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Rank Q  作者: 榊原義之
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始まり

遥か昔

魔王と地上、そして天界、冥界もを巻き込んで起きた戦い。

‘‘光と闇の戦い”

それは光が導きだした勇者が魔王と刃を交えた時、この世界に安泰とかつてない幸福が約束されるだろうと言うもの。


数百年の時を経て伝説の通り、勇者と魔王が刃を交え戦いそして、この世界には安泰が訪れた。

でもそれは、勇者が魔王をたおしたから?それとも勇者が起こした奇跡だろうか。

真実は誰もわからないまま平和が訪れた、しかしこの安泰と平和にはある特殊な事情があったのですーーー




人間階の真上にある天界。

そこでは様々な神と天使が地上の安泰と平和を守りながら、人々の魂を導く仕事をしていた。

魔王のいた時代は天使、上天使、最上天使など階級順で地上を守る役で有ったが安泰と平和が訪れた今では天界の本部とも言えるパルテに3箇所部署を設置し、地上界を守りながら魂の快適な生活をサポートするハイテク方針に変わった。



そんなハイテク天界本部、パルテで一人嘆く天使がいた。


「ちょっと待ってくださいよ…どうして私が…!」


天界の本部とも言えるパルテの最上階、最上司令官室では静かな怒号が響いていた。


「もう決まったことだ。諦めろシリウス」


シリウス、と呼ばれた髪の長い茶髪の青年は不満そうに口を尖らせると上司である最高司令官を涙目で睨む。

彼の名前はシリウス・ロゼッタ。

パルテ内の防衛部に所属する、上級司令官である。

防衛部は天界の防衛、地上の防衛、悪魔や違法亡者がいないかなどのセキュリティーを行う事が仕事でとても名誉ある役職なのだが…

彼は今、その部署から一時異動を余儀無くされているようだ…。

司令官ははぁとため息をつくとやれやれと首を振る。


「そ〜んな顔してもダメだ。たとえ我が息子と言えど、主の命令は無視出来ないんだよ」

「だからって…幾ら何でもそれは酷過ぎます、父さん…!私はこれでも防衛部の上級司令官なんですよ!」


彼はこう見えて最高司令官の息子であり、部下の天使達から信頼も厚い。

目の前にいる、上司であり父であるゴードン・ロゼッタがシリウスは部下達を裏切らない意味でも一時異動を拒んでいるということ位、わかっている筈なのだが…


「だからこそお前には調査部に一時、異動して欲しいんだ」

「何故です…!部署を抜けられない理由は父上もご存知のはず…!私がいなくては大事な部下達が…!!」

「…わかっている。お前が部下思いなのも防衛部が少し乱れることも。

だがな、今回はその部下達を守る意味でも、調査部行ってほしいんだよ」


シリウスは父の言葉にはっとする。


「部下を守る意味…それは一体どういう意味ですか、父上」


ゴードンはため息を吐くと首を振る


「全く…相変わらず人の話を最後まで聞かないのはお前の悪い癖だぞ…いいか、よく聞け。」


ゴードンは椅子から立ち上がり、机下にある金庫からある資料を取り出した。

表紙には‘‘地上界本部 特別報告書”と書かれている。

シリウスがそれを見るとこれは…と首をかしげた。


「それは人間界に天界と魔界、両合意の上で設置された特別な部署、通称Rank Qの報告書だ。お前も名前くらいは知っているだろう?」

「はい、たしか突然変異などで人間ではありえない異常な強さを持った人たちを厳選され集めた地上界の偵察隊…」

「そうだ。弱い奴や悪い奴はいない…が…ちとまずい事になってな」

「まずいこと?」

「ああ、狭間のことだ。」


シリウスは狭間と言う言葉を聞いてぴくっと反応する。


「狭間…天界、魔界、冥界を地上界に繋いでいる、空間ですね」

「そうだ、そこに今、異常をきたしている。」

「!…異常?」

「ああ、狭間は人の見えない持念や記憶、感情が形とならずに混沌と漂っている。

その持念や記憶なんかは次に魂が生まれ変わる際に持って行く物…だが…最近その狭間が不安定になってな。」

「なんだ、それならば次元の調整を」

「いや、次元の調整どころじゃない。」


ゴードンの声が大きくなる。

はっと我に帰るとゴードンはすまないと首を振った。


「…実はここ最近、原因は不明だが最近地上界の次元を裂いて人の持念や記憶が凶暴な幻獣やモンスターになって現れるようになったんだ」

「幻獣…?そんなことはありえません。持念や記憶は形は無いもの…形にはなれないはず…」

「ああ、正確には持念や記憶の力だな。あれは魂達が残した道しるべの光。小さな力だが引き起こす要因があれば恐ろしい力になる。」


シリウスはそうですか…と納得するとこくりと頷いた。


「つまり、私が、その幻獣を倒す様にという事ですね」

「そういうことだ。地上部だけでは正直力不足でな、殆ど倒しているのはRankQの実力者だけだ。何より、天界にも関係してる上に出現件数が少しずつ増えつつある…このままでは戦力不足になるだろう。」


ゴードンはため息をつきながら、目を伏せる。


「お前なら実力も他の天使よりも上だ。それにお前の中にある血もその手助けに役立つだろう。」

「…分かりました…少しでも力になれるよう努力しましょう、しかし…私がいない時の部署は…」

「大丈夫だ。部下達全員には話を通してあるし、お前が信頼してる上司のアントニオに部署は任せた」


シリウスはえっと驚くとゴードンはクスクス笑う。


「部下思いのお前が気にしないで行けるわけがないと思ってな。何より、シリウス、お前は私とリリィの大事な子だ、これくらい甘えて構わないんだぞ?」

「…!父上…!」


ウィンクしてしたり顔のゴードンにシリウスは嬉しそうにありがとうございますと一礼した。


「さて、話は終わりだ。案内人はもう外で待ってる。」

「はい!」


シリウスは明る笑顔で出口に向かう。

扉が閉まった後、ゴードンはため息をつく。


「シリウス、お前なら出来る。彼奴が言う事が本当なら…」


そう呟くとゴードンは静かに目を閉じた。



「やぁ、君がシリウス君?」


シリウスが司令官室を出ると、あっとシリウスに気付いたのか優しい笑みを浮かべた神父が話しかけてきた。


「ええ、まぁ…あなたは?」

「ゴードンから聞いてないかい?案内人だよ」

「あ、いえ聞きましたが…」


シリウスは少し…いやかなり驚いた。

一目でわかったが彼は天使ではないのだ。

かといって神でもない、彼は…


「ふふっ、人が、何故ここに来れるんだろうって?」


心が見えた様に思った事を神父に言い当てられ、シリウスは思わず、いや、そのと篭る。



「気にしなくて良いよ、此処にいるとよく聞かれるからね。」

「す、すみません…」

「これのおかげさ。」


そういって神父が出したのは最上司令官の特別許可証。

シリウスはそれをみてああ、と納得した。

特別許可証を持つ人間は地上にはたった一人、Rank Qの総責任者しかいない。


「父上の特別許可を得ている…ということは貴方が…」

「そう、僕がRank Qの総責任者だよ。

あっすまない、自己紹介が遅れたね…僕はショウ・サディスト、これから君に説明やらをすることになるからよろしくね」


ショウはニコニコ笑いながら手を差し出した。

シリウスはつられて笑顔を浮かべるとその手を握り返した。


「はい、此方こそよろしくお願いします」



これが思えばシリウスの試練の始まりであった。

彼がこれから出会うのは様々な奇跡、人の優しさ、そして彼自身に流れる血と向き合うことになる。


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