アレニエ
いそいそと部屋に戻って、ゲームの世界でまずなにをするか、を考える。
アレニエの糸を100個集めなければならないし、図書館で魔法のことと特殊な矢のことも知りたい。
あと走ったり筋トレしたりするとその分反映されるのか、とか。
アレニエの糸を早く集めてローブを作りたい。
まずは狩りをして、午前中にどれだけ集められるか次第で考えようとログインする。
ログインして空腹度を確認。
そんなに減ってないので、ギルドに向かう。
せっかくだからアレニエのクエストがあれば受けておこうとクエストを探す。
アレニエの糸の納品、というクエストがあったのでとりあえずそれを受けておく。
アレニエの生息地は正面門を、出て右側の森らしいことを教えてもらったので、ひとまず正面門まで向かう。
上からつつーっと降りてきますよ、と言われた。
想像しただけで、ちょっとごめんなさい、という気分。
しかし蜘蛛ということは、風にゆらゆらしているかもしれない。
そしてあいつらは意外に跳ねたりするから、目の前に急にひゅんっと飛んできたらどうしよう…。
「おーい、今日はなにするんだー?」
声に顔を上げれば、正面門の門番さんが手を振っている。
近寄ってアレニエを狩りに行くことを伝えると、あぁーっと笑っている。
「だからそんな顔してたのか!」
どうやら、やだなぁというのが顔に出ていたらしい。
大好き!なんて人もいるのかもしれないが、個人的にはとっても遠慮したいんです、と答えておく。
「アレニエって、飛びます?」
「んー、上から降りてきたらそのままぶらーんとしているだけだな。ただ急に上から来るから不意打ちに攻撃をもらうかな。」
「それは…」
「なに、大丈夫さ。ほら、クッキーをあげるから頑張ってこい」
子ども扱いされた気もするが、ありがたくクッキーをいただく。
じーっとみると、
ふつうのクッキー
という表示が出た。
こういうのも鑑定できるのかー、と関心しながらかじる。
サクサクというより、やや固めのザクザクした感じ。
「ありがとうございました!ごちそうさまでしたー。頑張ってきます!」
気合を一ついれ、正面門から外に出る。
あっちの丘からはじまったんだよなー、とゲーム開始時に降り立った丘を眺めながら、目的地の森に向かう。
上から降ってくるのかーと近くの木を見ていたら、本当に上からつつーっと降りてきた。
「うわ」
小型犬ぐらいのサイズはありそうな巨大な蜘蛛にぞぞぞっと鳥肌がたつ。
「ひーっ」
慌てて矢を継ぎ射る。
3本ほど当たったところでやっと倒せたようで、その場にキラキラとひかる糸玉が落ちていた。
半ばパニックで適当に当てたため3本も使ってしまった。
「攻撃はしてこない。とりあえず上から定期的に降ってくる。それを射る。よし。」
深呼吸一つして、他の木から降りてきたアレニエをじっと見る。
キラっと光ったところめがけて矢を射る。
が、即死ではなかったようで、もう1本。
慣れたあたりで弓の耐久値をみれば、すでに半分以上減っている。
15匹倒してこの耐久値は消耗がなかなかつらい気もするが、初期装備だしこのぐらいかもしれない。
1匹倒して1個の糸が手に入るので、とりあえず今15個糸がある。
ひとつは弓の張り替えをするとして、お昼まで粘ろうかと思ったが一度切り上げたほうがよさそうだ。
布に糸を詰めて、たすき掛けをして固定する。
その場で少し動いてずれ落ちそうにないと判断したら、小走りで戻る。
この世界でジョギングや筋トレによる体力向上の検証もかねて。
「お、どうした走って」
正面門までくると門番さんが出迎えてくれる。
体力つくり!と答えると、いいことだと言ってくれた。
ということは、あながち間違いではないのかもしれない。
屋台で串焼きを買ってその場で食べてから図書館に入る。
集中して調べ始めたら空腹度を忘れてしまいそうだからだ。
図書館では薬草についてと栽培関係、魔法書と武器についてをざっくり借りて机に積んでおく。
まずは、特殊な矢について。
これは助言もありすぐに見つかった。
弓も矢も素材によりいろいろ効果がついたり、攻撃力が上がるようだ。
新しい素材は採取か狩るか、買うか。
そして薬草関連の書物には栽培のヒントになりそうなことはみつからず。
栽培関係の本には、普通の食物や果物等の栽培については記載されていた。
現実世界のような植物によって適切な環境があるわけではないようで、日当たりが良くて、定期的に水をあげて、肥料があれば育つらしい。
それに、早いものは1日で収穫までできるようになるという素晴らしさだ。
「さすが…」
あとは魔法書。
魔法の基本は、火の魔法。
これはRPGの定番のような気がする。
そしてMPを消費しての攻撃となり、MPがなくなるとひどい倦怠感がでてくるらしい。
「…MPって鍛えられるの…?」
これはさらに調べるものが増えた。
しかしすでに時間は昼時になっており、一度本をすべて棚に戻してログアウトをした。