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ウマシカテ・ラボラトリィ ―食いしん坊の閑人閑話―  作者: 菊華 伴(旧:白夜 風零)
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カレーラーメン(実行編)

 まず、カレーをほどほど温めておき、その間に別の鍋で面を湯がく。インスタントラーメンの袋に書かれた作り方に則って塩ラーメンをつくり、最後にカレーを鍋に少しずつ溶かすように入れる。

 こうして、夢のカレーラーメン(カップじゃない奴)が出来たわけだが、僕の近くには1人のおっさんと1人の美女。これにはちょっと事情がある。


「はい、鈴木です」

「おはよう、スーさん。わしや、鹿島や」

 朝に電話を掛けてきたのはハスキーボイスが印象的な鹿島さんだった。この人は低音パートのリーダーで、演奏する楽器はチューバ。普段は近くの幼稚園で働いているけど、趣味で楽器を弾いているのだ。因みに奥様とは2年前に死別しており、現在このマンションの2階で1人暮らしをしている。

「なんだ、鹿島さんじゃないですか。飲み会なら夕方5時半に駅前でしょう?」

「違うねん。実は息子夫婦からインスタントラーメンをもろてな。食べきれへんからスーさんにお福わけしようおもて」

 なんでも、息子さん夫妻が懸賞で当てたそうだ。しかもご夫婦とも当たってかなり沢山もらったらしい。いくらなんでも多すぎるという事で僕に話が回ってきたそうだ。量を聞いたらけっこうどっさりあった。

「丁度いいですねー。塩ラーメンあります? それと兄が作ってくれたカレーでカレーラーメンにしようと思っていたトコなんですよ」

 そう言ったとき、鹿島さんがなんとなく目を光らせた気がした。この人、すっごく好奇心旺盛なんだよな。生前奥様とは何度も会ったことがあるけど、好奇心を諌めるのが大変だって言っていた……。

「それ、わしも食べてみたいなぁ。 ラーメン持っていくさかい、お昼、一緒にええかな? あー……ずうずうしいなら来るなち言ってくれたらええから」

「そんなコトいいませんよ。お世話になっているし、お昼ぐらい安いものですよ」

 僕がそういって笑っていると、携帯のほうに電話が。鹿島さんとお昼を一緒に食べる約束をして通話をきると、今度は高校のときからの友人と話す。

「悪い……。飲み会代確保はしたんだが昼代が……。食器洗ったり掃除したりするから昼飯を恵んでほしい……」

「またパチンコ? あのさ、いい加減パチンコでするのは止めようよ?!」

 幸田さん(女性です)は、パチンコを作っている会社に勤めている同級生なんだけど……たまにパチンコでお金をする。ライフラインはきっちり支払うのに時々食費を削ってパチンコをしようとする。いや、それダメだからね? 因みに担当楽器はユーフォニウム。

 美人でクールな幸田さんだがこういう一面がある。機械の研究とはいえ、夢中になりすぎないでほしい。全く……。

 そんな彼女も近所に暮らしており、時々ご飯を分けてほしいと頼みに来る。僕はカレーラーメンの事と鹿島さんがラーメンを分けてくれる事を伝えると「後片付けはまかせてほしいから食べさせてほしい」と言ってきた。


 ところが、カレーがちょっと足りない。朝ごはんに食べたからね。それで僕はちょっとカレーを作り足して2人を出迎えたというわけだ。

「できあがり」

 僕が出したカレーラーメンに鹿島さんも幸田さんも目をキラキラさせた。スパイスの香りとインスタントラーメン特有の匂いが食欲をそそる。

「これは美味しそうやな!」

「さっそく食べていい?」

 僕が肯くと、2人はさっそく頂きます、と言って食べ始めた。僕も一緒に食べる。なかなかいい感じだな、とか、スパイスがききすぎたかな? とか考えつつ食べていると……?

「なんや、これ美味いやないか!」

「飲んだあとのシメにいいかも……」

 という声が返ってきた。

「ほ、本当? 僕はちょっと胡椒が利きすぎたかなって思っていたんだけど……」

 2人はそんなことは無い、と笑ってラーメンを口にする。

「具もちょうどカレーの具がある。わしはこれ、気に入ったわぁ!」

 鹿島さんは満足そうだ。一方の幸田さんはというとラーメンを食べながらなにか考えているみたい。しばらくして、麦茶を飲んで一言。

「辛さを調節するにはどうしたらいいかな? それさえできたらいいかも」

 と言ってラー油を足していた。うーん、辛さ調節は考えていなかったな。次の課題はそれかも。ともかく、有意義なお昼ご飯になったかな。


 この後、僕ら3人で後片付けをし、待ち合わせの時間までのんびりお茶をしてすごした。

 このカレーラーメン、またやろう。うん。



ここまで読んでくださりありがとうございました。

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