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ウマシカテ・ラボラトリィ ―食いしん坊の閑人閑話―  作者: 菊華 伴(旧:白夜 風零)
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キュウリよ今夜もありがとう

若干暗いシーンあります。主人公、女々しくないかい?

 寝苦しい……。


 クーラーをつけていても暑い夜。僕は1人眠れずに麦茶を飲もうと冷蔵庫を開けた。

「……ない」

 無慈悲な事に、というより自業自得だ。麦茶は容器にほんの少ししかなかった。……かとおもったらなんか似た液体発見。

「なーんだ、麦茶つくってたん……」

 とおもったら『めんつゆ』と書かれていたシールが目に入る。孔明の罠だ。

(しょうがない、水道の水でも飲むか)

 しょんぼりしていると、何故か浅漬けのもとが目に入る。そして連想したのがキュウリである。キュウリはご近所さんがたくさん作っているようで、お福わけで頂いていた。

「小腹も空いたなぁ」

 そこで僕はチルドのドアを閉め、野菜室をあける。そしておもむろにキュウリを数本取り出した。このまがったキュウリが美味しいんだよ。本当は井戸水で冷やしたほうがもっと美味しいんだけどね。小さいときは田舎の方に遊びに行ってキュウリの収穫とか手伝ったりしたなぁ。


* * * * *


 適当に皮をむいたきゅうりが数本。そして、もろみ味噌(しょうゆの実?)と塩が少々。

 何本かは浅漬けにした。いらない割り箸を刺してかじりつくタイプの浅漬けだ。

 そして目の前のきゅうりは塩かもろみ味噌か塩のどちらかにつけながらかじる。

 眠れないし明日は仕事も休みだし、たまには見てなかった映画でも見ながら自堕落に過ごすのもいいかもしれない。

「そういえば、録画したのがたまってたなー」

 そんな事を思いながらテレビのリモコンを操作してたら河童の子供と人間の子供の心温まるアニメ映画が出てきた。

「いや、キュウリ食べてるからって……」

 そう思いつつアニメを見た。

 ……ガチで泣けた。

 誰もいないから泣くだけ泣いたらすっきりして朝まで眠る事ができた。


 ……キュウリよ今夜もありがとう。


* * * * *


 次の日の朝、そんなことを思いながら僕はキュウリの浅漬けと炊き立てのご飯を食べていた。そしたら、何故かふと、寂しくなった。アニメでの主人公一家の団欒が、目に焼きついているからだろうか。


 潤いはないかもしれないけど、充実はしている。

 けれど寂しいのも本音だ。僕が好きになった人は兄に嫁いだわけだし。

 親はまぁ、別に何も言わないけど、いつかは言い出すに決まっている。


(一生独身なのは、寂しいしなぁ)

 正直言うと、子供は好きだし、いつかは家庭を持ちたい。兄夫婦をみていても思うし、友達を見ていても思う。やっぱり、自分の家族は欲しいって。問題は、どう出会うかだよな。僕が勤める会社は週の半分は出勤しなくていいわけだし、周りはほぼ男性だし。……こういう事は自分で動けって訳だよね。

 うーん、僕自身、人付き合いが上手じゃないし、恋愛って下手なんだよね。いつも好きになった人には別の誰かができるし。告白してもすぐ玉砕だし、「友達としてはいいけど恋人としては物足りない」って言われたのが正直辛いな。

(何がいけないんだろ?)

 友達に聞いても「わからん」といわれた。面白みの無い人間なんだろうか? それって、人間としてはどうなんだろう……?


 考えても分からない事は分からないので、キュウリの浅漬けとご飯のほかに、とりあえずインスタントの味噌汁とししゃも(夕飯の残り)も用意して、朝ごはんを食べる。

「ん?」

 陰鬱とした気持ちになっていたところに、携帯の着信音。僕はいやいやながら出ると、落ち着いたアルトボイスが耳に流れていく。高校時代からの友人、幸田さんだ。

「おはよう、鈴木君。今、いい?」

「おはよ。うん、いいけど」

 僕はため息混じりに肯く。

「今日、仕事?」

「いや、休みだけど……」

「ごめん、ちょっと来ていい?」

 その一言に、なんだか嫌な予感がした。どうしたの、幸田さん?!


ホント何があったの幸田さん?!


読んでくださりありがとうございます。

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