第3話 真実とは時に残酷なものです
誰だってあんなことを言われたら、一日考え込んでしまうに違いないと思います。その状況に今、私が陥っています。私の理想でもあり、遠くて近い存在だった果鈴会長がまさか男だなんて誰が思うんですか。誰が。いや、分かる人もいるかもしれません。『ここの骨がおかしい』とか。『顔つきが微妙に違う』とか。でも、そんなことに気が付けるのって、せいぜい千人に一人いるかいないかぐらいです。つまり、当然ながら私にはありません。そもそも気付く方がどうしてますよ。観察力高すぎです。私もまあまあ高いほうかなあ、なんて思ってた時もあったんですけどね。なかったです。
「ちょっとだけ気にしてます」
ちょっとだけと少し嘘をついてしまった。果鈴会長に嘘をつくなんて!初めてしてしまいました。
「そうか。すまんな」
生徒会室には今は私と果鈴会長しかいない。だから、会長の気が緩んでいるのか、言葉遣いが時々荒くなる。もしかして無自覚なのかな。
「いえ。こちらこそごめんなさい。突然だったから…少し混乱してしまって……」
あんな状況になって混乱しない人がいるのかな。今でも信じがたいよ。ずっと女の子だって思い込んでたから。
「別にいいよ。あやまらなくても。むしろ、今まで言わなかった私にも責任はあるし」
そう。別に気にしなければ会長はただの女の子なんだ。見た目は。それにしてもスタイルが良すぎですよ。保健室事件がなければ、私は会長の秘密を知ることはなかったでしょう。
「もしかして、このこと先生方にも言ってないんですか?」
「基本的にはね。今知ってるのは保健室の先生と校長先生だけかな」
なんと!?教員数50人弱のこの学校で、真実を知っているのはたったの2人!?もし私が果鈴会長の立場だったら、一日でばれそうだけど。でも、それって学校の規則違反じゃない。だって校則の第三条に『本校の入学は女子生徒に限る』って書いてあるもん。なのに、どうして入学できたの。
また一つ、果鈴会長を取り囲んでいる闇が増えてしまった気がする。