きっと来る
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馬車の旅は歩かないから気楽なもん…のはずだけど、強制イベントにより警戒中。
来るとわかってて、いつ来るかわからないのは神経すり減るよね。
かなり人もまばらになり、すれ違うことも減り…
休憩しましょう、ということで、一旦少し開けたエリアにて降ろされる我々。
【今からか〜】
3人で無言でストレッチです。
しっかり、しっかりね、体を動かす準備ですよ。
ラジオ体操の動きは大人になると本当によくできてると実感する。
そして武器点検という形で手に持ってる状態にしておけば、何かあっても即対応可能。
どうでもいい会話をしながら、神経は同乗してた2人に集中。お、近寄ってきた!奥さんぽい人が
「あ、あの、どうして武器を……?」
「あぁ!こまめにチェックするようにしてるんですよ〜!いつ何があるかなんてわからないじゃないですか!雑に扱ったりとかは勿論してないんですけどね〜。やっぱり自分の身を守るためですからね〜。」
「ここら辺、そんな物騒な話聞きませんが……」
「そんな油断してたら、後ろからグサー!なんて、やられちゃったりするかもですからね!」
流石に武器を持つと反応して声掛けてきたな〜。
にこやかに返すけど!うんうん、と頷いて肯定するツインズ。
わたしだったらこれで諦めたりするけどな〜どうかな〜……諦めないのねー!?
強制イベントだもんね、諦めないか。
「ひぃっ何をするんだ!」
ああ〜、馬車の御者さんが…旦那さんぽい人に捕まっちゃったー。
女性のスカートをめくったら出てきたのがナイフ。
正確には長さで名前が違うんだったっけ?
あのー、あれ…何だったっけなー…この形は知ってるんだ…えーと…
「ククリナイフだ!その形!」
『正解だけど今はもうちょい緊張感持とうか』
は?ていう顔をした同乗してた2人と冷静なツッコミをしてくるツインズに、ごめんごめんと謝りながらとりあえず土魔法の準備。
こっそり2人の背後の土を泥にして…
うーん、檻に入れようかなって思ったけど、御者さんも一緒になっちゃうからなぁ…。
周りに人もいないし…
井戸っぽい形にして、くーるー、きっとくるー
うわ、泥だからびちゃ、ぴちゃって音がさらにリアル感を増加させてくるな…
夜だったら私すぐ逃げるわ…ホラー怖い
無言で2人をみて戦闘態勢だったツインズも、井戸がそーっと完成したのを見て、顔を顰めてたよ。
ぬっと細めの腕、というても土色ですけども、それが出てきた。
ずるり…びちゃ…
あー…自分でやっといてなんだけど、めちゃくちゃ怖いな…
あの映画はね、衝撃だったからね…
そう考えたら井戸から出てきて、さらにブラウン管テレビから出てくるんだったな。
まぁいっか。
「お前ら、持ってる金目のもの全部置いてけぇ!!」
「その武器も…っだ…?なんだ?」
びちゃ…べちゃ…
ゆらりと、立ち上がった土色のワンピースのロングヘアー
こっわ…
映画の印象凄かったから細部までばっり再現できすぎぃ!!
私の記憶力ここに発揮されてんのかい!!
こちらの視線を外すと攻撃が来る可能性を考えてるようだけど、まぁ背後から何かが歩いてくる音がしたら気になるよね。
モンスターかもしれないしね。
でも殺意はないからなにか考えてんのかな…
「…なんだ?うわっなんだ!?!?!?」
気がついた時には既に井戸から出て手の届く距離。
うひょー!こわ!
ワックワクしてる私の心理が反映されたのか、ニタァって笑ってる!怖い!!!
むしろよく声出せたな!私なら声出ないと思う。
御者さんを人質にとってない方をターゲットにしたのか、捕まえて泥に引きずり込もうとしてる…
行先は地獄かなんかか…?
あ、御者さんが気絶しちゃった!!!
やりすぎたか〜!そりゃパッと見た感じワンピースの女が泥の中に無言で引きずり込んでいってるんだから。
でも気絶して重たくなった御者さんから手を離して逃げようとしてるので、それは檻でサクッと確保ですよ〜!
「やめろ!だせ!あれがくるだろうが!!」
「いやいや、出せと言われて出す人いないでしょうが」
泥に引きずり込まれ気絶?した方を、次はマッチョなゴーレムを作って運んで檻に追加で放り込む。
ツインズは気絶した御者さんの介抱。
檻は車輪つけておく。念の為ね〜。
運ばなきゃだめっぽいし。
街に着いたら門でそのままプレゼントフォーユーですよ。
「あ、大丈夫ですか?気分は?」
お、起きたかな?一応ポーション飲ませてるけど、大丈夫そうかな?
ちょっと様子見してる間に、馬を観察。
馬のゴーレム作って引っ張ってもらったらいいんじゃない?と思いついたのでね。
よーしよしよし!と近寄って観察。
うーん、ここまでしっかり、動物の筋肉と関節を観察したの初めてかも!
勉強になるね!