近くて遠い隣町
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とりあえず檻にタイヤをつけてみた。
で、連結部分も作ってですね、イメージは電車です。
『つながったよ』
「はーい、これで動けるかな〜」
「あー……重たそう」
でっすよね〜。
賊含め6人が檻の中です。
で、どうやって運ぶ?てなったときに、うーん……。
ちなみに初めの賊の顔も確認したら糸目。
というか、そっくり過ぎたので双子とかかな。
「どーしようかねぇ」
『置いてく?』
その声が聞こえただろう檻から叫び声。
これが阿鼻叫喚ってやつ?
あ、でも別に責め苦ないから違うか。
ただ普通にゴブリンいたからこのままって訳にもいかないし、どうしたものかなぁと考えていたら、とてつもなくでかい鳥が向かってきてる。
「ちょ、レイライ!あれ魔物!?」
『いやわかんね!!』
そりゃあもう翼広げた感じ確実に自分より大きいワシ?タカ?猛禽類が飛んできたらとりあえず戦闘態勢とるでしょ。
なのに、その猛禽類は……
「わー!まって!ぼく魔法騎士団だからぁぁあああ」
と、人の言葉を喋った。
ふわっとスピード緩めて近くに降り立ったその猛禽類。翼で顔あたりを隠したと思ったら、人になっていた。
「えぇ……」
人型にでっかい翼がついた感じ。
鳥類……鳥人類?
あの、漫画にいるよねこんなキャラね。
有名なアニメ映画にもいるよね……。
服がなぜだかニッカポッカなんですが、どういう事なのだろう…。
オシャレなのかな?
「ごめんね、はじめまして。僕はラーク。困ってそうだから降りてきたけど、違ったかな?」
「あー……ご丁寧に。いろはです。この2人は弟のレイとライです。困ってる……まぁ困ってますね」
事の経緯を説明。
漫画ならかくかくしかじかって略されるやつだね。
そうすると、土の檻の中をひょいひょい覗き込んでから、任せてーとにっこり。
手のひらを目の前に出してきて、なにするのか?と3人で見ていたら、きゅっと握ってポンっと出てきたのはツバメ。
「……マジシャン」
「魔法使いだからねー」
それが一目散に飛んで行ったのを見届け、これで大丈夫だよーと。
説明が足りんのじゃぁ!
あれはなんなの!?
「あれはどこに行ったんですか?」
「魔法騎士団の詰所だねー」
「へー……」
「あれが詰所で喋るんだよ、賊捕まえたから運ぶの手伝ってー!って」
すごい機能があったもんだ。
わたし達プレイヤーはフレンド登録してれば通信機能なりなんなりあるけど、住人はどうしてるか知らなかったからなぁ。
ちなみに魔法使いでなくても使用できるように、専用のものが販売されてるのだとか。
お値段もお手頃価格なんだってさ。
販売されているものはビー玉ほどの大きさで、きゅっと手に握って伝えたい事、人を思い浮かべて手を開いたら飛んでく仕様。
飛んでる最中は基本的に不可視になっているようで、ほかの魔物などに襲われないようになってるんだとか。
確かに普通にツバメっぽかったし、あれは簡単にやられちゃいそう。
ただ見えてる状態だとしてもとんでもなく早い速度で飛んでくらしいので、滅多なことではやられることも無いだろうけどねーと笑っていた。
そんな軽くお話をしていると、おぉーいと遠くから声。
「あ、きたねー」
どこ?とキョロキョロしていたら、ほらと指さされた先には空飛ぶ御一行様。
わー……鳥もいるけど龍っぽいのいるな〜……
あれが龍か!!ドラゴン!ちょっと観察してドラゴンファイヤーの習得をしないと。
……もしかしなくても、みんな空飛ぶ生き物にも変化できるとかいう感じ?
「ラーク!あらぁ、エヌ団長のお弟子さんじゃない」
エヌ団長?
