やきそばで新年会?
おせちに飽きた1月 3日。僕は1人寂しい正月を迎えていた。鹿島さんはお孫さんに会いに行っていないし、他の皆も予定があって忙しいし、兄夫婦も旅行中。大学の後輩達も帰省しているっぽいので、正真正銘、1人である。
元旦は親戚が僕の様子を見に来ておせちを手に訊ねてきた。そしてそのまま飲み会に突入。2日は駅伝を見ながらのこったおせちを食べ、ほぼ1日家の中。うーむ、外の空気を吸いに行くかな。
そうだ、ちょっと遠くの神社にでも行ってみるか。電車で2,3駅過ぎた所に有名な神社があるんだよねー。よし、行ってみるか。
「やっぱ人が多いけど、正月はこれなんだよね」
電車にゆられてやってきた神社を見て、なんか楽しくなって笑っていた。参道に屋台が並び、人々で賑わっている。そして、大きな木の近くでは無料で甘酒が振舞われていて、去年のお札をくべる大きな焚き火ではいろんな人が暖を取っている。
お参りを済ませ、みんなの楽しそうな顔を見ながら歩いていると、屋台の中にヤキソバの屋台を見つけた。ソースの匂いに釣られちゃうんだよね。
鉄板の上で踊る麺。
美味しそうにジュージューと歌う野菜と豚肉。
絡み合う濃厚なソース。
「やっぱり、やきそばっていいよね」
「いきなりどうしたの鈴木君?」
ほっこりしながら呟いたら、何故か幸田さんの声がした。……ちょっとびっくりした。改めて新年の挨拶をしていると、幸田さんが着物姿である事に気付いた。明るい緑色の着物だったけど、ものすごく似合っていた。ちょっと見とれていると幸田さんは顔を赤くした。
「こんなトコで会うなんて! 私も退屈してたのよね」
「僕もねー。鹿島さん、お孫さんのトコに行っちゃって帰ってこないし、寝正月にあきちゃって」
「わかるわ、それ~」
幸田さんと僕はうなづき合いながらちらり、とやきそばの屋台を見ていた。漂ってくる匂いがすっごくいいんだよね……。食べたくなってくる。
「やきそば、食べようかな~。幸田さん、どうする?」
「んー、着物汚さないか心配だけど食べたいのよね」
僕はというと、ダウンジャケットとカーゴパンツにニット帽という井出立ちである。んー、こういうときこそじいちゃんの着物を着るべきなんだろうけど自分で着れないしなぁ。
しかし、着物の幸田さんは実に綺麗だ。本当に似合っているねぇ。やっぱり見とれてしまうなぁ。だが、幸田さんはふぅ、とため息を吐いた。
「私も食べたいな。よしっ、買おう!」
「奢るけど? あっちに箸巻きお好み焼きもあるし、たこ焼きとかいか焼きもあるし。……どれもソースものだねぇ」
僕が屋台を見ながら言っていると、幸田さんは閃いた。
「鈴木くん、ちょっと時間ある?」
「まぁ、あるけど?」
* * * * *
屋台でやきそばなど買った後、しばらくまっていて、と言われ幸田さんの実家にきてしまった。ご家族の方は丁度でかけており、一人でコタツに入っていると微妙に緊張した。
(早く帰ってきて欲しいな)
と思っていると、幸田さんが自室からもどってきた。テレビで見た事があるけど、普段着使いが出来る着物だった。彼女はたすき掛けをぱぱっとやってしまうとやきそばのパックなどをコタツの上に並べながら笑った。
「おまたせ。こっちなら汚しても大丈夫だから。洗濯機で洗えるのよ」
「なるほどねぇ」
「やきそばのソースって妙に落ちにくいじゃない。だからこっちに着替えて食べたかったのよね」
僕が納得していると、幸田さんがお茶を入れてくれた。それを飲みながら、正月番組を見、遅めのお昼ご飯。……なんだが、みょうに味がしないぞ。緊張するよ幸田さん。
幸田さんは嬉しそうにやきそばを食べながらほっこりしている。
「なんか、嬉しそうじゃないか」
「んー、やきそばをひさしぶりに食べたからかも」
その言葉に、僕はきょとんとする。そういえば、お祭りの日に仕事でいけないとか言ってたりやきそばが売り切れていたりとかあった~って前に話していた気がする。
自分でやきそばを作るのもいいけど、こういう屋台のを食べるからこその情緒もあるよね。縁日の喧騒に、様々な食べ物の匂い、水風船のヨーヨーにゴムボールすくいに金魚すくい、型抜きに、わたあめ、アイス……。あのどこか懐かしい雰囲気が、僕は大好きなのだ。
箸巻きのお好み焼きやポテバタ、あんずあめにチョコバナナ、と縁日の食べ物を幸田さんと食べられて、ちょっと嬉しい。
「子供の頃ってさ。おこづかいの範囲でしか屋台のものって買えなかったんだよね。一度こういう事してみたかったんだー」
「気が合うね。私もよ」
僕らはしばらくの間、縁日の思い出とかを話しながら舌鼓を打った。
其々正月休みも時期に終わる。お互いに今年も頑張ろう、と言って別れた夕方、少し寂しい気持ちになった。まぁ、お祭りの後ってこんな気持ちになるよね。
(でも、新年早々幸田さんとのんびりできたし、今年も僕らはこんな感じなのかな)
いい事なんだろうけど、進展させたいし……がんばろう。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
……恋愛タグさんはつけないかもしれない。




