ポーションつくり
ポーションつくりは、薬爺さんに教わった通りに丁寧に作るとできあがった。
よかった実は一人で作って爆発したらどうしようってどきどきしてたんだよ…。
なんか化学の実験ぽくて、ボンッてなったらもうね、どうしようかと。念のためバケツに水用意したぐらいに。
別に爆発要素になる火薬とかはないんだけど、失敗したらゲームの世界って爆発しそうなイメージが強すぎて。
普通のポーションは、途中でビンがないことに気が付いて、受付の人に聞いたら、5Gで売ってくれた。よかった。
「できたー」
思ったより綺麗にポーション玉もできた。
なんだろう、あの洗濯ジェルみたいな感じのやわらかいバージョンというか。
猫の肉球というか…。
念のため、ポーションが10個、ポーション2.0が5個、ポーション玉が5個。
全部で40株の薬草と、ビンが15個。コアが5個。の、消費かぁ。
ていうかこのポーション玉ぶつけて使うにしても、べたべたしないのかしら。
ポーションに関しては色は薄茶と濃茶みたいになってるけど、青汁みたいな感じの味だったし…。
おいしくしたい…。なんか方法考えよう、うん。
薬爺さんから買ったキットは少し耐久値が下がったけど、まだ大丈夫だし、この後は弓の耐久値を直すためにどうしたらいいのか聞いたほうがいいなぁと、ポーション玉をぷにぷにしていたらノックが聞こえた。
あれ、もう時間かな?2時間はやいねーとと戸を開けると、やけにイケメンがそこにいた。
「はい?」
「邪魔する」
するりと勝手に部屋に入られてしまって、え?え?と背中を見つめてしまった。
ツインズと同じぐらいの身長だろうけど、ローブで体系はわからない。
誰だ。でも聞き覚えのある声だけど…?
「えーと?」
「…ポーションはできたのか?」
「え、まぁ。すみません、もしかして…エヌ、さん?」
「なんだ、今気づいたのか…」
なんだって、猫から人間?になられていたら、聞いたことあるだとしてもわかりませんって。
っていうか、人間だったの?ん?誰かわかったけど、よくわかんないんだけど?
「エヌさんって、」
「俺は獣人だ」
ほほー。獣人とな。
思わずまじまじと観察してしまう。獣人って絶対にその動物の耳と尻尾が生えているイメージだったけど、そういうことでもないのかしら?
今のエヌさんは猫の耳も尻尾もない。ただのイケメンです。ナイスガイ。
長めの髪の毛を片側に寄せた、色気がすごいイケメンです。なんか黒いローブで魔女みたい!や、魔術師?賢者?そんな感じ。
なんだろう、なぜこんなに似合うのかしら。すごい。
「獣人のイメージが変わりました」
「そうか。で、ポーションできたのか?」
「できましたよ」
ほら、と見せるとじっと見つめて、うん、と頷いた。
気にかけてもらっていたのかもしれない。それぞれ手に取ってじっくりみているけど、大丈夫みたいだ。
「なにか御用でした?」
「あぁちょっと」
「じゃあ、ここ片付けて外でもいいですか?部屋の時間もあるので」
構わないというので、さっさと部屋の片付けを行う。
といっても、そこまで汚した覚えもないので楽にはすんだけど。
たくさんのものを一斉に作るとなるとそれなりに汚れるかもしれないから、時間に余裕を持って行動するべきかなぁと思う。
2階からエヌさんと降りると、クエストとかを見に来ていた他のプレイヤーがこちらをみている。
まぁエヌさん、イケメンですし。かっこいいですし。感嘆の声ってこんな状況ででるんだなぁとか。
人の目の中にハートがありそうってこういうことだよなぁとしみじみ実感する。あ、フード被って顔隠しちゃったよ。もったいない。
ちらっと振り返って、ついてこい、というのでおとなしく後をついていく。
ついていった先は、薬爺さんのお店の斜向かい。
「入れ。俺の店だ」
