反省会
とりあえずその場から撤退してお金をギルドにまるっと預けてログアウト。
「……体が痛い」
ゲームの中ではあんなにせっせと商品を売るのに動いていたというのに。
肩をぐるぐるしながらリビング。
夕暮れだし。感覚がバグるのよ、本当に。
コーヒーのも。
さて、ツインズも降りてきたので、テーブルをのかしてもらい、3人でストレッチしながら反省会?
「反省会しまーす」
『はーい』
「っても、トラブルなく売れたよね」
「そうだなぁ…まぁあの程度なら可愛いもんだろ」
「いざとなればGMコール叫べばいいと思えば気楽だしな」
たぶんプレイヤーもそれがわかっていて過剰に来ないんだろうねーっていう。
そして掲示板確認。
なにやら祭りだそうで。
「おー、盛り上がってんなー」
「うーん……流石に2回目は対策がいるか?」
「へー?」
よくわからないけど、対策がいるのか。
わかってません感全開すぎて説明してくれたよ、優しい。
1回目はゲリラのようなもので、誰もが予測してないから混雑になることも少なく、トラブルも少なく。
ただ2回目があると分かってるなら、待つ人は出てくるし、友人購入したいと擦り寄る人も出てくるだろうっていう。
なんだその宝くじ当たったら知らん親戚増えるみたいな。
そんなのは片っ端からGMコールでいいけどね、と言われたのでいつでも叫べるようにしておこう。
ただ、だいたいの人は良識あってそんな事はしないが、世の中とんでも思考回路の持ち主はいるもので、なんでそうなるの??ていうことは往々にあることだからね、と。
言葉に重みがあるわ〜。
対策どうする?販売しないと稼げないし…と。
そこら辺は掲示板の力を借りることにするらしい。
どうやって?
「書き込むんだよ、匿名を外してね」
「へえ?」
「名前を明かして、販売する。だけどトラブルが続くなら販売はしないってね」
掲示板は見ている人が多いらしく、影響は強い。
わざわざ名前を明かして書いてあるってことは、実際トラブルが起きたら販売はしなくなるだろうと予測はされる。
というか、宣言されてるから販売がなくなると見越す。
そうすると、食べたいのに食べられない、買いたいのに買えないという事態が発生する。
それを阻止するために、トラブルになる前に見ているプレイヤー同士で解決しようと言う動きが出る、はず。
「ま、どうだかわからないけどね」
「少なくとも、トラブル起こそうとした人がいたら、それを阻止しようとするプレイヤーは出てくると思うよ」
「実際の店舗でもそうだからね」
抜けがけダメ絶対、という動きができるんだってさ。
それでも抜けがけしようとする奴はでてくるから、ケースによってはGMコール一択で!ということに。
掲示板をみたら、なんかツインズが対応するとか言ってるし、運営さんが出てきたみたいで、こんなこと言ってるよと教えてくれた。
あの魔法のローブの話かな?
あ、ギルドで販売するけど許してね?わたしが許しを出さなきゃいけないのがよくわからないけど、どうぞー。
あ、わたしも販売していいんだ?じゃあギルドに見に行ってどんなもんがどんな値段なのか確認しよう。
「ログインしたらギルド?」
「そう、有限異空間収納の確認かな」
「それから買い出し」
なら再度ログインしてガンガン行こうぜ!ってことで、商品を作りましょう。
ログインして、ギルドでお金を下ろして、噂の有限異空間収納をかくにん。
なんとカバン!!
サコッシュみたいな形。
へえー。
お値段は……!?
「ブランドバッグなの?」
「これでこの値段」
「それはどんな値段」
3人で着ているローブを見つめ、しばし沈黙。
わたしはお手製なので作り手の魔力量で空間が変わるとか言われたような気がするけど、このサコッシュは一定らしい。
このサコッシュで、容量は縦横高さが60cmと。
てことは?容量にしたら200リットルちょい?
うーん……素材はかさばるけど、結構入ると考えていいのかな。
基準が分からない。
そしてわたしも販売していいと言ってたけど、同じのが作れるのかな?よくわかんないな。
あとで師匠のとこ行ってみるかー。
とりあえずお店巡りをして購入に次ぐ購入。
買い占めたらダメな気がしてポータル使って隣町まで行ってきたよ。
ちなみにツインズとは別行動。
分担しないと終わらないし要領よくするためにはね!
買ったものはどんどんローブに入れてると、不思議そうな顔をするプレイヤーに出会ったりもするけどね。
てことは、掲示板のこと知らないってことかな?よくわかんないな。
ちなみに、早速、抜けがけしようとしただろう人がいたけど、どこからか現れたプレイヤー達によって連れ去られていきました。
もうめっちゃ素早かったよ!
「ねぇねぇ」
って声に反応して振り返って、え?て思ったら、にゅっと腕が出てきて口をおさえて、なんでもないでーす★って3人ぐらいが担いで去っていったの。
ありゃ犯罪集団の手口かな?て思ったね。
手際良すぎてびっくりした。
アサシンとかかな。
そもそもアサシンとかなれるのかな…。
改めて周りの人達を観察してみたら不思議な世界だな〜。
……わたしもか!
この世界にいられるってすごいな〜。
「わぁ、久しぶりだね!」
「ほ?」
にゅっと目の前に現れた人。
……だれだ。
…………え、いやだれ?
垂れ耳タイプの動物…これは犬だな?顔がやや犬っぽく…なんていうか、鼻がね。
あの昔のアニメで、犬の探偵のやつ、あんな感じ。
服もトレンチコートぽいから尚更。
煙管か虫眼鏡かモノクルがあれば完璧。
そしてわたしにそんな知り合いはおりませんが…
「あ、そうか今ごめんわかんないよね、新です」
あらた…
あらた!?
「わあ!?しゃっぐ」
「すみません、叫ぶのはお辞めいただけると大変ありがたいです」
あ、この声は秘書さんだな!?
社長って、叫びかけて瞬間的に口塞がれてびっくりした。
すばやーい、そして秘書さんも犬。
あのアニメのコンビのようだね?有名な名探偵とその相棒ね。
とりあえず叫びませんという意思表示を必死にして釈放してもらう。
「すみません、お久しぶりですね…っていうか、こちらでは初めましてですね」
「あ!そうか、はじめましてだねー」
「あのCMのお姿では無いから分からなかったです」
あれはベータ版で使用していて、それこそ稼働確認などなどしていたらしく、CMにも出てきちゃったのであれを使うと色々目立つのだとか。
ベータ版…たぶんテスト版ってことでいいのかな?話の流れ的に。
なのでこっちの犬の姿でウロウロ視察しているらしい。
やってることがお忍びで城下町に来た殿様なんだよなぁ。
そしてなんでこの犬のコンビにしたかって、やっぱり名探偵アニメの影響なのと、ウロウロ何回も行き来していても探偵ごっこと思ってもらえるからと笑っていた。
その時は虫眼鏡か煙管持つらしい。
もう完璧やん。
「今日は何してるの?」
「あぁ、弟達と販売する商品を作って」
「うそ!ほんと!?え!どこにいるの弟くんたち!!」
あ、そうだ。
ディオスクリのファンの人だった。




