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モモロン  作者: 素元安積
二十六・回答
61/66

 兵士からクロノ王子がいると聞き、城の中へと戻った僕。クロノ王子がどこいるのか問えば、やはり僕の部屋にいるらしい。こんな時期に来るってことは、やはりあの話をしにか。僕の部屋の前までくると、ドアノブを捻って中へと入った。


「やぁ、モモロン君。聞いたよ、姫とあのイケメンが結婚するんだって? おめでとう……って言ってもOK?」

「多分OKだと思いますけど」


 僕の答えを聞くと、意外にも彼は目を丸くして僕を見た。そして僕に近づき、こう答える。


「正気?」

「え、ええ」

「えー、やな大臣」

「嫌なんですか?」


 クロノ王子は両手を広げ、やれやれと首を振った。


「まぁね。って言うか、僕がもし可愛い女の子だったらあの王子とは絶対結婚しないけどね。何か、ウラがありそうだろ?」

「そうでしょうか? 普通に姫を気に入っているような気がしましたが」

「だからだよ~気に入られているからこそ、どんなことされるか分かったもんじゃない! ものすごくべったりするかもしれないし、歪んだ愛情なら傷つけられるかもしれない!! あと、あそこは親の問題もあるしね。僕なら嫌だよ、何も分からない相手の所に嫁ぐなんて」


 流石はクロノ王子。その先の現実をちゃんと見つめている、冷静だな。その例えを言われると、僕も少々嫌な気持ちになる。


「最悪、断って何かあってみろ。その時は僕が全力で守ってやるよ。だから、もう少し姫のこと考えてやってね」


 クロノ王子はそれだけ言うと、「それじゃあね♪」と手を閉じては開いてを繰り返す挨拶をして去っていった。……知らなかったな、彼があれ程勇敢な人間だったとは。


 … … …


 クロノ王子と別れた後、僕は少し外の様子が気になり、城下町へと繰り出していた。特に何を買うわけでも無いが、皆の様子が気になり、辺りを見つめる。


「ちょっと、モモロン!」


 やって来たのは、アランの妻であるマリアさんと、その子であるマツリちゃんだ。この親子は何時も一緒にいる、仲が良いんだろうな。


 どうでも良いことを考えていると、マリアさんに手を引かれて町の奥の方へと連れていかていた。


「夫から事情は聞いたわ。駄目じゃない、姫を止めないだなんて」

「……やはり、若大臣として止めるべきなのでしょうか? 国がかかっているのですが」


 マリアさんはそれを言われると、「難しい所よね」とマツリちゃんから手を離し、腕を組んだ。それを見てか、マツリちゃんも腕を組む。


「元戦士だった私としても、確かに国を守ることも大事だと思うわよ。けれどね、元戦士である私としても、国民である私としても、国への恩と情は忘れないわ。もし、どの選択をして、それが間違いだったとしたら、私はまた先陣を切っても良い」

「それは駄目だ。貴方にはアランがいるし、何よりマツリちゃんや子供達がいる」


 僕が真剣に怒ると、マリアさんはニコっと笑った。


「もしもの話よ。大丈夫。きっと、大丈夫だから。だからそんなに責任を感じないで」

「責任……?」

「ええ、貴方は今、多分とても責任を感じているの。だから、この問題に関して受け身なんじゃなかなって」


 マリアさんに詳しく話を聞こうとしたが、マリアさんを探しに来た子供達がマリアさんとマツリちゃんを連れ去ってしまい、僕はまた一人になってしまった。……責任、か。やはり僕は、以前のことを根に持っているのだろうか。


 … … …


 城へ戻り、僕はある人物に無性に話したくなった。ある人物なんて勿体ぶったが、皆さんにはお分かりだろう。エロス様だ。僕は図書室へと入ると、エロス様は読んでいた本をそっと閉じた。


「春画ですか?」

「違うよっ! そもそも、此処には春画なんて置いてない!!」


 ってことは、探したことがあるな? この人。


「……それはそうと、僕の所へ来たってことは、イリスのことでなんじゃないのか」

「ええ」


 僕は相席し、閉じてあった本を見る。カオス国の歴史についての本か。成程、実は勤勉な人のようだ。


「僕としても、この件については反対だね。ラネット王子が気に食わないってのもあるが、背景にいるあのクソ親父。カオス王がおぞましい」

「だからこそ、おぞましいものの味方に付くことは重要なのではありませんか?」

「本当にそう思うか? それが、平和に繋がると思うのか?」

「僕には、どうしてもそう思えてならないのです」


 エロス様は僕の意見を聞くと席を立ち、「ちょっとついてきて」と図書室を出て行った。


 … … …


 久々だな、この薄暗さ。ついてきたのは、この国の地下牢の中だ。この中に初めて来たときは、確かチョコマを捕まえに行った時だったな。


 エロス様が歩いて向かったのは、あの時、クロノ王子の助言を貰った男の前。


「モモロン、彼はね、カオス国からの逃亡者なんだよ」

「逃亡者?」

「うん。見つかったら殺されてしまうと聞いて、姫が匿っているらしいんだ」


 カオス国からの逃亡者と言えば、懐かしい男の姿が蘇る。まさか、このおじいさんのような見た目をした男が、そんな……。


「ハリーなのか」

「ああ」


 彼の応答を聞いた瞬間、僕は怒りがこみ上げた。歯を食いしばり、檻越しに男……ハリーの胸倉を掴む。僕が掴んだ拍子に、被っていた白髪のカツラがずれ、中の美しい紫色の髪が現れた。成程、コイツは確かにハリーのようだ。


 それを見ていたエロス様が、「おいおい!」と僕の手を掴んで離させた。


「お前等知り合いか!? だとしても、どうしてこんなこと」

「彼は裏切ったんです。僕のことを」

「……え?」


 熱くなった頭を押さえ、僕は彼との経緯をエロス様に説明した。それは勿論、僕のことそのものも。


「つまり、君は……そうなのか。だけどなモモロン、その話には、大きな間違いがある」

「間違い?」


 エロス様が頷くと、ハリーが事の真相を説明し始めた。


 しかし、それは僕の知っている事実とあまりにも真逆で、すぐには信じがたい真相であった。

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