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黄金の仮面ライダーはメガネを外さない

作者: 半端中途

私、比呂 印子!都内の学校に通う、ごく普通の女子高生!今日も一日普通に終わった……

「ゲェッヘッヘ、なかなかの上玉じゃねえか!」

と思ったけど、どうやら普通にすみそうじゃないです。

「ぎゃああああ!!!気持ち悪い!!誰!!というか何!?生き物!?」

私の目の前に現れた「それ」はまるでザリガニがそのまま人間の上半身にくっついたような見た目をしていた。

頭の先についてる触覚みたいなのがキモチワルイ!

「ちょっ、酷い言いようだな!まあいい!お前は連れて行く!」

ザリガニ人間は腕についてるハサミを器用に使い私を引っ張る、見た目以上に強い力で私はひょいと担がれた。

ザリガニのゴツゴツとした甲殻がお腹を圧迫する。

「ちょっと!痛いじゃない!離しなさい!」

私は精一杯暴れたものの、ザリガニ人間はビクともしない。

「おい暴れるな、二度と口きけなくするぞ」

ザリガニ人間の声は重く、冷たかった。

聞いただけで体が萎縮して動かなくなった。

もう私は死ぬんだ……まだ齢17歳のピチピチJKなのに……

「まてぇーい!!」

突如響く声、ザリガニ人間が振り向くと同時に私もその姿を目にした。

屋根に立つ黄金の仮面を被った誰か、夕陽を反射して仮面がキラリと光った。

「とぉーう!!」

謎の黄金仮面は華麗に一回転しながら屋根から飛び降り、着地する。

「その娘を離せ怪人!」

よく見ると、メガネをかけていた。

「「メガネかけてるーー!!」」

仮面の上にメガネ、その姿は滑稽そのものだった。

「ブフー!!仮面の上にメガネって!!バカみたい!!」

「絶対バカだぜこいつ!!プププ……」

「お、おい!怪人ならまだしも貴様!助けてもらう身だろ!!」

黄金仮面は地団駄をふんで私に怒る。

「プフゥ……ご、ごめん、コホン、改めて……助けてー!」

私の声を聞くと黄金仮面はフフ……と笑った。

「誰かが呼んでる声がする……助けを求める声がする!誰が為、世の為、人の為!輝く仮面は黄金の輝き!黄金仮面ただいま参上!!」

「いや、そのままかい!!」

ダサいし!!よく聞くと意味わかんないし!!

「アーッハッハッハ!!腹よじれる!腹よじれる!!」

「ぐぬぬぬ……貴様!許さんぞ!」

黄金仮面はそう言うと高く飛び上がった。

「黄金キィーーック!!」

そしてそのままザリガニ人間目掛けて跳び蹴りを放つ。

が、ザリガニ人間は一向に避ける気配がない。

「いいぜ、受けてやるよそのヘナチョコキック!」

「後悔するなよ……」

次の瞬間、私は黄金仮面に抱えられていた。

しかしザリガニ人間が見当たらない。

「うぁ゛……なん……だ、よ……これ……」

なにが起こったか理解できぬまま声のする方を振り返るとそこに奴がいた。

ザリガニ人間の腹からは向こう側の景色までハッキリ見える。

あの硬い甲殻をブチ抜いたのだ。

黄金仮面は私をゆっくりと下ろすとザリガニ人間に背を向けたまま口を開いた。

「黄金キック……相手は死ぬ」

その言葉とともにザリガニ人間は断末魔をあげながら爆発四散した。

「……さて、謝ってもらいましょうか、さっき笑ったことを!!」

「えっ!?この流れでそれ言う!?今ちょっとカッコいいと思ったのに!」

「カッコいい!?フフフ……いい響きですね、今回は見逃してあげましょう」

うわ、露骨に嬉しそう。

「てかさっきと話し方違うくない?さっきまで敬語じゃ無かったよね?」

「戦闘中はああいう感じになってしまうんです、気に障ったのなら申し訳ない」

「い、いやいや別にいいんだけど気になっちゃって」

本当に別人みたい、根はすごくいい人なんだ。

「というか貴女もタメ口じゃないですか、普通こういう時は『ありがとうございます!』とか敬語で話すのが普通じゃないんですか?」

「えーっと、なんか年上に思えないっていうかなんというか……別にタメ口でもいいかな〜っと」

「フン、別に僕はそれでもいいですけどね」

そう言いながら黄金仮面はメガネを指で元の位置に戻す。

「そう言えばなんでメガネしてるの?」

「うっ、そ、それは……そう!これは僕のポリシーなんです!このメガネは僕の信念そのものなんです!」

「ふ〜ん……」

怪しい、怪しすぎる。

「えいっ!」

私はスキをついて黄金仮面のメガネを奪い取った。

「ほほう、メガネの縁にも金色が付いちゃってますなぁ〜、これは使い込んでますねぇ」

「あ〜!!な、何をするんです!それが無いと僕は何も……ハッ!」

「ふふ〜ん、何も……なに?」

私はわざとらしく黄金仮面の前でメガネをチラつかせる。

「く、くそっ!返してください!」

黄金仮面の手は空を切る、全然距離が足りて無い。

「見えないんだ〜!!黄金仮面の弱点見つけたり〜!」

「くっ、こんな屈辱……」

「嘘嘘、ゴメンね?ちゃんと返すから」

そう言って私は黄金仮面にメガネをかけてあげた。

「……いんです」

「え?」

「怖いんです!コンタクトをするのが!」

はい?そんな理由で?

「プッ!!アハハハハ!!やっぱり面白い黄金仮面!!」

「だから言いたくなかったんですよ!!!」

「ヒーッ、ヒーッ……んんっ、ごめんごめん、もう笑わないから許して?」

「もういいです……」

「そんなこと言わないで、私のヒーローさん、またピンチの時は守ってね?」

「……!ま、まあそこまで言うならまた守ってあげますよ!」

黄金仮面はそう言うと指を鳴らす。

するとどこからともなくバイクが現れた。

黄金仮面はそれにまたがる。

「それでは僕は帰りますので……」

「待って!」

私は無理やりバイクの後ろに飛び乗った。

「ちょ、ちょっと!なにしてるんですか!」

「そこまでだから送ってよ!」

私はニヒヒといたずらっぽく笑う。

「っ……!し、仕方ありませんね、ヘルメットはかぶってくださいよ」

そう言うと黄金仮面は予備のヘルメットを取り出した。

「ニシシ……!よろしくねっ!」

私はヘルメットを被ると黄金仮面の腰につかまる。

「しっかりつかまっててくださいよ!」

「うん!」

バイクは風を切る、通り過ぎてく風が心地よかった。

そんな『普通』の放課後。

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