第10話 会長はかっこいい
憧れだけだった会長。
遠くで見ているだけだった会長。
同じ生徒会だったのに、その距離はとても遠くて。でも、活動する時は同じ部屋の中だから、なんだか近く感じて。
そんな不思議な関係だったのに、今では普通に会話ができるようになっている。
私は何て幸せなのだろう。
今日は待ちに待った休日。生徒会の活動もひと段落してるから、特にしないといけないことはない。
だから思い切って果鈴ちゃんに『一緒に遊びに行かない?』って誘ってみたの。それじゃあ、案外あっさりと了解をもらった。てっきりそういう誘いは断る人だと思っていたから、すごく嬉しかった。
だた、もちろん今日の目的はそれだけじゃない。どうしても確かめたいことがあるんだよね。
「あ、夏菜子。遅いぞ」
そう。私は果鈴ちゃんを待たせていた。どんな服を着ようかと悩んでいたら、結果的に遅れてしまった。実に私らしくない遅刻の理由である。
「ごめんなさい。準備に時間掛かっちゃって」
「まさかその程度で時間がかかったとか言わないよな?」
おっと?こういうこといっちゃう女の子は好みではないのね。メモメモ。
「…この程度で時間がかかりました」
「夏菜子ってあれだな。少女漫画の読み過ぎなんじゃないか?」
いきなり核心を突かれたので、思わず動揺してしまった。人の心を見透かしたように果鈴ちゃんは話す。だから。見た目と反してちょっと怖かったりする。って、あれ?
「果鈴ちゃん、そんな可愛い服持ってるのね」
この時の果鈴ちゃんの服装はゆるふわ系のものだった。元々ちっちゃくて可愛いから、よく似合うんだよね。しかも、可愛い女の子の声でしゃべれてるし。ほんとその女子力分けろください。
「持ってたら、やっぱりおかしいか?」
あれ。いつもはあんなに強気なのに、今日はなんだか雰囲気が違うような。そんな気がする。
自信をもって取り組んでいたことに対して、急に興味が無くなってしまったかのように、果鈴ちゃんはその言葉を言った。
「別におかしくはないんじゃない?」
私が言うと、果鈴ちゃんは安堵の表情を浮かべた。
ただ、それは安心したというものではなかった。
「ささ、今日は楽しみに来たんだよ!早く行こうよー」
「わかった。だから離れろ」
決して温かくはない言葉。でも、その顔は笑っていた。
私は果鈴ちゃんが心の奥に何かを秘めていることに気付き始めていた。