購入できるんですか
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とりあえず第2の町に戻って、ポータルから第1の町に。
そしてまずは薬爺のところに。
トウガラシそのままにしてるからね。
お土産にハチミツを分けましょう。師匠にもね。
「こんにちはー」
「あぁちょうど良かった、変わったヤツができとるわい」
ほれほれと手招きされて向かうはトウガラシのプランターのある場所。
そこにいたのは、間違いなくトウガラシ。
トウガラシなんだけど、くるりと向きを変えたら顔。
ハバネロだな…?
あのお菓子のパッケージそのものの顔つきなんだけど?
物々しいっつか、禍々しいっつか…。
「からそー……」
『そこ?』
――ハバネロ 輪切りにして齧るとスナック菓子のようなサクサク感――
…運営の中の人にスナック菓子好きな人がいるのかな?
わたしあれからすぎて食べられないんだよね。
痛い。もうとても痛い。
何はともあれ、ちょっと違うことをすれば変化が起きて品種改良的なことができるとみた。
試し方は無限大かもしれない。
「めっちゃからいトウガラシですけど、薬爺食べます?このまま輪切りにしたらサクサクしてて好きな人は好きな味と思いますが…」
「ほお、珍しいもんだからひとつ貰おうか。からいのは昔はよく食べたからの」
へぇ、意外。
あんまりからいものとか刺激物食べないかと思ったけど、いまの薬爺のイメージがあるからか。
その人の歴史があるんだから、若い頃は刺激を求めて食べたりもしてたのかもね。
しかしこのハバネロ、採取する時に叫んだりしないだろうか。
なんかマンドラゴラのイメージが…。
「……あ、大丈夫だった」
ドキドキしながら採取したよ。
叫んだり弾けたらとんでもないからね、うん。
そのまましゃがみこんで作業してたら、ローブのフードをペロンと捲られた。
「え?」
「いいことしてるな、背守りか」
「あ、エヌさん」
気配なく現れる人だなって思ったけど、まぁ魔法騎士団の元団長なんだから、そりゃあそうだわね。
そして背守り知ってるんだ、博識な人だなって思ったけど、これも何年生きてるのかわからないから知識は確実にあるよね、うんうん。
「コウモリか?福を呼び込むか」
「そうなんですよ、縁起物にしてみました」
「よく出来てる、効果も出ているな」
なんと。
自分じゃ分からないけど効果がでていると!
それはいいことを聞いた!
「作業している時に魔力を流せていたんだろう」
「…魔力を流した覚えはないのですが?」
「僅かだがあの糸は魔力を吸うからな。だから流せていた、というより吸われていた、が正しいな」
そうなんですか知らなかったですが???
魔力を吸うことで糸が強くなるんだとか。そんなこと全く知りませんでしたし強くなるって言っても、糸切りばさみで普通に切れたけど?と思ったら、完成したらその刺繍はちょっとやそっとじゃ破れたり切れたりはしないらしい。
へぇ!すごい!
機織りの時も実は微量だけど魔力は吸われていたけど、自分が意識して魔力を流し込むことが重要なのだとか。
そしてわたしのした背守りは効果はすごく強い!という訳では無いらしいが、ちょっといい事ある、程度のものらしい。
ラッキー!くらいだけど、ないよりいいよね。
もっとしっかり魔力を意識して流しながら刺繍したら効果は上がるのか…?
背守りにコウモリしたけど、何個か刺繍しても効果は発動するのか?
「……試したいことがたくさんだぁ」
『俺らも』
「ふ、姉弟そろって好奇心旺盛でなによりだな。この禍々しいトウガラシもいろはが試した結果だろう?」
指さされた先は顔つきハバネロ。
めっちゃ目が合うんだよなぁこのハバネロ…。
「程々になんでもやってみたらいいさ、挑戦するのは悪いことでは無いからな」
師匠にそう言われたので、焦らずとりあえず順番に。
とりあえず生産部屋借りようかと話していると、師匠から思わぬ一声。
「そういえば、家を買わないのか?」
ぱーどぅん?
おうち、かえるの???
「え?家?ホーム?」
『買えるんですか?』
「普通に不動産屋があるだろ、そこで買えるぞ」
「えー!……いやお金が」
「ローン組めるぞ」
なんだって?
いやまぁ普通に考えて金利がーってなる、か……?
それなら先に貯めてドーンと使う形がいいか?
「師匠!有力な情報ありがとうございます!3人で考えます!」
「あぁ、そうしろ。ちなみに、俺の店の横は空いているし、庭付きだ。所有者は俺だが、買いたいなら売ってやる」
『え!?』
なんだって!?
いやこれは決めた方がいいやつでは…。
3人でもしょもしょと話していると、所有者は俺だし、買いたくなったらいつでも言えばいい。とのこと。
不動産屋に行ってもその物件は出てこないらしい。
じゃあまた来ますね!と3人で生産部屋に。
家、欲しいよねぇ。