あ、お店なのねーと思いつつ、お邪魔しまーすと戸をくぐった。
中はシンプルで物が少ない。
なんの店なのかしら?と首を傾げつつ、勧められたソファに腰掛ける。
エヌさんはじっと人の顔をみてから、ため息をついて奥に引っ込んでいった。
「お前、これ食え」
そう言って出されたのは、果物とヨーグルトっぽいもの。それぞれに蜂蜜っぽいのがかかっている。
蜂蜜かな!と気を取られたが、もしかしてまた空腹度が…。
「あの」
「飯をしっかり食え、いろは」
「ぐ…やっぱり」
「やっぱり?」
「朝も野菜売りのおかあさんに怒られました」
あはは、と苦笑いしかでてこない。エヌさんからはため息がもれてきた。
そういえば、朝いただいたサンドイッチから狩りをして薬草を採取して、ギルドの生産部屋で引きこもっていたのだから、今の時間はお昼。
「お前は…面倒のかかるやつだ」
「すみません。いただきます」
果物は、いろんなものが刻まれていて、甘くて美味しい。朝も思ったけど、味覚の再現ってすごい。
これ完全にダイエットにもなりそう。
蜜漬けになっているという果物はビンにいれているらしいけど、きっときらきらして綺麗だろうなぁと思う。
ヨーグルトっぽいのは、やっぱりヨーグルトで酸味がきつい。昔ながらのヨーグルトみたいな酸味の強い感じに、蜂蜜がまた美味しい。
食べてから、やっぱりお腹空いてたのかーと思う。どっちの世界でもご飯食べるって、たくさん食べちゃってる気になるなぁ。
ログアウトしたらご飯食べなきゃだし。
いやでもリアルだと動いてないからお腹空いてないかなぁ。
「あ、エヌさん。レモンいります?とってきたんです」
「…もらう」
「果物好きなんですねー」
「まぁな、イチジクもうまかった。ありがとう」
「それはよかったです!ごちそうさまでしたー」
とりあえず、エヌさんにレモンをとってきたものそのまま渡す。
また見つけた時に蜂蜜売ってるところきいて、蜂蜜漬けにしたいなぁと考えていたら、目の前に杖が差し出された。
まるで魔法使いの杖。というかどこからでてきたの?これ。
「杖ですか?」
「お前は魔法を使いたいんだろう?なぜだ」
「なぜって言われると子供のころからの憧れだったからですかね。あと弓でぷるるん倒すときも思いましたけど、近接は…無理かなーっていう…」
「他には?」
「ううーん、他?私双子の弟がいるんですけど、なにかあったとき回復魔法とか使えたら、いいなぁって」
「ふむ…」
「えーと?」
「俺の分かる範囲でなら、教えてやる」
「俺の分かる範囲…え!?本当ですか!?うれしい!」
もしこの世界で魔法を使えるなら、杖は指揮者のタクトのようなものを想像していたけど、自分の身長ぐらいありそうな大きさだ。
でもこれはエヌさんのものらしい。
杖は、たくさんある中から自分で選ぶ、また選ばれるものだという。
あー、魔法使いっぽい。いいね、異世界っぽい。子供のころ憧れた世界。
とりあえず、杖選びということだが、ふとログアウトのことを考える。
「あ、エヌさん、それって今すぐですか?」
「いや、こちらも準備がある。夜には揃うが」
「じゃあ、夜でお願いしてもいですか?」
「あぁ、日が落ちたらこの店にきたらいい」
どのぐらいの時間がいいのか全く分からない。でも夕飯を食べた後でログインしたらいいか、と決めてお店をあとにする。
そのままログアウト前に、斜向かいの薬爺さんの店に入る。
できたポーションを見せると、よくできておると褒めていただいた。
これなら問題もないし、売れるだろうとまで言われたので安心だ。
エヌには会ったのかい?と聞かれ、夜にお店に向かいますと伝えれば、しっかり選びなと言われた。
どうやら薬爺さんも知っていたらしく、にこにこしていた。
大丈夫じゃと言われたので、多分大丈夫なんだろうと安心して、一旦ログアウトすることにした。