魔法騎士団の訓練所2
55
流石に近い隣町。
あんまり食べるものも劇的な変化は見られないね。
試しに買った串焼きは少しピリッとしてたので、なんだろう?と見てみたら、香辛料が使われてる様子。
近くの八百屋らしきところで確認したら、発見。
「あ、これかな」
――トウガラシ かじるとからい――
どの程度のからさなのか…。
トウガラシって、総称だから、鷹の爪とかハバネロとかもトウガラシになるんだよね。
これがキャロライナリーパーとかのからさだったら火を吹くぜ。
いやハバネロでもわたしだめだけどね。
お腹痛くなる。
串焼きの感じだと鷹の爪くらいかなぁと思うんだけど…。
「鷹の爪っぽい?」
『そんな感じ』
「ハバネロみたいなのあるのかな?」
「ファンタジーでいうなら、これを品種改良したらハバネロができるとかじゃないか?」
とりあえず調味料的に使うのは良さそうだから少し買ってみよう。
種も中にあるし、育ててみたら面白そうなんだけどなー。
ただ育てる場所がないだけで。
一旦ギルドでサインした紙を渡して報酬を貰う。
そのまま3等分してギルドに預けて、魔法訓練所に向かうことに。
「やっぱり見た目普通すぎない?」
再び通り過ぎそうになりながらも到着。
てっきり山の中とか人気のないところにあるのかなって思ってたら、まさか街のど真ん中。
しかもただの家。
ここで…?ておもったけど、魔法訓練所だからね、きっと中は空間が歪んでてめっちゃ広かったりするんだろう。
「ごめんくださーい」
「あーい、どちらさーん?」
またギョロっと来るかと構えていたのに、次は扉に口と耳だけが現れた。
そっちかー。
耳があるから聞こえるってことね、はい。
「えーと、ラークさんとルビさんに紹介してもらっ」
「はいはいはい、エヌ団長のお弟子ちゃんな!開けたるから入りやー」
扉の枠部分から手がニュっと生えて開けてくれた。
なんだろう、この扉からは好きに手足を生やせるのか……?
便利なんだかなんなんだか?
いやでもこの状態で攻撃されたらダメじゃない?
そんな攻撃屁でもないぜってぐらい強ければ問題ないのかもしれないけども。
そしてやっぱり外から見た感覚よりも断然広いのか?と思いきや、そうでもない。
おやぁ?
「ははは、ようこそー。ここの地下が訓練所!めーっちゃひろーいで。俺オオサ!よろしくー。君がいろはちゃんで、後ろが弟くん達やねー、ライくんとレイくんやな!」
なんか関西人みたいなノリのオオサさん。
背中に翼がはえてるね?
あのエナジードリンク飲んだの?て言いたくなるやつね。
翼さずかったかぁ……。
真っ白、ではない感じ。
なんかシルバーっぽいような、光の加減で不思議な色合いを持ってる。
「俺は有翼人やからねー、珍しいっちゃ珍しいかもしらんね!」
「あぁー……そういえば初めてみるかもですね。すみません、不躾に見すぎましたね」
「構わんよ!でもなー、仰向けで寝られんし、服は選ぶし、空高いとこはさっむいし、大変なんやでー?」
「はぁ…でも、その羽根で飛んでるのはきっとみんなが憧れるほど綺麗でしょうね」
「……君らのおねーちゃん人たらしかぁ」
『そっすね』
お?なんだ?褒められたか?
まぁついといで〜と言われたので、ついてこいということだなと後ろをついて行く。
ひとつ扉を開けたら、地下に続く階段があって、下ったかと思ったら少し登るという不思議なつくり。
あれだね、魔法学校さながらのね、不思議な感じ。
だまし絵の中に紛れ込んだ気分。
はじめこそ壁があったのに、いまは宇宙空間かな?ていう見た目。けど触れられるからこれは壁紙らしい。
明かりは蛍の光のようなものがチカチカしながら照らしてる。
うーん、幻想的。
あ、しまった。ログインした時にカメラ起動忘れてた。
やっぱりそういうのは向いてなさそう。
とりあえず今からでもカメラつけておこう。
何が撮れるかなんてわからないしね。
「はい、ここのお部屋の中やでー。この部屋の中入ったら、床にライン引いてあるから、そこから中には入らんようにね。訓練してる魔法が当たるかもしらんからね」
そう言って開けてもらった先は、特撮映画の撮影所かな?それともCGの中に入り込んじゃいました?な感じでした。
「わー……っわ!?」
近くでドゴォォォンって爆炎が上がって驚いたけど、熱さは感じない。
煙もこっちに来ないし、炎も不思議と切り取られてる。
「結界ひいてんねん、せやないとこんなとこ一瞬で壊れてまうからね」
確かに。
中には2人、対戦形式で訓練中とのこと。
ラインの外にも人がいて、どうやら医療班と記録係をしているらしい。
これはいい!とじぃーっと戦い方を観察。
実戦形式でモンスター狩りに行くこともあるんやで?とも教えてくれた。
ついでにギルドで素材提供と情報提供もするらしい。
やれどこにモンスター増えた、減ったという情報はとても大切で、何かが起こる前触れやからなぁ……と。
確かに。
ホウレンソウ大事。
戦うことに慣れていないから、こういうの勉強になるわー。
ツインズも真剣そのもの。
というのも今戦っている2人は魔法と近接で戦ってて、時に殴り合いをしてるから。
魔法使いが肉弾戦とは予想外が過ぎる。
「こいつらは元々魔法素質ないと思い込んでた組やから、戦い方もちょーっと違うねん」
なんと。
さっきから手を替え品を替え武器を替え。
なんて素敵なドキュメンタリー。ドキュメンタリー……いや違うか、表現が。
けどこんな近くで戦う姿を安全に見れる環境なんてない。
不思議。壁もガラスもないのに、そこにいるのに、炎も氷もあるのに、暑さ寒さは感じない。
音だけ。それもくぐもった音。
目の前で魔法が弾ける感じ、キラキラしてる。
刀どうしがぶつかって火花が散ってるのが見えるほどの近さなのに。
――はーい、そこまでよ!――
響き渡るセクシーな女の人の声に攻撃が止む。
どこにいるのセクシーな声の人、と思ったら、なんともまぁ筋肉美そのもののバニーちゃん。
あの脚で蹴られたら折れるな。うん。
「はいおつかれさーん」
「オオサ、その子達は?」
「エヌ団長のお弟子ちゃんと弟くんたちやで〜」
「あぁ、見学に来るって言ってた子達だね」
戦闘訓練をしていたマッチョな2人に話しかけられ、本当はもっと見てたいし話をしたいところだけども、そろそろタイムリミット。
これ以上は明日に響いてしまう……。
渋々時間がと告げると、いつでも待ってるで〜と。
その時気になること聞いてくれたらええよ、と言われたのでそれに甘えることにしよう。
なのでまた来ることを告げてログアウト。
名残惜しい。