死屍累々とホットミルク
「ん……」
僕は目を覚まし、時計を見た。そしたら午前5時。……まだ、そんな時間なら寝ててもいいか。そう思ったけど、珍しく床で寝ていた。毛布に包まってね。妙に体が痛い。
「そういえばあの後幸田さんたちと飲んだんだっけ?」
クリスマスイブに、幸田さんとディナーを食べに行ったあとコンビニでクリスマスケーキとチキン、チューハイとかを買って家で飲みなおしたんだ。そして市民オーケストラの仲間に連絡をとって、鹿島さんに大河内さん、逢坂さんに、野上さん、幸田さんの友達の米納さんも色々持ち寄ってくれたんだっけ。
「皆一人身だし(鹿島さんは既婚者だけど)、どうせならって僕んちに泊まったんだっけ?」
寝ぼけ頭で身を起こすと、何故か幸田さんがいた。というか、幸田さんにしがみ付かれていた。衣服は着てるけど……、それ僕のジャージじゃないかいっ。
……なんで?!
あれ? 女子は女子で両親の寝室を貸して男子は僕の部屋とかで雑魚寝じゃなかったけ? とか思ったら思い出してきた。そういえば、幸田さんにジャージ貸したんだったね。忘れてたよ……。お酒零しちゃったんだったっけか。
(やっぱり、まずいよな)
そう思って、ベッドに幸田さんを寝かせ、僕は上着を着てリビングへ向かう事にした。
リビングに向かうと、ソファの上で大河内さんが毛布に包まっていた。逢坂さんはその近くで同じように毛布に包まっている。鹿島さんは自分の部屋に戻ったのかな、と思ったらメモがあった。
『野上さんと米納さんは、わいの部屋で寝てもらっている。わいはスーさんちで眠るわ。幸田さんが起きたらわいの部屋に連れて行ってな』
とのことだった。よく見ると鍵がテーブルにおいてあり、持ち主の鹿島さんはリビングの隅っこで寝袋に入っていた。しかも動けるタイプの。多分自前のだと思う。まぁ、そうだよね。安全のために離すのが理想だよね。
しかし、明け方のリビングに男性が雑魚寝……。まるで死屍累々という雰囲気である。片付けてはあるとはいえ、妙にそんな言葉が脳裏を過ぎる。
(もう一眠りしたいけど、目が覚めちゃったな)
僕は冷蔵庫から牛乳と蜂蜜を取り出し、大きめのマグカップに注ぐ。そして電子レンジに入れてボタンを押し、しばらく待った。
皆でバカ話をしながらお酒を飲むっていいよね。肩の力が丁度抜けてさ。たまにはこんな日も大切だなって実感する。その後の静寂は確かに寂しいけどね。
しばらくして、ホットミルクが出来上がる。それに蜂蜜をひとさじ。固まった蜂蜜をスプーンでとって、そのままホットミルクでくるくるすれば、ちょっとずつ甘さが解けていく。くるくるスプーンでミルクをかき回しながら、眠る友達を見ていると、いい笑顔で眠っている事に気付いて、ちょっとホッとした。
(鬱憤晴らし、できたかな)
そう思いながら飲むミルクは、なんだろう、ちょっと優しい気がする。
のんびりホットミルクを飲んでいると、すこしだけうとうとしてきた。だけど、自室で眠るのはなぁ……。なんか、誤解を生みそうで怖い。僕はとりあえず自室から着る毛布を取り出し、椅子に座ってホットミルクを飲みながらしばらくうとうとしていた。
暖かいミルクって、飲むとすごく心が安らぐ。ささくれた気持ちが落ち着く気がする。お店とかで飲めるふわふわとしたホットミルクもいいけど、やっぱり、家で飲むホットミルクはおいしいな。黒砂糖を入れても、シナモンスティックでかき混ぜても、いいかもしれない。
(こうしてのんびりできるのも、幸せなのかもね)
サンタさんを待つ年齢ではなくなったけれども、耳を済ませたら鈴の音が聞こえてくるような気がして、しばらくの間目を閉ざしてみた。けれども、友達の寝息とか、モーター音とか、車の音、風の音ぐらいしか聞こえなくて。4分半弱で目を上げてみたら、妙に笑えて来た。一人だけの演奏会『4分33秒』なんて心の中で呟いて苦笑した。
まだ朝まで時間がある。このままちょっとうとうとしようかなぁ、と思ってミルクをちびちび飲んでいたら、がちゃり、とドアが開く音がした。
「……鈴木くん、おはよ。色々とゴメンね」
起きてきた幸田さんが、僕のジャージの上から上着を羽織ってやってきた。
「おはよう。ホットミルク、飲む?」
「うん。お願い」
僕はにっこり笑ってホットミルクを用意する。移動については……うーん、どうしようかなぁ。
読んでくださりありがとうございました。
因みに、次はすき焼きです。