退団してるって言ってたけど、もしかしなくても?
元団長
そーりゃあリオン団長と仲良いはずだよ。
「この檻のまま運ぶ?」
「あ、檻撤去しましょうか?」
檻のまま運ぶのは流石に重たいんじゃなかろうか。
合図とともに解除を言われたので言われた通りにしたら、どこからとも無くツタが賊をまとめあげた。
みたことあるやつ!
イベントの時簀巻きになってたけど、すごい。
何人かの魔法騎士団が操作してるようで、ぎっちぎちに巻き付けている。
喋ることも許されないぐらいには巻きついているし、完全に手足の自由がない。
「いやぁすごいね、土魔法で作ったの?よくできてるね」
練習した成果というものですよ。
そのツタもやってみたい気持ちはあるけど、何魔法になるのかしら。草?
あぁでも空を飛んだりできるなら、風魔法わかるかな。
「風魔法の使い道?」
なんだなんだと魔法騎士団がぞろぞろ集まって、風魔法お披露目会が開催されている。
1番簡単なのは、突風を起こすことだよと。
何に使うのかと言うと、ガスや瘴気をそれで一時的に吹き飛ばす時に使うんだとか。
竜巻的なものは?と聞くと、あれはコントロール難しいからねぇ……と。
竜巻発生時にその場の環境も混ざっていくから、と言われたけど、要するに小石があれば巻き込んでとんでもないことが起きるよと。
実体験だったようで遠い目をして語ってくれた。
痛かったんだな……。
あとはカマイタチのような風の刃を飛ばす方法。
何人が披露してくれてわかったけど、三日月形の風の刃を飛ばす人と、円盤型を飛ばす人。
これは好みの問題!らしい。
じゃあいっそギザギザチェーンソー的なもの飛ばしたらどうなるんだ?と実験。
「お弟子ちゃんえげつないことするね……」
「え?」
「君たちよかったね、この技くらわなくて」
君たち?と視線の先には、賊が気持ち青ざめているような??
治りにくさを考えたら強そうだけど、そんな場面あるかな。
なんとなく風魔法の使い方がわかったのでお礼を言うと、時に食事は取った?と聞かれ、やばいと慌て果物をもぐもぐ。
はやくグラノーラバーみたいな携帯食を作らないと。
クッキーとか先につくればよかったかな。
「じゃあこの人たちは僕たちが責任もって運ぶね、まぁ……空の旅だけど」
それは要するに、ツタで吊るされたバンジージャンプのような状態で空の旅ですね。
こっわ。
空に舞い上がったのを見届け、かなり遅れている隣町に向かうことに。
「あとどれ位で着くのかな」
あれ以降何かが起きることは無いようなので、一応強制イベント終了の様子。
どこまでがイベントだったのか……
魔法騎士団も出てきちゃってたけど、やっぱり知ってる人がいるという前提で組まれるのかな?
「そういえば、今日ログインしてからカメラ回しっぱなしだった」
「そんなことしてたの?」
「そう、使えるかな?って」
正直編集無しでは厳しいものがないか?ていう感じだから、どうするかは考えなきゃだけど……
記録的な意味ではありかも。
いまやパソコンの容量なんて簡単に増やせるし、そもそもの容量もかなり多い。
昔は携帯電話なんて肩にかけてた時代もあったとか。
そこから小さい画面で容量3キロバイトとか。
え?なにができるの?って思わず聞いてしまったよね。
電話はできたわって言われたから、機能的には本当に携帯電話、だったんだろう。
画期的だったけどねぇと笑ったのはばあ様で、懐かしいわと微笑んでから、黒歴史の宝庫ねと頭を抱えていたけれど。
深追いするのはやめておこう。
「あ、あれかな?」
大きな門がようやく見えて、やっと旅が終わりそう。
とりあえず疲れちゃったから、ポータル登録したらログアウトしてご飯食べなきゃかな。