鍋の季節になりました?
季節は初冬。もう寒いね! 11月だよっ!う~ん、最近まで10月だった筈なのに、季節が変わるのは早いねぇ。まだ20代なのにそんな事を思っちゃうね。
しみじみとそんな事を思っていたら、市民オーケストラの低音パートメンバーで食事会をしよう、という話が持ち上がっていた。
「そんな訳で、誰が幹事する?」
ぼ~っとしてた僕が悪いんだけど、幸田さんの声で我に帰る。あぁ、今食事会の話をしてたんだよね、という具合に。いや、寒いのがどうも苦手な僕はちょっと現実逃避してたんだけどねぇ。
「誰も居ないなら前回幹事だった俺が指名しようかな」
そんな事を言う大河内さんに、鹿島さんが苦笑する。その傍らでは逢坂さんがスマホを見ながら何か考え事をしていた。しばらく様子を見ていたら彼は顔と手を同時に挙げた。
「あの、幹事だったら自分がやりたいっす。ちょうどいい店知ってるんで」
「ホント? なんか楽しみ~」
幸田さんが嬉しそうにそういう。僕もそのちょうどいい店が気になった。
「ねぇ、どんな店? 僕も気になるな。どんな料理がうりなの?」
「親戚が居酒屋を経営してて、今月から鍋料理のコースが入ったっす。そこ連絡取ったらちょっと安くしてくれるって……」
その話に、低音パートメンバーは歓声を上げる。僕らは直ぐに開催日を決め、低音パートメンバーの出欠を確認するのだった。
低音パートはにぎやかなのが好きなメンバーが揃っており、直ぐに集まった。低音パートは僕含めざっと15人いるけど、珍しく全員出席。鍋効果かな……。
それから2日後。食事会まであと1週間って所ですっごく寒い日が来た。1人暮らしにはちょっと辛いなぁ、とか思っているとハクサイが安かった。
(ポン酢……家にあったな)
そんなことを思いつつそれとなく籠にいれ、鶏肉とかシイタケを適当に入れ、レジで支払う。豆腐も買ったから水炊きか湯豆腐かはさておき。まぁ、1人で鍋もいっかな、翌日雑炊にすれば食費も軽く……なんて考えていた。
「あれ? 鈴木君じゃないか」
急に声を掛けられ、ちょっと驚きつつ振り替えると幸田さんだった。
「幸田さん、お仕事は?」
「今日はもう上がったの。ちょっと体調崩しちゃって……」
幸田さんは苦笑ながらそういい、僕はちょっと肩を竦めた。急に寒くなったんだ、風邪を引いたのかもしれない。
「よかったらお鍋、食べてく?」
「いいの?」
幸田さんは、顔をぱっ、と輝かせた。
幸田さんちは僕の家に近い。実のところ、僕が勤めている会社や市民オーケストラの練習で使うホールへ行くのも幸田さんの家の方が近かったりする。
前は大学に通っていた弟さんも一緒だったという事で、2DKに住んでいる。今年の春、弟さんはここを出て社員寮に入ったそうで、今は1人暮らしだ。
弟さんが居た頃は僕と彼が友達って事もあってよく遊びに来ていた。今思えば、今年は夏ごろまでほとんど行っていなかったかもしれない。
(なんか、最近は幸田さんとよく2人になってる気がするけどね)
振り返りながら「お邪魔します」と家に上がると、幸田さんが僕から買い物袋を手にしようとした。
「今日は私がやるから、鈴木君は本でも読んでて」
「いや、幸田さん体調崩してるでしょ? 僕がやるから、座ってて。楽な格好に着替えてソファにでも座っててよ」
僕の言葉に、幸田さんは「そんな悪いよ」と言うけれど、ちょっと顔色悪いし……、僕は1つ頷いて休んでもらう事にした。
鍋の下ごしらえは簡単な気がする。いや、まぁ、手間を掛ければかかるけど。
土鍋の位置を教えてもらって取り出し、水洗い。よく外側を吹いたらカセットコンロの上に。鍋の中に水を張って、昆布も投入しておけばOK。その後は野菜や豆腐を食べやすいように切るだけ。
最近は鍋のお出汁がキューブ型とかになって小分けになってて、少量でも使いやすいからいいよね。今日はオーソドックスな物をチョイスしたけど、今度は豆乳鍋もいいな。
「そう言えば、一週間後の食事会ね、蟹鍋だって。参加費は1人3500円」
「そう来たか。最近はパチンコしていないし、ちゃんと出せるよ」
鍋の準備をしながら僕がそう言えば、幸田さんは頷く。僕らは他愛もない会話をしながら、鍋が出来るのを待つのだった。
ここまで読んでください、ありがとうございます。
因みに、まだちょっと続くのじゃよ……。




