カップめんの夜
お久しぶりにございます……(震え声)
その日、妙に疲れた僕は早めに休むことにした。
普段だったら食事を作って明日に備える所だけど、今日の夕食は買い置きしていたカップめんに決定。たまーに、食べたくなるよね。
(さて、どうしようかな……)
こういうのってタイミングが大事なんだ、とは思うけどいつまでも引きずっていられない。彼女への恋心を自覚してもう何ヶ月だ? あの合コンからだから……えーっと……まぁ、いいや。
幸田さんが恋人に振られて落ち込んでいたから励ましたりしていただけなんだけどさ。
振り返りながらカップめんを探していたものの、買い置きが無くなっている事に気づく。……いつのまに僕は食べていたんだ? と考えたけれど、思い出せばマンションに仕事場を置く漫画家さんがへろへろになっていた時に差し入れで持っていったんだったな。
仕方なく近所に新しくできたコンビニに出かけていると、外国車が止まっていた。不思議に思っているとすらっとした男性が車から降りてきた。湯本さんだ。
「こんばんわ」
「鈴木君じゃないか。買い物かい?」
湯本さんの問いかけに頷いていると、彼は心配そうな眼を向けてきた。僕が思わず首をかしげていると、湯本さんが歩み寄ってくる。
「顔色悪いけど、大丈夫かい? 最近風邪がはやっているって聞くけど」
「あぁ、ちょっと疲れているだけなんで大丈夫です」
「今日は早めに休むといいよ」
素直にその言葉に頷きながらも、僕らはコンビニに入った。
新しいコンビニは案外広く、商品の品揃えも豊富。湯本さんはカップめん売り場に行くと幾つかの商品を籠に入れていた。
「鈴木君はこだわりってあるのかい?」
「そうですね。このブランドのチーズカレーと、ミルクシーフードは大好きです。冬限定だから今のうちに買いだめしてたりします」
そういえばこの冬はまだ買っていなかったな。今度ディスカウントショップで買おう。
「自炊がメインですけど、仕事が立て込んでいる時はついついカップめんで済ませる事もあります」
「そうなんだ。なんか気が合うな」
そう言って湯本さんが苦笑する。湯本さんも仕事が立て込んでいるとカップめん、なのか。彼が買うカップめんは……こだわりのラーメン店監修の、ちょっと高めのヤツだった。生めんタイプの物も入っている。確かにおいしいらしいけど、ちょいと手が出しづらい僕。
「湯本さんは普段自炊なんですか?」
「時間に余裕があると自炊してる。けど、実家の母が色々作りおきしては冷蔵庫に入れておいてくれる事もあってね」
湯本さんのお母さんは元々栄養士さんだったらしい。色々息子さんを気遣って作っているんだろうな。幸せ物だなぁ。まぁ、湯本さんの顔を見ていると、ちょっと照れが混じっていた。それもそうか。
僕らは他愛もない話をしながら買い物をを済ませ、コンビニを出る。と、湯本さんがふと、口を開いた。
「君は、幸田さんに告白したのかい」
その言葉に、僕は思わず息を詰まらせたかと思った。答えようか悩んだけれども、この人の前で嘘を吐くのはフェアじゃない気がして、自然と口を開いていた。
「……失敗しました、告白。ちゃんと言い切れませんでした」
どんな状況で、とは言わず、ただそれだけ言った僕に、湯本さんは「そうか」と頷いた。その目は諦めにも似ていたし、どこか好機をみた目にも見えた。けれども、彼は僅かに首を振ると僕の眼を見る。
「彼女のこと、好きなんだろう?」
「愛しています」
自然と答えた僕に、湯本さんは噴出す。笑うな、といおうとしたとき、彼は僕の肩をたたいて笑った。
「だったら、今度はちゃんと言わないと」
その言葉に、僕はただ1つだけ頷いた。
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