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第12話 卑怯

「ねぇ」

「なんだい?」

「果鈴ちゃんってそもそも私と同い年なの?」

 もしかすると、その可能性があるかもしれないと思ったのは、昨日のことだった。

 果鈴ちゃんと下校していると、目の前で交通事故が起きたのだ。びっくりした私は、どうしようどうしようと言いながら、軽くパニックになっていた。

 すると、そんな私の横で果鈴ちゃんは冷静だった。いつの間にか救急車が到着していた。近くの公衆電話から電話をしてくれていたらしい。

 そこで私は、自分のことをまだまだ子どもだなと感じた。けれど、果鈴ちゃんは冷静で大人な対応をしていた。

 昨日のことだけが全てというわけではないけれど、時々果鈴ちゃんのことを年上だと感じるときがあるのだ。

「じゃあ、もしあたしが夏菜子よりも年上だとしよう。嬉しいか?」

「答え方が卑怯です」

 嬉しいか嬉しくないかと聞かれたら、返答出来ないことを分かっているくせに。

「年上か年下だったら、どっちがいい?」

「どうして答えづらい質問で返すんですか。質問に答えてからにしてください」

 すると、果鈴ちゃんはふふふと不気味な笑みを浮かべた。

「そういうところが子どもっぽいんだよ。夏菜子は」

「なんでそうなるんですか」

 私には分からない、大人な話なのかな。そのうち、この話の意味が理解できる日が来るのだろうか。

「子どもっぽい言葉で説明するなら、それは秘密ってことだ。わかりやすいだろ?」

「私のこと、馬鹿にしてますよね?」

「してないよ。むしろ、夏菜子のことは、少し可愛いと思ってるくらいだから」

 ほら、すぐにそうやって慰めようとする。果鈴ちゃんのいつもの手法である。卑怯だ。

「子どもっぽいという意味で、ですよね? なんだか悲しくなってきました」

「さっきのは冗談だよ。ほんとに可愛いと思ってるよ。女の子として」

 私の脳は沸騰でもしているのだろうか。物事を正常に判断する能力を失ったのか、果鈴ちゃんに惚れそうになった。しかし、果鈴ちゃんは、この容姿で男の子なのである。それなら、何も問題は無いのではないか。

 いや、そういう話ではないはずだ。

「でも、果鈴ちゃんは同い年な気がするんだよね」

「勝手に想像しとけ」


 また、果鈴ちゃんの秘密事項が増えてしまった。でも、秘密を知ってしまうと、この関係が終わってしまうような気がした。

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