カスタードのように、とろりとした……。
――クリスマス当日。
幸田さんと食事に行く事になった僕は、緊張しながら車を運転していた。
まぁ、親戚の家に車を置かせてもらう事になっているので無問題だし、帰りは帰りでタクシーチケットを使うつもりだったので抜かりは無い、筈だった。
(まぁ、こういうのもいいかなぁ)
実を言うと、クリスマスは友達を誘ってフライドチキンやピザとかを準備してのんびり楽しもうとも思っていたんだけどね。
しばらくして、幸田さんが待ち合わせの場所に来る。赤いコートがとても似合っており、いつもより綺麗に見えて、少し照れちゃった。
「鈴木くん、おまたせ。なかなかカッコいいじゃない」
「そう? 幸田さんも凄く似合ってるよ」
幸田さんは助手席に座り、シートベルトを締めながら笑いかけてくれる。やっぱり、彼女の笑顔は見ていてうれしくなるな、と思っていると車が近づいてくる。僕は安全を確認して走り始めた。
ホテルでのディナーは、とても豪華で凄く緊張した。パンを食べながら聞いた話だが、なんでもこのクリスマスディナーは懸賞であてたそうで、故に勿体無いなとおもったのだそうな。幸田さんが何故僕を誘ったのかはさておき、嬉しいな。
「美味しい料理だねぇ。景色も綺麗」
「そうね。周りは自分達に酔っていて景色を見ていないように見えるけど」
幸田さんがくすっ、と笑いながら言う。僕らの周りは若いカップルのように思え、皆がラブラブな空気をかもし出しているように思った。ちらほらと家族連れも見えたけど、それ以上にカップルが多いね。僕らは他の人から見たら何に見えるだろうかね。
コース料理はスープも、ステーキもデザートも美味しかった。一番美味しかったのは、鯛を使った料理だったかなぁ。だけど慣れない空間で僕らはちょっと緊張していた。軽めとはいえドレスコードがあるし、妙に優雅だし、テーブルマナーもそれなりに身に着けてないとって場所だったし……2人で苦笑し合った。
食べ終わった後、僕らはなんか物足りないね、といい……結局、ホテルの近くにあったカフェへと入るのだった。
「一緒に行ってくれて、ありがとう。楽しかったわ」
「そう言ってもらえて光栄だよ」
僕らはそんな事を言い合いながらショートケーキを食べていた。白いクリームの上におすまししたイチゴ。スポンジの中にも果物が一杯で、思わず童心に返ってしまう。時期的に、雪の上に佇むサンタさんを連想してしまうけど、それはそれで素敵だなって思ってしまう。
このショートケーキには、カスタードクリームも使われていた。スポンジとスポンジの間に果物と一緒に挟まっているんだけど、これがまたとろり、としていていい感じなんだ。ふわふわのスポンジに、爽やかな果物。酸味がアクセントになるイチゴ、舌ざわりのよいカスタードクリーム、どれも素敵だね。
生クリームの雪原……。飾りのクリームもお洒落で、雪にまみれた木みたいだね。そう思いながらほのぼのとケーキを食べていると、幸田さんがぽつり、と言った。
「最近のクリスマスってさ。家族で過ごすより恋人とっていうのがメジャーなのかしら」
「そうかもね。まぁ、お子さんが小さいうちは家族でが多いだろうけど」
相槌を打ちながらケーキを食べていると、幸田さんはちらり、と外を見……考える。どうしたのかな? と思っていると……悪戯っ子みたいな目で微笑みかけてきた。
「鈴木くん、クリスマスケーキ買わない?」
「……ケーキ?」
「うん。ほら、あっちのコンビニ。ケーキが売れ残ってるみたいだし」
よく見たら、コンビニの前で大学生ぐらいの青年がケーキを売っている。チキンも残っているようだ。僕はこっそり財布を確認して……頷いた。
「幸田さん、チキンも買おう。で、食べちゃおうか」
「お腹に余裕も少しあるし、ちょっとぐらいならいいかな。あと、飲みなおしよ! 鈴木くんの家で!」
幸田さんがいきなりそんな事を言い出し、僕はちょっと慌てた。 え? 僕の家なの!?
「え? 幸田さんお酒弱いでしょ? さっきもワイン飲んだでしょ!」
「ワインよりもチューハイの方が飲みたい」
きっぱりと言い放った幸田さんが、妙に楽しそうである。僕は少し考え……「まぁ、いっか」と頷いた。とりあえず誰か呼ぶか聞いたら速攻で「音楽仲間呼ぼう!」と言っている。あ、もしかしてワインでできあがっちゃったか?!
とりあえず、帰ろう。僕は支払いを済ませると幸田さんと共にコンビニに行き、ケーキとチキンを買う。そして、タクシーに揺られて一路僕の家へ向かった。
タクシーの窓から流れる町を見ながら、僕はうとうとする幸田さんに肩を貸す。
こんなとろりとした時間が、僕は好きなんだけど……はたして、続くのかな。
いや、そのためには、手を伸ばすしかないんだよね?
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。




