弟子鬼ごっこ
45
『生産部屋はじめてきた』
「あ、そうなの?結構使いやすいよ」
ツインズにギルド集合!と声をかけて、生産部屋をとりあえず3時間。お借りします。ありがとうございます。
街歩いてると、たまにすれ違うプレイヤーが、ミニチュアファミリー召喚した人、と呟いてることがある。
インパクト残ってるなぁ。
なんか、ボソッとつぶやいてるだけだから、反応するのもどうかなぁってことでスルーしてるんだけど……。
遠巻きに見られてるだけに終わってるし、まぁいっかと放置。
「で?なに実験するの?」
「俺ら呼んだってことは、食べ物?」
正解!
ということで、ローブから麻袋どーん。ふふふ。
中身は燕麦。
「?……あ、オーツ麦」
「あったんだ?」
「あったんだよ〜」
といっても、これを加工するところからなんだけども。
定期的にオートミール流行ってるから、大体の人は食べたことあるんじゃないかな?
食べ方もあれこれ改良されて簡単になってるし。
あとお菓子にも使われること多いから、気づかないうちに食べてる人もいると思うんだよね。
ただこれは、生の燕麦なんだよね。というか、麦畑から刈り取っただけの状態。
どっかにあるんだろうなぁ、麦畑。
だから藁に実がくっついてる。
市販のよく見かけるタイプとなると、蒸して潰してる状態なので、とりあえず脱穀して蒸すか!となったわけだけど。
「脱穀って…」
『脱穀機?ある?』
「聞いてくるわ」
というわけで、ギルド窓口。
アールさんがいたので尋ねると、薬爺のところにあると思いますよ?と。
脱穀機で伝わってよかった。
しかし薬爺のところか、なんてこったい。
ならば一旦生産部屋から出て薬爺のところへ。
「おや、息ぴったりの3人が揃ってどうした」
お店にお邪魔すると、今日は薬爺ひとりだけ。
というか息ぴったりで賞はみんな知ってるんだね!?
そして珍しく居ないエヌさんは魔法騎士団のところでお手伝い?しているらしい。
ツインズは初めましてのご挨拶。
とりあえず脱穀機があると伺って、というと、そこにあるじゃろと指さされた。
これか!お借りしたいと言えば、何するか知らんが好きに使ったらええと言われたのでありがたく。
ガタガタと動かして店の裏に。
色々飛んじゃうからね、脱穀機って。
来る途中で追加購入した燕麦を全て脱穀!!
足で踏んでのタイプなのでこれは魔力いらないので誰でも出来るっぽい。
昔から日本にあるやつと同じだね。
で、籾摺りもあったのてお借りした。
正直ここまでがいちばん面倒な作業だなって感じだったのでね。
完成したら持ってきますね〜と、脱穀機を元の場所に戻して生産部屋に逆戻り。
で、籾殻を取った燕麦を蒸します!
プリプリになった燕麦。これをそのまま食べたりもするよね。サラダとかにはいってるかな。
その蒸した燕麦を押し潰します!
どうやってつぶす?と考えた結果、土魔法でローラー作って、それで。
そして乾燥させたのが、みなさんご存知オートミールです。
『できるもんだな』
「よかった!」
オイルとハチミツをまぜます。
そこに出来たオートミール入れます。まぜます。
フライパンで炒めます。
「あー、グラノーラ」
「いいね、ドライフルーツつくる?」
「つくろう!」
調理器具も沢山あるし、オーブンっぽいものもある。
使用方法は記載されてるので問題なく使えそう。
というわけで、いちじくをよく洗い、拭いてカット、重ならないよう並べて低温でオーブン。
柑橘系もよく洗い、拭いて輪切り。
ブドウ!これはもうレーズンですよ!
そしてなんとこのオーブン。
魔力を流せばオーブン内の時間だけ早く進むよくわからん仕様なので長時間待たずともすぐできるって言う、なんて素晴らしい機械。
これ現実世界に欲しいわ。
「すごい便利」
「けどこれ、魔力多い人じゃなきゃ無理じゃない?」
「なくても普通に待てばいいと思えばまぁ」
出来上がったドライフルーツを適当に刻んで、グラノーラに混ぜて…
『完成したな』
「よかったー!手伝ってくれてありがとね」
――手作りグラノーラ 自然な甘さでおいしい。食べ応えもあり。――
紙袋にがさがさと詰めておく。
うーん、もっとたくさん作るには燕麦買わなきゃ無理だな。
あと小麦粉あれば簡易クッキー出来そうだから買っておこう。
理想はこのグラノーラをスティック状にして携帯食にしたいんだよね。
空腹度回復にちょうどいいと思うんだけど……
スティック状にするためのツナギを考えなきゃ。
本当はチョコレートとか、マシュマロと思ったけど、チョコレートどっかにあるのかな……。
マシュマロはゼラチンとか見つけてからだな〜。
ツインズはこの後ひたすら狩りをする予定とのこと。
なのでここで別れて、どうしたものかと悩み中。
なにしよう。
とりあえず薬爺にグラノーラ渡してから考えようかな〜。
と、歩き始めたわけだけども。
…?
……?
………………
つけられてるね!?
尾行されてるね!!
あっち曲がりこっち曲がり曲がって曲がって同じ道に戻ったけど……
いるね!?
ここは、ついに。
ついにあの技を使う時が来た。
とりあえずおもむろに準備体操始めます。
特に足の筋伸ばしておこうねー。
ぐっぐっとね。
はい、いっちにーさんしーごーろっくしっちはっち
「……ぁ!?」
よーいドンで走り出した瞬間、後ろで声が聞こえたし尾行されてるのは間違いじゃなかった!!
あちこちくねくね走り回って一瞬視界から外れたタイミングで、はいっにゃーん!
しかし油断せずそのまま走り抜けますよ!
ねこって!視界が!ひっく!!
あ!塀に登ればいいのね!!
え?行ける?ねぇ行ける?結構高さあるよ?
ぉ、おお…飛び乗れるもんだな…。
塀の上だとねこしか通れない道があるよねーってことで、そこを進む。影でじっとしてると、何人かが走り抜けて行ったけど、見覚えもないし…なんだったんだろう?
物騒だなぁ。
とりあえず今どこにいるのわたし。
仕方なく失礼しますと心で言いながら屋根に飛び乗って方向確認。
はぁはぁなるほど?
進みたい方向と反対に向かってたね。
方向転換してそのまま屋根から屋根にぴょーんと。
ねこ快適だわ。
ひょいひょーいです。
不思議なもので、体の使い方とかわかるんだからすごいよね。
む、どこから入ろうか?と思ったら、丁度よく窓開いてる。
これ多分エヌさん用に開けてくれてるんだろうなー?ということで……
「こんにちは」
「おやおや、その姿でとはなにかあったかね?」
そうなんですよ〜。とりあえず人の姿に戻るかな。