ、要素にとどめなければいけないと。


 例えばドイツ軍は、機関銃の弾帯に弾を差し込むのを、ハンドルを回して手早くやれる器具を持っていました。劇場版ストライクウィッチーズにはそれが登場します。あってもなくてもストーリーに影響はしませんが、まあフレーバーというところです。ストライクウィッチーズでは「MG42S」というミリタリ警察が出動した有名案件がありました。MG42機関銃はその前のMG34と弾薬が共通ですが、機関銃の両側に円筒形の弾倉をつけて両側から交互に弾を送るドッペル・トロンメルはMG34専用で、構造的にMG42にはつけられませんでした。ところが(たぶん絵的にイケてるので)MG42にドッペル・トロンメルをつけたビジュアルになってしまい、魔法がある世界だからねということになってしまったわけです。まあ某おっぱいミサイル並みに撃ち続けるなら、リアルも何もありませんが。ちなみに引き金を引き続けると、ドッペル・トロンメルの75発を撃ち尽くすのにMG42だと4秒足らずです。あれはダダッ、ダダッと点射を繰り返して保たせるものなのです。


 そうまでして実在兵器を使う利点は何でしょう。オリジナル世界を考えたことのある皆さんなら、ピンとくると思います。「矛盾のないひとつながりの設定」を考えるのは、いろんな知識が必要になって、しんどいのです。


 例えば小さな車体に高馬力のエンジンを積むと、車内の排熱が追い付かずに使い物にならなくなることがあります。どれくらいなら大丈夫なのか、お仕事が建築重機の設計だったりする人なら見当がつくかもしれませんが、まあ普通はわかりません。砲身の長い大砲を積んだら重心が前に寄りすぎ、前の転輪だけすぐ摩耗するようになったので、ちょっとうるさいけどゴム部分を金属製にした……などという戦車(砲塔のない駆逐戦車ですが)は実際にあります。実際に起きやすかったトラブルがわかると、ああそのへんが限界かというのも見当がつくわけです。


 また、メカのスペックは補給、修理など支援部隊にも影響します。戦車の砲塔を釣り上げるには強力なクレーンが必要ですが、クレーン自身が重い車両か地面に固定されていないと、クレーンのほうが引っくり返ってしまいます。かといって高価な器材をあちこちに配属するわけにもいきません。実際にどのレベルにどんなクレーンが何基あったかわかるなら、それを使うと楽なのです。


 しかし、調べて書くと言うのは、うまく行きはじめるとそれ自体が楽しいのです。分かったことを全部書きたくなるのです。それが高じて、つい警察活動を始めてしまうこともありますから注意したほうが良いですし、「調べて書いていること」をそのままプラスに評価してくれる読者ばかりではないので、バランス感覚が必要です。


 昔から王道エンターテイメントは「笑える」「泣ける」「ちょっといい気分になる」といったシンプルなご利益が骨組みとなって、それにいろんなものが盛りつけられてきたのだと思います。テレビがないころの映画では、本筋と関係なく歌いだす歌手の出演者が普通にいましたし、いろいろな演芸がちりばめられていました。本筋は本筋として萌えキャラも愛でたいと言う人が多いなら萌えキャラも出るでしょうし、昔のアニメに比べれば精細な絵を家庭に送り込めるのですから、「リメイクされたら美形キャラだらけ」ということもあるでしょう。


 それぞれの要素はできるだけ磨くに越したことはないと思いますが、多くの人に受けるかどうかはシンプルな骨組みのほうで主に決まるのだと思います。


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