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第11話 ブラックボックス

「果鈴ちゃんに一つ質問」

「なに?」

「その声ってどうやって練習したの?」

 私の中でずっと引っ掛かっていたのは、このことだった。

 女性らしい、柔らかくて優しい声。どう聞いても男の子の声ではなかった。

「練習か……特に目立ったものはしていないかも」

 練習をしていない? とすれば、今彼女(?)の口から出ている声は、地声だとでも言うのだろうか。

 そこには男性的な声の要素は一切なく、透き通っていた。

「もしかして、手術とか?」

「さすがにそれはない」

 すぐに否定されてしまったが、それ以外に方法があるのだろうか。私に考えることが出来るのは、ここまでが限界だった。

「意識して出してるの?」

「まあ、多少はね。でも、特に無理をして出しているわけじゃないよ」

 もう一つの可能性を思いついた。それは、果鈴ちゃん自身が声変わりを経験していないというものだ。それならば、今のこの状況を説明することが出来る。

「でも、不思議だよね」

「何が?」

 このままでは、果鈴ちゃんは何も話をしてくれないだろうと思い、視点を変えて質問をすることにした。別の角度から、果鈴ちゃんの秘密を暴いてみようということである。

「だって、果鈴ちゃんはその姿で男の子でしょう? どうやって入学試験受けたのかなって思って」

 考えてみれば、果鈴ちゃんは闇に包まれている存在なのだ。そのうちの一つが、入学時のことだ。

 小学校、中学校と『男の子』として過ごしてきたならば、通常であれば高校も『男の子』として入学試験や手続きを行うはずである。しかし、どういうからくりなのか、現在の果鈴ちゃんは『女の子』としてこの学校で過ごしている。

 ……まて。そこには何の確証もなかった。果鈴ちゃんが男の子だという証拠も無い、今女の子としてこの高校に通っているという証拠も無かった。

「わかった。とりあえず話を進めるために、これを見せておこうか」

 果鈴ちゃんが取り出したのは、生徒手帳だった。真っ赤な表紙に金色の文字。それは確かに、桜ヶ丘女子高校の生徒手帳だった。

「中、見てもいいの?」

「もちろん。そのために渡したんだよ」

 各生徒の情報が載っているのは、一番最後のページだ。私は他のページに気を取られることなく、真っ先にそのページを開いた。

 そこに載っていたのは、私の目の前にいる果鈴ちゃんと同一人物の『立花果鈴』の写真と生年月日等が書かれたものだった。

 無理やり訂正した跡もない。つまり、正式に立花果鈴という存在が、この世に存在することとなる。


 一体どうなっているんだ…。

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