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ウマシカテ・ラボラトリィ ―食いしん坊の閑人閑話―  作者: 菊華 伴(旧:白夜 風零)
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クッキー地獄

 クッキーって美味しい。

 僕は幼少期からクッキーが大好きだ。と、いうのも母が時折作ってくれたからである。母は、僕ら兄弟が幼い頃はよくお菓子を作ってくれて、誕生日にはケーキを焼いてくれた程である。

 まぁ、僕が小学生になると忙しくなったのもあって機会は減ってしまったし、何より兄が作る機会のほうが増えてしまったからねぇ。


 それはさておき。

 クッキーが好きな僕は時折お菓子屋さんにいって3、4箱ほどクッキーを買って来る。シンプルなものから、ジャムっぽいのがついているもの、チョコレートがついているもの、ドライフルーツっぽいのが混ざっているもの……と、色々なクッキーをのんびり楽しむのが大好き。これにホットミルクか紅茶があるともっといいや。


 そんなある日。僕がいつものように市民オーケストラでの練習会に参加していると、鹿島さんがクッキーの缶を差し入れに持ってきてくれていた。

「わぁ、美味しそうですね!」

「うん、旅行にいったときの土産やけどな。あぁ、鈴木君はクッキーが好物やさかい、もう1缶鈴木君用を準備してきたで」

「そ、そこまでしなくても……」

 僕が苦笑していると、逢坂さんが苦笑した。

「鈴木さん、クッキーが出ると夢中になって食べるじゃないっすか」

「そうそう。あ、俺もクッキー買ってきたから皆で食べて。鈴木のは別に1缶あるから」

 と大河内さん。……貴方もか。いや、確かに僕、クッキー大好きだけどそこまでしなくても。いや、本当に。特別扱いされるって妙にむずがゆいものがある。

「前に低音パート分に貰ったクッキーをほぼ一人で食べたのはだれやったけな」

 苦笑交じりに言う鹿島さんの声に、僕の肩がびくっ、と震える。そう、僕が大学時代の頃、そういう事があったのだ。

 パートのメンバーが2つずつ食べ終わった後、他に皆が食べないからって僕が貰って……全部食べきってしまったのだ。これに当時のパートリーダーがめっちゃ苦笑してたっけなぁ……。僕は後から申し訳なくなって、クッキーを作ってお詫びにしたけど。

「ともかく、ほらよ。これでも食ってろクッキージャンキー」

「酷っ?! 大河内さん酷い!!」

 僕がわざとそんな風に言うと、皆に笑いが起こった。


 練習を終え、鹿島さんと大河内さんからもらったクッキーを手に帰宅。すると、兄から紙袋を持って玄関前に立っていた。

「どしたの兄貴」

「いや、お前さんはクッキーが好きだろうから」

 そして取り出される、クッキーの製作キッド(子供用)。あの水と混ぜてこねて型を抜いて、オーブントースターで作るやつ! あの微妙にチープな味が懐かしい!

「じゃなくて、なんでそんなに?」

 兄はなぜかそれを沢山持っていた。いや、確かに僕は小さいときそれにはまったけどさ。僕が首をかしげていると兄が

「だって、安くて懐かしくて衝動買いしすぎて嫁に怒られたんだもん」

「いや、かわいく言ってるつもりでもかわいくないから!」

 僕が思わず突っ込むが、兄はお構いなしに僕に押し付ける。

「あと、友人からの土産のクッキーと、親父達からのお土産もあるから」

 と、紙袋2つを僕に渡す兄。このとき、僕の脳内では沢山のクッキーがざっらぁ、と音を立てて転がっていた。


 ざっらぁ……。 ざっらぁ……。


 僕の脳内にあふれるクッキー。

 何故だろう、只管クッキーを作り続けるゲームが思いうかんだぞ。あれ、友達がちょっと嵌ってたけど、畑で取れたり鉱山で掘れたり、果ては銀河地平のかなたとか過去からざっらぁ~、って出てきてなかったかこれ?

 ……それでもクッキー食べたいって思う僕って中毒なのかね。

 いや、四六時中食べたいって訳じゃないんだ。

 一日に一枚でもいいんだ。うん。


 結局、僕は暫くの間クッキーに困らない生活を送る事になりそうだ。



読んでくださり有難うございます。

……クッキー、私も大好きです。

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