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ウマシカテ・ラボラトリィ ―食いしん坊の閑人閑話―  作者: 菊華 伴(旧:白夜 風零)
31/79

おねがいモヒート

 ――合コン。

   僕とっては未知の領域。数あわせとして参加するにしろ、どうすりゃいいんだ!


 えーっとまずは大学時代を振り返ってみよう!


 パターン1

 友達A「鈴木、合コンにいかない?」

 友達B「鈴木は彼女いるしやめといたほうが……」


 パターン2

 友達C「鈴木、合コンに参加しないか?」

   僕「ごめん、その日市民オーケストラの練習日なんだ」


 パターン3

 友達D「旭くーん、合コンにこない?」

   僕「ごめん、その日バイトなんだ」


 ……うん、縁が無かったんだよ、今まで!

 大学卒業して就職してからまったくないね! というか会社では社員で飲みに行く事が多いし、友達も合コンに興味を持たない人が多かったからね。


 という訳で。僕はとりあえず浮かないようにと思い、衣服を買いに来たわけだけど……、丁度同じ事を考えていた兎本くんと一緒である。

「鈴木先輩、合コンに行く事になったんですか。僕もなんですよね」

「へぇ、兎本くんがねぇ。珍しい」

「友人は折舘の方を誘いたかったみたいですけど、あいつは丁度アルバイトで。多分、ことわったでしょうけど」

 兎本くんは読者モデルの経験もあるおしゃれな青年だ。彼にアドバイスをもらいつつ衣服選びを、とおもったけどまさか兎本くんも合コンに行く事になったとは。彼曰く「場所塞ぎです」ときっぱり。まぁ、僕も同じかなぁ。

 その後、僕らは他愛も無い話をしながら服を買った。普段着ないようなおしゃれな服だけど、幸い商品券が使えたからそれでちょっと出費を抑えたかな。


 その後、なかなかいい時間になったのでこの日は兎本くんを自宅に呼んで一緒に夕ご飯。ピザを注文して、のんびり食べる。丁度知り合いからホワイトラムをもらってたのでミントとライムを買ってモヒートを作って飲んでいた。

 モヒートはグラスに注いで、軽くかき混ぜて造るカクテル。知っている人も多いよね。僕もだけど兎本くんはこれが大好きなんだ。

 グラスにライムと砂糖、ミントを入れてつぶして、ラムを入れて、氷をいれてかき混ぜて、炭酸水でOK……だったはず。ミントはつぶしすぎると渋いらしいけど、兎本くんはこの渋さがすきなんだって。僕はつぶさないほうが好きだけど。氷は市販のものを使うといいらしいね。

 ピザはマルゲリータ。シンプルイズベストだね~。バジリコにモッツァレラチーズ、トマトソースのハーモニーにはおもわず涎がでてしまう。特にトマトソースの酸味と風味が、いいアクセントかな。

「ところで、鈴木先輩の行くお店ってどこなんですか?」

「あぁ、なんか幹事の子が大学時代バイトしていたトコで、カクテルが美味しいんだって」

「へぇ~……えっ?!」

 その時、兎本君の表情が強張った。僕が不思議そうにしていると、彼はスマホをいじって何かを確認している。

「合コンはいつですか?」

「えーっと、12月最初の土曜日だよ」

「なんだ、そうなんだ……。場所が一緒でしたよ。ただ僕は明後日だったんで」

 兎本くんはてっきり僕と同じとこかと思ったらしい。まぁ、ああいう席で知人と会うって気まずいよね。うん。

 ま、僕は場所塞ぎだし、多分アドレス交換とか求めてくる人もいないだろうし、盛り上げとかはむりでも空気を悪くしないようがんばろう。兎本くんとそれを祈りつつ僕らは手元のグラスを握り締める。

「ともかく」

「合コンを乗り切ろう! 勇気を頂戴、モヒート!!」

「「いえーい!」」


 ……うん、僕らは出来上がっていたんだ、その時。


 ともかく、2人でそれぞれ平穏無事に合コンが終わる事を祈ってその日は飲んだ。


 後日、兎本くんから「肉食系女子怖い」ってメールがきた。

 何があったんだろう……。聞かぬが花かな……。




読んでくださり、ありがとうございます。

兎本「……もう二度と合コンいかない」

折舘「いったい何があったんだよ……」

友達「聞かないであげて」


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