37
37
ひたすらにポーション2.0とポーション玉の作成。
黙々と。
出来たものは横に置かれた箱の中に詰めて、詰めて、詰めて。
あ、ツインズの分は作ってないよ。
あとで生産部屋借りて作る予定。公私混同じゃないけど、まぁ一応ね。
「休憩しようか、頂いたものだが梨を剥いたからね」
ふと顔を上げたらニコニコ顔の薬爺と、眉間をぐにぐにしてるエヌさん。
あれ?エヌさんいつきたんだろ。
ありがたくお茶と梨を頂きながら、エヌさんの横に積まれた箱を確認。
さすが大量だ。
頑張らなきゃ!とは、思ったけど、もう既に薬草が足りない。
また採取しに行こうかと思ったら、こんにちはーと声が聞こえて振り返れば住人……というか、
「あれ?アールさん?」
「あら、いろはさん?あらあら、ポーション作りのお手伝いしている方って、いろはさんだったのね」
その手に抱えているのは薬草の束。
おっと?材料がやってきたね。
休憩中なのね、じゃあここに入れておくから、とそれはもうたくさんの薬草の束が。
ギルドで依頼してたやつ全て持ってきたんじゃないのこれってくらいの量。
「すまないね、持ってきてもらって」
「いいえぇ、こちらこそ無理してお願いしておりますから。出来たやつ、頂いても大丈夫ですか?」
「構わんよ」
「では、」
え?重たくない?大丈夫??
と、思って手伝おうかと腰を浮かしたら、ガシャンと金属音がして、強そうな人がいた。
しかも獣人だ!
エヌさんは見た目分からないんだけど、この人達はみんなすごい。
肉食獣の集まりだ!
ライオン、ヒョウ柄、あとなんかオオカミっぽい?
「こちら、頂いても?」
顔はまんまライオンの人が器用に横に積んでた箱を持ち上げてるけど、ちらっと肉球見えた…。
にくきゅう……。
あと、横に来たらすごく大きい。あ、たてに!!
たてがみのせいかな?2m近くある気がする。いや、こえてる?
見上げる感じで首が…。
「初めて会ったか?」
エヌさんに言われて、頷くと、向こうも薬爺のとこの手伝いか?と確認してきた。
なんて答えるのが正解なのか……。
「こいつはいろは、俺の弟子だ」
ローブ着てるだろ、とエヌさんが説明してくれた。
弟子!!認めてもらってる……としばし感動の余韻に浸りつつ、弟子のいろはです、とご挨拶。
どうやら噂の騎士団らしい。
こんな強そうな騎士団に守られてたら街は安全そのものだよね。
ふとライオンの人がじっと見つめてくるので、とりあえず見つめ返す。
目がネコ科特有の感じ、キュッと瞳孔が動く。
ガラス玉みたい。すごーい。
「エヌ、変化教えておけよ」
「いるか?」
「この間追いかけ回されていただろう?魔法使いが珍しいからってのもあるだろう。念には念を、だ。」
どうやらすでに追いかけっこの件が騎士団には報告が上がっていた模様。
いやまぁ凄かったもんね、ログみてたら。
でもあれはきっと女性プレイヤーだったから、イケメンを追いかけただけで、わたしには無縁の世界だと思う……んだけど、変化とか興味しかないので教えてもらう。
逃げやすく動きやすいのは猫だ、とのこと。
犬もいいが、犬だと塀の上に飛び乗ったりが難しいらしい。
確かに犬だと厳しいかも?
特に小型犬だとジャンプ力もないことが多いイメージだし、そうなると猫か〜。
今回は詠唱なく、なりたい動物をイメージしながら体に魔力を纏わせろと言われた。
纏わせろ。
難しいことをまたさらっとしれっとおっしゃいますね。
なぜか騎士団もその場で見ているのだけど…。
纏わせる。とりあえず魔力の服を着るイメージでなんとかなるかな。
イメージした猫はハチワレ靴下ちゃん……なんだけど、薬爺が用意した鏡に映ってるのは白猫で黒靴下履いてた。
なんでだ。逆だよ!!カラーが!
「あらあら!可愛らしいわ!」
「可愛いが目立たないか?」
「ま、まって!色間違ったんで!」
慌ててもう一度魔力の服を……!
あ、よかった、イメージ通り。
白靴下でなぜかしっぽの先まで白くなったけどまぁよしとしよう!
いいだろうと及第点頂いたので一安心。
騎士団の方々もそれなら暗いところに紛れられるかもな、と。
「それを覚えておけば何かと便利だからな、あとは……そうだな、たくさん勉強しておいてくれ」
「あ、はい」
まさか大人になって言われるとは思わなかったセリフ。まるで子どもに戻ったようだわ!
生涯勉強だと思ってるけど、なんだろう…完全に子どもを見る目だったのよ…… 。
年齢まったくわからないし想像もつかないけど、歳上なんだろうな。
そして結構な量の完成品を軽々持って去っていったけど……。
ついでにヒョウ柄の人は帰りにバチコーンとウインクして出てったし、オオカミの人は会釈して出ていった。
そして、また薬草が盛りだくさん。
「すみません、先に弟たちのポーション作りにいってきていいですか」
これは終わらんやつと判断して、断りを入れてギルドへ。
ここで作っていいと言われたけど、依頼品と混ざっても困るし申し訳ないし、個人的なものだしと抜け出してきた。
身内に作るものだしね。そういうところはキッチリしといて損は無いと思うんだよね。
さくっと生産部屋を借りて一気に作ってしまう。
今日だけでどれだけ作ったかしら…?ていうくらい作ってるから、効率化も出来上がって早いのなんの。
その姿はもはや職人そのものよ。
実は機織り機もここにあるのだけど…
糸が足りない気がしてるからまた今度かな!
よし!ツインズ呼び出してポーション渡して、勉強のため図書館だ!