第6話 気になる年頃なんです
私は女子高生。だから、多少なりとも容姿を気にしたりもする。でも、その姿を果鈴会長に見られるのは、あの一件があってから、何だか恥ずかしくなってしまいました。
「私を気にせず続けてくれ」
「は、はぁ」
いや、どう考えてもこっち見てるよね? そんなに見ていて面白いものでもないと思うのだけれど。
「果鈴会長は髪を整えたりはしないんですか?」
私はそこがどうしても気になった。果鈴会長が手を使ったり、くしを使ったりして、髪を梳いている姿を見たことがない。と言うよりも、見た目的に気にしなさそう。
「うーん。多少は気にするが、別に鏡を使ってまではしないかな。そもそも、やり方がわからないし」
「あ、そうですよね。一年前くらいまでは男子だったから、気にすることもなかったですよね」
たまに忘れてしまうが、この方は女装しているのだ。あまりにも可愛いので忘れてしまう。くそー。何で私より可愛いのよ! 有罪だわ。
「そうだ。夏菜子」
「何ですか?」
「お前が俺にやり方を教えるというのはどうだ?」
「え? 私がですか?」
私は教えるのが上手いわけじゃない。そもそも、簡単なことしか知らない。
「ああ。簡単でいいから。むしろ、その方がいい。一気にたくさん教えられても、覚えられないからな」
「確かにそうですね」
簡単でいいと言うので、結局私が教えることになった。大丈夫かなぁ。
「じゃあ、後ろ失礼しますね」
「何だ。本格的だな」
とりあえず、生徒会長の椅子の後ろに立った。いつもこんな風に見えてるんだ。何だか不思議な気分。
「あ、そうだ。夏菜子、いい加減俺に敬語で話すのは止めてくれ。何だか他人行儀な感じがして、嫌になってきた」
果鈴会長、嫌がってたんだ。全然気が付かなかった。敬語が嫌だって思う人なんて初めてかも。まあ、確かに同学年だからね。
「わかりま…わかった」
「よし。ついでに呼び方も変えてもらおうかな」
「呼び方ですか?」
「ああ。『果鈴会長』って呼ばれるのは、お前ぐらいしかいないから、貴重ではあるんだが。でも、もっと親しい感じにしたい」
果鈴会長がこんなこと言うなんて。明日は雨でも降るんじゃないかな。でも、どうしよう。そんなこと考えたこともなかったから、すぐに思いつくものでもないし。
「そんなこと言われても、思いつきま…ないよ」
ずっと敬語でのやり取りだったから、切り替えが難しい。でも、果鈴会長からのお願いだから、守らないとね。
「じゃあ、『果鈴』って呼び捨てはどうだ?」